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私の中に私たちはいる  作者: µ(ミュー)
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第38話 初詣

第38話を読みに来ていただきありがとうございます。


「あ、きたきた。英一君!」


 明里さんは神社の前で手をブンブン振り回して僕を呼んでいる。

 手を振っているのが一瞬、明里さんだとはわからなかった。彼女は赤色の生地にピンク色の花の模様がある振袖を着ていたからだ。

 普段、制服姿でも、百人に聞いたら全員が美人と答えるほどの明里さんだが、和服を着るとまるで日本人形のような別の美しさがある。

 このまま見ていると見惚れて顔が赤くなりそうだったので、慌てて目を逸らした。

 それはそうと、今日は一月五日。明里さんと初詣する約束をしている日だ。初詣なのでもう少し早い方良かったのだが、明里さんが退院したのが一月三日。それからすぐに出歩くのもしんどいかと思ったので、一日あけて今日行くことになった。


「明けましておめでとう!」

「おめでとう、検査結果はどうだった?」

「えー! いきなりその話?」


 明里さんが頬を膨らませて不機嫌そうに言う。


「せっかくのデートなんだから、もっと楽しい話しようよ!」


 え? デート?

 これってデートだっけ? 明里さんには申し訳ないけど、僕はそういうつもりで誘ったわけじゃないんだけどな……。


「何を驚いているの? 男女二人きりでお出かけしたら、もうそれはデートだよ!」


 彼女が僕の表情を見て察したのか、聞いてもいないのにそう言い始めた。

 僕は恋愛経験とか無いから、そういうのはちょっとわからないけど、男女二人きりで出かけたらデートになるものなんだ。


「うん、わかった。とりあえず行こっか」


 僕がそう促し歩き始めると、明里さんも嬉しそうに後を付いてきた。



 僕らは鳥居の前で一礼し、参道の端を歩いて手水舎へと向かう。

 途中で明里さんに聞いたことだけど、参道の真ん中は神様が通る道だから、そこを避けて左右のどちらかに寄って歩くのが良いらしい。


「手水舎ではね、手と口を清めるの」


 明里さんが手水の正しい使い方の説明を始める。


「まず、右手でひしゃくを持ち、水を汲んで左手を洗う。次に左手に持ち換えて右手を洗う。そしてもう一度右手に持ち替えて、左手の手のひらに水を受けて、口をすすぐ。最後にししゃくを立てて、残った水が持ち手に流れるようにして洗って、もとの場所に戻すの」


 明里さんは説明しながら実践してくれた。


「明里さん物知りなんだね」

「せっかく相応しい格好をしてきているのだから、それくらい知っておかなければ、と思ってね」


 彼女は今日、ここに来る前に、事前に正しい参拝方法を調べてきたらしい。

 うろ覚えなんだろうけど、彼女の服装と振る舞いが凄く様になっているように感じた。



 手水舎で手と口のお清めが終わったところで、次に僕たちはお参りをする。

 事前に明里さんから教わった通り、鈴を鳴らし、お賽銭を入れ、二礼二拍手一礼してからお願いごとを思い浮かべる。

 何をお願いしようか迷ったけど、結局無難な僕と祖母の健康祈願、あと明里さんと彩香さんが一つになるなら、最後は二人とも納得した形で終われますようにとお願いした。



 帰る前に僕たちはおみくじを引いて帰ろうということになった。


「ねえ、どうだった?」


 明里さんは楽しそうに聞いてくる。


「えっとね……末吉だね。『願い事、苦労すれば叶う』、『病気、気を強く持てば治る』、『恋愛、諦めよ』だってさ」


 凶じゃないだけあって、まるでダメなことばかり書かれている訳じゃないけど、どうやらそれなりに苦労するらしい。


「明里さんは?」

「私は小吉ね。『願い事、善い行いをすれば叶う』、『病気、治る』、『恋愛、叶うかは五分五分』だって」

「へー、結構良いこと書かれているね」


 僕は普段おみくじとか占いとかは全然信じない派だった。特におみくじなんてたまたま引いたくじに大吉だの凶だのとあるが、早い話運ゲーだとしか思っていない。まあ、確かに運ゲーで大吉を引けたから今年は運が良くなる、という考え方はわからなくはない。しかしそれなら本数の少ない大凶とかを引いた方が限りなく低い確率から引いているのだからそっちの方がよほど運がよさそうだとか考えてしまう。

 だけど、今回はいつものようにそう思えない。

 気になっているのは病気の欄。『気を強く持てば治る』。

 僕の二重人格も一種の病気だ。僕の二重人格は、僕自身が強くなれば治ると既に言われている。だからその部分を当てられたら嫌でも意識してしまう。このおみくじは当たるんじゃないか、と。


「何を深刻そうな顔をしているの?」


 明里さんに顔を覗かれて我に返る。


「いや、何でもないよ。そろそろ出ようか」


 まあ、考えすぎかな。これもたまたま引いたおみくじにそう書いてあっただけで、そんなに深い意味はないだろう、と僕はこれ以上考えないことにした。



「ねえ、このあとどうする?」


 神社から出た僕たちは、この後何をするか決めていなかったことを思い出した。


「そうだね、まずその着物をあまり汚してほしくないから、一度家に帰って着替えた方が良いんじゃない?」


 流石にこの着物のまま、あちこち連れまわして汚してしまうのは気が引ける。


「うーん、そうね。面倒だけど、汚したらお母さんに叱られちゃうし、英一君が良いならそうさせてもらうわ」


 ということで、一度解散し、一時間後にまたここで集合する約束をした。

第38話を読んでいただきありがとうございました。

物語の中では新年を迎えましたのでとりあえず明けましておめでとうございます(笑)

富永さんと、佐々岡君の二重人格はとりあえず今年で決着がつく予定です。どいう風にするかはまだ具体的には決まってませんが、まあ変わらず続きも読んでいただけると嬉しいです。

 


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