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私の中に私たちはいる  作者: µ(ミュー)
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第25話 真二の想い

第25話を読みにきていただきありがとうございます。

 英一と入れ替わって、軽く挨拶を交わす。


「随分長く話していたみたいだけど大丈夫か? 疲れているならまた今度でもいいよ?」

「大丈夫よ、真二ともいろいろ話したかったし」

「俺もだよ、最近英一の精神状態良いから俺の出番なくて暇なんだよね」


 そう、あいつはここ数か月でかなり強い人間になった。もう最近は少しくらい英一の身に嫌なことが起きても、俺が出ずとも英一自身で解決している。これも彼女たちの影響だろうか。本来、ここまで来たら俺の出番はもうない。徐々に俺の出てくる頻度が減っていって、最終的には二度と俺が出なくなり、人格が一つに統合されるんだろう。だがまだ、俺には大きな役割が残されている。

 明里、彩香の二重人格の件だ。俺は明里から直接彩香と仲良くしてあげて欲しいと頼まれているのもあるし、彼女たちが人格を一つに統合しようとしていることも知っている。

 彼女たちが人格を統一させることについては俺も賛成だ。しかし彼女たちの人格が一つになった時、結果次第ではまた英一の精神を大きく狂わす出来事にもなりうる。

 そのとき、もしかしたらまた俺の出番が来るかもしれない。つまり、まだ俺と英一が一つになるわけにはいかない。逆にそのときになっても英一が俺の頼りを必要ないくらいに強くなっており、英一自身でなんとか出来るようになっていたら、そのときは俺もいよいよ役目を終えてゆっくり休むことが出来るだろう。

 だから明里と彩香の最後を見送り、そのときの英一の状態を確認するのが俺の最後の役割だ。

 とはいえ、それまでは本当に彩香と話すことくらいしかやることがないから俺は最近かなり暇を持て余している。


 それから俺も同じように二時間くらい彼女と雑談をした。

 内容は主に小説の話だ。最初に彩香と話した時にその話をし、おすすめの小説を教えてもらって以来、俺はすっかりはまってしまっている。

 旅行を終えて間もない頃、まだ何度か入れ替わることもあったから、そのときに彼女から借りた本を読ませてもらったりしていた。けれど最近は入れ替わり自体必要ないから、それすらも出来ていない。流石に俺が小説を読むためだけに入れ替わるわけにはいかないからそれはしていない。

 だから最近彩香と話すときは彩香が読んだ小説のあらすじと感想を俺が聞く会みたいになっている。それだけでも俺は割と楽しんでいる。何より彩香と話しているだけでとても心がリラックスしている気分になるんだ。

 俺は恋というものをしたことがないから、これが恋と呼べるものなのかはわからない。けれどもし俺が主人格だったら彩香と付き合うなんていう選択肢はあったのだろうか……。


「ちょっと真二聞いてる?」


 おっといけない、少し余計なことを考えていたな。


「わるい、考え事してた」

「まあいいわ。それでね、この主人公がここで予想もしていなかった行動を起こすの。彼女の為だとはいえ、まさかそんなことが出来るなんて恋ってすごい力を秘めてるんだなと思ったの。ねえ、真二もそう思わない?」


 今彩香が紹介してくれているのは恋愛小説だ。最近興味を持ち始めたらしく、よくそれを読んでは俺に『恋ってすごいね』と俺に同意を求めてくる。同意を求められても俺に恋愛経験はないし、誰かを好きになったことなんてないからさっぱりわからない。


「うーん、俺にはよくわからないけど。きっとそうなんじゃないかな」

「いいなー、私もこんな風に恋をしてみたいなー」


 ちらちら俺の方を見ながらそう言っている。


「これからいくらでも恋をするチャンスはあるよ、そのためにも彩香が残れるといいな」


 俺はあえて気付いていないふりをしてそう返した。

「もう!」と彼女は少し不機嫌そうにしている。



 それからすこし経って、もう遅いので解散しようということになった。

 彩香とは既に解散し、今は自分の家に向かっているところだ。

 今日もあいつ必死に訴えかけていたな……。

 もちろん、彩香が俺に好意を持ってくれていることには気付いている。俺も彩香には多分だけど好意を持っているし、できることなら付き合いたいと思ったこともあった。

 だが、その願いが叶うことは百パーセントありえない。俺はあくまでも英一を支える人格。遅かれ早かれ俺の出番はなくなり、二度と出てこなくなる時期がいつか必ず来る。

 そうなったら彩香に寂しい思いをさせることになるだろう。だから彩香にはいつ消えるかもわからない俺に恋するよりも、もっと別の、普通の男に恋をしてほしい。

 そのことを彼女にしっかり伝えてあげられたらと思っている。けれど今彼女に話すと、希望を失い、人格を明里に渡す形になってしまう恐れがあることを予想して、それすらも言えずにいる。彩香には申し訳ないとは思うがこれからもずっと気付いていないふりをさせてもらうしかない。

 だけどもし、君が明里との争いに勝って、彩香として生きていくことが出来るようになったら、このことを話させてくれ。だから俺は明里より彩香に残って欲しいと思っている。理由は、それだけでいい。どうせ俺たちにはこうあって欲しいという願望を持つことしかできず、選択の余地なんてないのだから……。


 気付いたら目から一筋の涙がこぼれ落ちていた。

第25話を読んでいただきありがとうございました。

書いている人が何言ってんだって話ですけど二重人格って複雑ですね......



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