第23話 ミニ旅行(夢堕ち)
第23話を読みにきていただきありがとうございます。
うーん……。
ん? ここはどこだ?
僕は確か明里さん、信也、九条さんとの旅行の帰りだったはず……。
薄暗くて周りがよく見えないな。ライトをつけようとスマホを探したがなぜか見当たらない。これはどう考えてもおかしい。ひょっとして寝ぼけているのか?
とにかく近くに誰かいないかと叫んでみる。
「あのー! 誰かいませんかー!」
数秒待ってみたが一向に返事は来ない。しばらく待ってもう一度叫ぼうとしたときに目の前に一人の女性が現れた。
「わっ! びっくりした……」
顔を覗こうとしたが前髪で隠されていて見えなかった。
「あの? あなたは?」
その女性は僕と同じか少し上くらいの年齢で、身長は僕よりも頭一つ分くらい低く、酷くやせ細っている体系に、地味な模様の薄汚れた服を着て僕の前に立っている。
とりあえず目の前の女性が誰なのか気になったので聞いてみることにした。
「選んで」
「はい?」
「選んで」
選ぶってなんのことだろう?
「あの、何を選ぶんですか?」
「選んで」
全く話が通じない。いったいどうしたものか……。
「……いち」
「英一」
ん?
「あ、起きたか英一」
「あ、うん。どうかしたの?」
「どうかしたの? じゃねえよ。お前が『誰かいませんかー!』なんて大声で寝言叫んだから皆目が覚めちまったじゃないか」
そう言われて周りを見渡すと九条さんも明里さんも起きていて、二人とも僕の方を見ながら苦笑いを浮かべている。
「なんか変な夢でも見たのか?」
夢? そういえば何か夢を見ていた気がする。それも結構奇妙な。
「うーん……。なんか見てた気がするけどよく覚えていないや」
「覚えていないなら別にいいけどよ。なんかうなされてたから起こしただけだ」
「そっか、ありがとう」
「まあ、ちょうどいいタイミングだったよ。あと数分で着くからな。全員寝てたみたいだったし、このまま起きなかったら寝過ごしてたかもしれない」
そう言われて電車の表示を見るといつの間にか僕たちが降りる予定だった駅の二つ前まで来ていて、外も暗くなっていた。
そんなに僕は熟睡していたのか。まだ頭が少しボーッとしている。何か奇妙な夢を見ていた気がするけど何の夢だったか思い出せない。
「おい、寝ぼけていないでそろそろ降りる準備するぞ」
「わかった」
まあいいや。自分が見ていた夢を思い出せないなんてよくあることだし。いちいち夢の内容なんて把握しておく必要もない。
寝起きのせいか、少し体がふらつきながらも僕は立ち上がり、そこから降りる準備を始めた。
「よし、ここで解散だな」
初日に集合した駅に無事到着し、ここからは皆別々の線に乗って帰っていく。
「楽しかったね、今夏一番の思い出が作れたわ」
九条さんがにっこりと笑っている。
「また来年も行きましょ」
明里さんのその発言に僕も「うん、また行こう」と返しておいた。
「よし、じゃあ解散!」
信也の一言で別れの挨拶をした後、四人別々の電車に乗って、それぞれの自宅まで帰っていった。
自宅に到着し、夕食をとったあと僕は疲れていたのでシャワーだけ浴びてすぐ寝ることにした。
ベッドに上がり、そのまま体を横にする。宿に泊まっていたときは布団だったせいか、いつもよりもふわふわしている気がする。
ピコン
あとは目を閉じて寝るだけというところでメッセージが届いた。誰だろこんな時間に。といってもまだ二十時くらいで普通なら寝る時間でもないけど。
もう眠たいので気付いていなかったことにして、明日返事しようかと一瞬考えた。しかし万が一大事な用事だったらいけないので一応確認することにした。
スマホの画面を確認すると富永さんと表示されている。内容は『旅行に連れて行ってくれてありがとう。また来週から二学期が始まるけど来週からもよろしくね』とそう書かれていた。僕も『こちらこそありがとう。来週からもよろしく。おやすみ』と返しておいた。
第23話を読んて頂きありがとうございました。
今日で、ミニ旅行編はとりあえず終わりです。物語自体はまだまだ続くので今後ともよろしくお願いします。




