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私の中に私たちはいる  作者: µ(ミュー)
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第47話 新学年

第47話を読みに来ていただきありがとうございます。


 進路も無事に決まり、あれから一ヵ月と少しが経った。

 クラス替えがあり、当然コースの違う信也と九条さんとは離れ離れになった。けれど、コースが同じだった明里さんとは二年でも同じクラスだ。

 昨日始業式が終わり、今日から授業が始まる。授業初日から遅刻する訳にはいかないので、少し早めに家を出た。

 四月に入ったので、気温はそこそこ暖かくなってきている。この時期花粉症の人は辛そうだが、僕は花粉症持ちではないので、春のぽかぽかした今の季節は結構好きだ。

 そんなとき不意に桜の木が目に入り、足を止める。

 そういえば、初めて彩香さんに会ったのはこの場所だったな。確かあのとき桜を見ていた彩香さんに一目惚れして、僕が声を掛けたら逃げられたんだっけ。懐かしい。もうあれから一年が経つのか。まさか、あのときは彩香さんたちが二重人格だなんて思ってもみなかったな。でも、一目惚れしたのは彩香さんなのに、好きになったのは明里さんの方なあたり、改めて考えるとちょっとおかしくて笑ってしまう。まあ、あのとき彩香さんに会ったのはほとんど偶然で、メインではずっと明里さんが出ていたからそれが一番影響しているんだろうけど。

 僕が思い出に浸っていると後ろからちょうど彩香さんがやってきた。


「こんなところで突っ立って何してるの?」

「ん? 桜の木を見てたんだ。昨年初めて彩香さんに会ったのが丁度この場所だったなと思って」

「ああ、そうだったかしら。そこら中に桜が咲いているのによくここだってわかったわね」

「うん、根拠があるわけじゃないけど多分ここで間違ってないと思う」


 何となく、あの時の記憶と、今見えている桜の周りに見えている景色が一致しているから恐らく合っている。


「綺麗ね」と彩香さんが桜を見つめながら呟く。

「うん、これを見るとまた新しい年度が始まるんだな。今日からまた頑張ろう、ってそんな気になれるんだ」

「でも、そろそろ行きましょ、遅刻しちゃうわ」


 そうだった、残念なことに今は花見の時間ではない。あまりのんびりしていたら遅刻してしまう。


「うん、行こうか」


 そう言って、僕たちは学校に向かって歩き始めた。

 歩く道の両側に桜の木があって、このあたりはピンク色に染まっている。


「それにしても綺麗だね」と僕が言うと「そうね」と明里さんは返した。先ほどまた不自然な入れ替わりがあったようだ。


「ちょうど満開みたいだし、お花見がしたいわね」


 明里さんは桜を見ながらそう言う。


「しようよ、花見」

「え?」

「今週の日曜日にでも、信也と九条さんも誘ってさ、皆で花見しよう」


 しかし、少し時間が経ってから全く予想していなかった言葉が返ってきた。


「いや……」


 明里さんは小さい声でぼそっと言ったが、間違いなくそう言っていた。


「えっ……」


 全く予想していなかったから、かなりショックだ。まさか断られるなんて……。


「あ、ごめんなさい。違うの」


 明里さんは慌てて訂正しているけど違うって何が違うのだろう。


「私が嫌って言ったのは花見のことじゃなくて四人でって方」


 え? 四人だと少ないからもっと人を呼びたいとかそういうことだろうか。

 しかし、明里さんはなかなかその続きを言ってくれない。一瞬また不自然な入れ替わりが起きたのかと思ったけど、今回はどうやらそうではないらしい。明里さんはどこか落ち着きがなく顔を赤らめてもじもじしている。


「……もしかして、四人じゃなくて二人がよかった?」

「うん……」


 明里さんは小さい声で肯定しながら更に顔を赤くして頷いた。


「あのね、もうすぐ私たち一つに戻るから、それまでに英一君と多くの思い出を作りたいなって……。だめ、かな……?」


 明里さんは上目を使ってそう言う。

 そのように言われてうん、ダメですなんて言えるはずがない。まあ、僕としても明里さんと二人きりで花見に行けるのは嬉しいし、断る理由がないからもちろん了承する。


「本当? やったー!」


 珍しく幼い子供のような表情と高い声で喜びを表現している。


「今から楽しみ、私お弁当沢山作ってくるから!」


 明里さんってこんなに無邪気な性格だったかなと思ってしまうくらい今週の花見を楽しみにしていることが伝わってきて、なんだか僕も嬉しい気分になった。

第47話を読んでいただきありがとうございました。

もう少しで物語は終盤です。執筆が止まっているので、まだ結末は決まってませんが、そろそろ気合いれてラストスパート頑張ります。



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