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私の中に私たちはいる  作者: µ(ミュー)
33/73

第33話 富永(母)との面談

第33話を読みに来ていただきありがとうございます。

 次の日、僕は再び明里さん、彩香さんの病室に向かっている。途中花屋でまた花を買おうかと考えたが、二日でガーベラが枯れてるとは流石に思えないので、買わずにそのまま直接向かった。

 彼女たちの病室に到着し、中に入ったがそこには彼女たちはおらずに、代わりに彼女たちの母親がいた。


「あら、確か佐々岡英一君だったかしら?」


 確認するように明里さん、彩香さんのお母さんは聞く。


「はい、ちゃんと自己紹介するのは初めてですね。初めまして、佐々岡英一です」

「彩香、明里の母の富永時子(ときこ)よ。せっかく来てもらったのにごめんなさいね、あの子たち今ちょうど検査を受けているところなのよ」


 明里さん、彩香さんのお母さんが申し訳なさそうに頭を下げる。


「いえ、確認もせずにいきなり来た僕も悪いですし。ところで検査は何時くらいに終わりますか?」


 すぐに終わるならここで待っていようかなと思ったので聞いてみる。


「ごめんなさいね、何時に終わるかわからないの。早く終わるかもしれないし、長引いたら何時間もかかることもあるし」

「そうですか……」


 これは出直した方が良さそうだ。仮に早く検査が終わったとしても検査終わりで疲れているだろうしそのまま話をするのも気が引ける。


「じゃあ、また後日改めてお見舞いに来ます」


 僕が後ろを向いて戸に手を伸ばそうとしたところで「待って」と呼び止められた。


「良ければ少し、おばさんと話をしていかない? その間に検査から帰ってきたらそのままあの子たちと話せばいいし」


 うーん、まあ正直あまり気乗りはしないが、何か話したいことがありそうなそぶりを見せたので了承することにした。


「まあ、とりあえずここに座って」


 明里さん、彩香さんのお母さんがベッドの方へと座り、僕に椅子を差し出してくる。


「まずは前にも帰り際に言ったけど、あの子たちのこと支えてくれてありがとうね。二重人格ってなかなか他人には相談しにくい病気だと思うんだけど、一人でもそれを信じて悩みを聞いてあげられる人がいて助かったわ」


 確かに彼女たちの母親の言う通りだ。僕は二重人格です、なんて皆に話してもふざけているのか? とかテレビの見過ぎじゃない? とか言われて信じてくれないのがおちだろう。実際、僕は僕自身が同じ境遇だったから理解しているが、そうじゃなかったら明里さん、彩香さんが二重人格だということにまず気づかなかっただろうし、彼女たちの方から二重人格です、なんて言われても信じられなかっただろう。


「いえ、僕は何もしてないですし。むしろ僕の方こそ彼女たちからいろいろお世話になっていますので……」


 とりあえず目を合わさずに僕はそう言っておいた。事実だし……。


「何もしていなくても、こうしてあの子たちのことを理解して、寄り添っていてくれているだけでもありがたいものよ」


 そういうものだろうか。まあ母親の立場からすれば二重人格になってしまった自分の娘が学校でちゃんと馴染めているのか心配になっているのだろう。


「それにね、最近あの子たちの様子がかなり変わったわ」


 彼女たちの母親は表情を変えずにそう言った。


「最近、あの子たちかなり明るくなったし、前向きにもなったように感じるの。前まではね、彩香はもちろんのこと明里が出ているときでさえたまに暗い表情を見せていたの。でも夏休み後くらいだったかな。二人とも少しずつ暗い表情を見せることが減ってきて、今となっては彩香も明るくなったように感じさせられるわ」


 彼女たちの母親は僕が前にお見舞いで持ってきたガーベラを見ながらそう言った。


「あのガーベラもありがとうね。『希望』と『常に前進』が花言葉なんて、あの子たちにピッタリな気がするわ」

「なんかごめんね、私ばかり喋っちゃって」


 彼女たちの母親はガーベラから僕に目線を変えてそう言った。


「いえ、明里さんたちのことを大切に思われているんですね」


 言葉や態度の一つ一つに明里さんや彩香さんのことを凄く心配して大切にしていると感じさせられたので気付いたら僕はそう言っていた。


「親だからね、子供のことが大切じゃない親なんていないわ」


 彼女は自信満々にそう言い切る。

 子供のことが大切じゃない親なんていない……か。僕は幼い頃に両親をなくしているからわからない。僕の両親も僕のことを大切にしていてくれたのだろうか。


「そうですよね、そうに決まってますよね……」


 わからないけど母親がそういうのならきっとそうなのだろう。

第33話を読んでいただきありがとうございました。



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