第29話 お見舞いに贈る花
第29話を読みに来ていただきありがとうございます。
十二月二十八日午前十時、気温五度。
外に出ても寒いし用事があるわけでもないので僕は自分の部屋に暖房をつけながらベッドの上でゴロゴロしている。
ピコン
ピコン
ピコン
「あー、もううるさいな!」
朝からずっとスマホにメッセージが届いている。送り主は全部明里さんだ。
明里さんは昨日から二重人格の検査で入院しているのだが、よほど暇なのだろうか朝から次々とメッセージが送られてくる。
最初は律儀に全て返信していたが、あまりにも異常な頻度に段々とうんざりしてきて今はもう返していない。
ピコン
ピコン
ピコン
ピコン
「はあ、仕方ない。行ってあげるか」
これだけ送られてくると遠回しに暇だから来いと言われている気しかしない。
ということで急遽、彼女の病室に行くことになった。
お見舞いするからには一応礼儀として花くらいは買っていくべきかな、と考えた僕は花屋に来ている。
店に入ると中はそこそこ広く、沢山の花が売られている。
しかし、種類が多すぎて花の知識がない僕にはどれを買うべきかさっぱりわからない。
とりあえず知っていることといえば、何でも適当に買えばいいわけではなくて、お見舞いに適している花もあれば適していない花もある。その中で鉢植えは根付くから寝付くを連想されるので縁起が悪い。その程度しか知らない。
適当に選んでそれが縁起の悪い花だったらまずいので素直にどの花を買っていくべきか店員に聞くことにした。
「すみません、友達のお見舞いに行くんですけど、どの花を買っていけばいいですか?」
僕は近くにいた女性の店員さんに声をかけた。
「あら、お友達病気なの?」
「いえ、病気というわけではないですけど少し検査で入院するらしいのでそのお見舞いです」
その店員さんに心配そうにされたがそんな重いものでもないので僕は否定しておいた。
「あらそうなの。大した事なければいいわね」
そう言いながら彼女はおすすめの花のところへ案内してくれる。
「お見舞いならこのガーベラがおすすめよ」
そこにはオレンジ、白、黄色、赤、ピンクなどさまざまな色のガーベラと書かれている花がある。
「ガーベラ全般の花言葉はね、『希望』と『常に前進』というのがあって入院している子に贈るのにはピッタリな花なの」
店員さんはガーベラの方を見ながらそう切なそうに説明してくれた。
たしかに希望や前進なら見ているだけでも元気が出そうだ。よし、これにしよう。
「わかりました、この花にします」
「ちなみに、その入院している子は女の子?」
突然訳の分からない質問に少し動揺する。女だったらどうだというのだろう。お見舞いに行くのにその性別が男性か女性かそんなに重要なことなのかな? と疑問に思ってしまった。
「まあ、はい。そうですけど」
「だったらね、黄色、赤、ピンクなどがおすすめよ」
店員さんは人差し指を立てながらそう答えた。なんだか嫌な予感がするので僕ななぜその色がおすすめなのか聞いてみることにした。
「ガーベラにはね、色ごとにそれぞれ違う花言葉があって黄色は『究極の美しさ』や『究極の愛』。赤は『限りなき挑戦』や『燃える神秘の愛』。ピンクには『崇高な美しさ』という意味があるの」
店員さんがひとつずつ丁寧に説明してくれたが、そんなことだろうと思った。明里さんが花に詳しいという話は聞いたことがないが、もし知っていたらまたからかわれそうだし他の色にしよう。
「ちなみにオレンジは『神秘』や『冒険心』、白には『希望』っていう意味がこめられているわ」
店員さんが楽しそうに説明してくれる。まだ会って数分くらいしか会話していないけど、花のことを楽しそうに説明している辺り、この人は心から花を好いているんだろうなと感じとれた。
さて、それは別として何色を選ぼうか。まず黄色とピンクは却下。花言葉で相手の美しさを伝えるなんて真似は僕にはちょっと出来ない。
赤も『燃える神秘の愛』に少しためらいを覚えたが、それ以上に『限りなき挑戦』が魅力に感じたのでこれはわりとありなんじゃないかと思う。
一本だと寂しいからついでに白とオレンジも買って、三本にしようかな。
「じゃあ、赤と白とオレンジを一本ずつください」
そう店員さんにお願いした。
「あら、黄色とピンクはいらないの?」と聞かれたが断った。正直余計なお世話だ。
会計が終わって見送られるまで終始ニコニコしていた店員さんに僕は少し違和感を覚えながらも僕はそのまま病院へ向かった。
第29話を読んでいただきありがとうございました。
私も主人公と同様に花の知識は全然ないので、どの花をお見舞いに持って行かせるべきか結構調べました(笑)
その中でガーベラの花言葉の『前進』が今の二人にはピッタリじゃないかなと思ってそれを採用しました。




