第21話 ミニ旅行(花火)
第21話を読みに来ていただきありがとうございます。
山登りも終了し、夜になった。夕食と入浴を終え、僕たちは宿の近くにある広場に来ている。夜は何をしようかと相談した結果、昨日の肝試し大会の景品でもらった花火をしようということになった。
無料参加イベントの景品だったから全然期待していなかったが思ったより良いものをもらえて皆喜んでいる。
「よし、準備完了!」
宿で借りたロウソクにマッチで火をつけ、その隣には終わった花火を入れる用のバケツを用意。始める準備が整い、信也は元気よく声を出した。
「俺はこれだ」
「私はこれ」
「じゃあ、僕はこれにしようかな」
各々花火を手にとり花火を開始する。
シュワと音を立てて色とりどりの火花が勢いよく飛び出す。
「綺麗だね」
「やっぱり夏といえば花火だな」
信也と九条さんも楽しそうにしてくれている。これだけ楽しんでもらえれば僕も苦労して旅費を稼いだかいがあったというものだ。
正直、初日に二人が喧嘩し始めた時はどうなるかと思ったけど、どうにか丸く収まってくれて本当に良かった。
「綺麗だね、英一君」
隣で明里さんも楽しんでくれている。
「うん、昼間の風景とこの花火。一日で二つも綺麗なものが見れたね」
「こんな旅行に連れてきてくれてありがとうね」
そんな風にお礼を言われると照れてしまう。けど、悪くない気分だ。
「こちらこそ、楽しんでくれてありがとう。僕にとっては楽しんでくれているところを見るのが一番嬉しいよ」
「うん」
花火のせいかもしれないが、明里さんの頬は赤らめている。僕もそんな彼女を見て僅かに顔が紅潮した気がした。
順調に花火の本数は減っていき、ついに残り一本になった。
「これは英一に譲ってやるよ」
「僕でいいの?」
残り一つとかになると信也が力ずくで無理やり奪ったりすることも多いのに珍しいこともあるもんだ。
「ああ、この旅行に連れてきてくれたのは英一だしな。皆を少しでも楽しませるために一切妥協せず、一生懸命旅費を稼いでくれていたのを俺たち知ってるぜ」
「うん、ありがとうね。感謝してるよ」
九条さんにまでお礼を言われてしまった。
そこまで言われると照れるし、ちょっと恥ずかしい。
「なのによ、初日は俺たちのせいでつまらない空気にしてしまって本当にすまなかった」
「それと、彩香ちゃんにも。怒鳴ってしまうくらい悲しかったんだよな、本当にごめん」
信也も九条さんも深々と頭を下げている。僕としてはそのあと楽しんでくれているから、全く気にしていないけど明里さんはどうなのだろう。明里さんが怒鳴った時今まで見たことないくらい悲しい表情を浮かべていた。もしかしたらまだ引きずっていたりもするのかも……。
しかし、明里さんは「ふふっ、全然気にしてないから顔をあげて?」と言って笑っている。
どうやら、僕の思い過ごしだったようだ。
「うん、僕も気にしてないからそんなに深々頭を下げられたら逆に困るよ」
「わかった、ありがとな!」
その顔はにこっと笑っていた。相変わらず切り替えの早いやつだ。まあ、それが信也の良いところなんだけど。
「明日にはもう帰らないといけないね……」
花火が終わって僕たちは棒のアイスを購入し、ベンチに座って他人がやっている花火を見ながら話している。
「そうね、もっと長くここにいたいわ」
「楽しい時間が過ぎるのはあっという間だからね……」
皆名残惜しそうに話す。
ほんと、楽しい時が経つのはあっという間だった。この時間が永遠に続けばいいのにと思う。でも、どんなに楽しいイベントでもいつかは終わるんだな……。出来ることなら今このタイミングで、時を止めたいとすら思う。
皆きっと、同じようなことを考えているのだろう。気付けば、少ししんみりとした雰囲気になってきた。
「なーに、また来ればいいさ」
この雰囲気を変えたのはやはり信也だった。
「別に俺たち死ぬわけじゃない。来年でも再来年でもいつでも来たいときにまた来ればいいんだよ」
こういうとき信也は本当に頼もしい。確かに信也の言う通りだ。これが最後というわけではない。また来年の夏休みに来ればいいし、大学に進学して皆別々の道を歩み始めたとしても、たまにこうして集まって遊べばいい。全然悲観的になることはないんだ。
「信也の言う通りね、また必ず来ましょ、この四人で」
「そうね」
「うん、そうだね」
口には出さないが、四人ではなくまた六人で来たい。僕と真二、彩香さんと明里さん、九条さん、信也の六人で。
きっと明里さんも同じことを考えていたんだろう。目が合ってお互い微笑んだ。
しかし、また“六人”で遊びに来たいという僕と明里さんの願いは叶うことはなかった。
第21話を読んでいただきありがとうございました。
今回は最後に意味深な一文を残してみました。
なんかよくこういう一文を見かける気がするのでちょっと参考にさせてもらって(笑)




