第13話 ミニ旅行(最悪な滑り出し)
第13話を読みに来ていただきありがとうございます。
なんとかギリギリで電車に飛び乗った信也と九条さんは、僕と明里さんの前でかなり息を乱している。
二人で一緒に来たみたいだけど何かしてたのだろうか。
「随分遅かったわね、いったい何をしていたの?」
僕が聞こうとしたことを先に明里さんが聞いてくれた。
「いやー、ごめんごめん。実はさ、昨日信也の家で遊んでたんだけど夢中になりすぎて終電逃しちゃってさ。荷物の準備はできてたから早めに起きて一度家に荷物を取ってからここに来るはずだったんだけどこいつが……」
九条さんが信也の方へ目線を向ける。それに対して信也は少し怒った表情「おいおい俺のせいかよ」で言い返した。
「当たり前でしょ? 勝手に目覚まし時計止めたのは信也なんだから」
「いや確かに止めたのは俺だけどよ、普通スヌーズ機能くらいつけとくもんでしょ」
んん、なんかいきなり僕の目の前で夫婦喧嘩みたいなものが始まったんだが……。
間に合ったんだからそんなのどうでもいいわ、というのが僕の正直な感想だ。
「私はそんなものに頼らなくても起きられるんですー」
「いや起きられてないじゃん」
「それは信也が勝手に止めたからでしょ! 目覚まし時計止めたなら責任もって起きなさいよ!」
ちょっとヒートアップしすぎた。これ以上はお互いの仲が険悪になりそうだし、周りの人にも迷惑だ。流石に止めよう。
「まあまあ、とりあえず間に合ったんだからよかったじゃん」
「良くないよ! 私がもう少し気付くのが遅かったら間に合わなくなるところだったんだから!」
九条さんは目がきっとなっている。
段々と、普段よく見かける言い合いから、本気の喧嘩に変わってきている気がする、これはほんとにまずい。
「俺だって一人だったら普通に起きれたし、間に合ってたわ」
「何よその言い方、まるで私が悪いみたいじゃない!」
信也も顔を真っ赤にして怒りをあらわにしている。
まずい、僕の一言で余計にヒートアップさせてしまった。僕は信也の幼馴染だから知っている、こうなった信也を止めるのは至難の業だということを……。
「だいたいお前は昔から何かするにしても肝心なところが抜けていて……」
「そっちだっていつもいつも……」
「もういい加減にして!!」
びっくりした……。明里さんが耐えられなくなったのか大声を上げた。それも周りが一瞬で静まり返るほどの声量で。しかし明里さんの方に振り向くと、その表情は怒りの形相ではなく、涙を浮かべていた。
「せっかく四人揃ってのミニ旅行なのに何でこうなっちゃうの……。私凄く楽しみにしていたのにこんなの悲しいよ……」
大粒の涙をぽろぽろとこぼし、すすり泣いている。
二人の言い合いはひとまず収まったが、賑わっていた周りも明里さんの怒鳴り声で黙ってしまった。
「お騒がせして申し訳ございませんでした。以後気を付けますのでどうかお許しください」
多分今、冷静に謝れるのは僕しかいないだろう。
流石にこの空気にしてしまった罪悪感から帽子を取って深々と周りに頭を下げた。
幸い気にする人はおらず、何事もなかったかのように周りは再び賑やかになり始めた。しかし、こちらの四人は全く解決していない。
声は出さなくなったが、未だにいがみ合っている九条さんと信也。それを潤んだ目で見つめている明里さん。はっきり言って最悪の空気だ。
「あのさ、せっかくのミニ旅行なんだから楽しもうよ。僕としても四人が楽しんでもらえるように妥協せずに、しっかりバイトして稼いだんだから、やっぱりこの旅行計画を立ててよかったって思えるくらい楽しんで欲しいな」
「ごめんなさい……」
「悪かったよ……」
二人は申し訳なさそうに僕の方を見る。
「とりあえずここで立っていても意味ないし席まで移動しよう」
こうして僕たちが立てた旅行計画は最悪の滑り出しだった。
第13話を読んでいただきありがとうございました。
13話は私が連載した小説の中で最長の話数になります。初めて連載した小説は特に何も考えずに書いて、途中で結局何を書きたいのかわからなくなって休載という形になってしまいました。今回は前回の反省を生かしながら、ある程度こうすると決めながら書いています。
本当はプロットとか作るのが良いらしいですけど、それを知ったのはこれを投稿した後だったのでこれが完結して、次を書く時があれば作ります(笑)




