第14話 ミニ旅行(仲直りの作戦会議)
第14話を読みにきていただきありがとうございます。
二時間後、僕たちは目的地の最寄り駅に到着した。今回旅先の目的として、普段都会では体験できないようなことをたくさん経験し、親睦をさらに深めようというコンセプトだったのだが……。
「……」
「……」
喧嘩は収まったものの、誰もが口を開かない重い空気が場を支配していた。
電車に乗っている二時間の間で、なんとか明里さんの方は冷静さを取り戻してくれた。しかし九条さんと信也はやはりと言うべきか、お互いに一言も口をきいていない。
「とりあえず、一度宿にチェックインしてから川に向かおうか」
「うん……」
「そうだね……」
感情のこもっていない無機質な返事が返ってくる。
行先が山に決まったとき、キャンプするという話題もでたが、夜は危険だそうで、キャンプは禁止になっているらしい。その代わりに宿泊できる宿が用意されているというこが下調べの段階でわかっている。
なのでまずはそこにチェックインしたあと、近くの川へ移動し、泳いだり釣りをしたりして遊ぶのが一日目の予定だ。ちなみに指定の場所の川魚を釣ったら、無料で捌いて夕食にプラスしてくれるらしい。
「ねえ」
僕にだけ聞こえるような小声で明里さんが話しかけてきた。
「ん? どうかした?」
「あの二人放っておいたらそのまま仲直りしてくれると思う?」
それはある程度予想していた質問だった。それに、僕もさっきから同じことをずっと考えている。
信也と九条さんは、普段からよく言い合いをしている。しかし、今回のはいつものとは比べ物にならないほど、お互い怒りの様子が見て取れた。
「うーん、すぐには難しいんじゃないかな。今までも喧嘩はよくしていたイメージがあるけど、あそこまで本気で言い合いしているところは見たことないし」
「だよねえ……」
明里さんは悲しそうに俯く。
「私たちで何とか仲直りの手伝いできないかな?」
それも、さっきからずっと考えている。しかし、喧嘩は二人の問題だ。そこに僕たちが割って入って何か出来るだろうか。
結局のところ、二人で解決しないと、本当の意味で解決したことにはならない気がする。
しかし明里さんの目はいつにもなく真剣だった。
「せっかくの旅行なのにこのまま喧嘩したままなんて可哀そうだよ……」
明里さんは涙をためながらそう言う。
明里さん……。明里さんはいつも優しいな。僕はもしかしたら、そんな優しい明里さんに、何気ない気遣いが出来る明里さんに魅力を感じてしまったのかもしれない。
そのように考える度に、やはり間違っているんじゃないかと思う。明里さんはしっかりと自分の意見や考えを持って生活している。これは偽りのない事実だ。笑って、怒って、泣いて。間違いなく人間の習性を持っている。
これはもう副人格だからという理由だけで、いずれいなくなってしまうのはもったいない気がする。決して僕が明里さんに好意を持っているからとかそんな理由ではない。
明里さんだって、ちゃんと自分の意思を持って生きている。そんな彼女を見ていると自分が消えるべきという発言にどうしても違和感を感じてしまう。あの発言は本音から出た言葉なのだろうか……。
「英一君、聞いてる?」
「あ、ごめん。ふたりを仲直りさせる方法を考えていたんだ」
とっさに嘘をついてしまったが、まさかこの状況で明里さんのことを考えていたなんて言えるはずがない。
とりあえず、今は信也と九条さんの問題をなんとかしないとな。このまま、最悪な空気のまま三日とも終わってしまったら、それは流石に僕もへこんでしまう……。
「それでどう? いい方法思いついた?」
明里さんは期待している様子で僕に聞くが、申し訳ないことに何も思いついていない。
決して、さっきまで明里さんのことを考えていたから思いついていないのではない。明里さんにこうやって話しかけられる前から、いろいろ考えているが良い案は浮かんでいないのだ。
「うーんやっぱり二人の問題だから、僕たちが出来るのは仲直りさせるきっかけの場を作ってあげられるくらいじゃないかな」
「というと?」
「例えばなにか二人一組のペアを作って行動する機会を作るとか。多分僕たちがいるよりは仲直りしやすいんじゃないかな」
うん、自分で言っておきながら、名案だと思う。そうすれば僕は明里さんと二人っきりになってあのことについて話せるし、真二と彩香さんも話せる場を作れるで一石二鳥だ。
「悪くないアイディアだと思うよ。でも今のノリだとペアで行動するってこと自体に無理がある気がするけど」
たしかに彼女の意見はもっともだ。今の状況だと、いきなりペアで行動する計画を立てるのは、わざとらしいし少し無理がある。
何か疑われることなく自然に、二人きりにする方法があればいいんだけど、そんなもの都合よくあるわけないか……。
「とりあえずそれはあとで考えよう。あと少しで宿に着くし、時間が経てば二人も落ち着くと思うし、良い案だって浮かぶかもしれない」
明里さんはまだ納得のいっていない顔をしていたが、こればかりはいきなり『じゃあ僕と明里さんで行動するから、信也と九条さんも二人で行動してね!』というわけにもいかない。
「ほら、見えてきたよ」
結局、具体的な案は決まらず、僕らは宿に到着した。
第14話を読んでいただきありがとうございました。
実は昨日急にアクセス数が減って密かにショックを受けております(笑)
まあ、今回はアクセス数以前に最後まで書ききることを目標にしているので、たとえアクセス数ゼロになったとしても最後まで頑張ります。




