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私の中に私たちはいる  作者: µ(ミュー)
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第12話 ミニ旅行(集合)

第12話を読みに来ていただきありがとうございます。

 彩香と話しているうちに四人の集合場所に着く直前になった。


「それじゃあ一度明里と交代しますね」


 さっきまで、なかなか会話が続かなくて困っていたのに、気付いたらもう集合場所の直前まで来ていたのか。

 話しているうちに、彩香も俺との会話が慣れたのか、緊張している様子がなくなり、かなり落ち着いて話してくれるようになった。この調子で、少しずつ距離を縮めていこう。


「うん、お疲れ様。また二人っきりになれたらどこかで話そう」

 

 俺がそう言ったら、彩香は「はい」とだけ言って、そのまま彼女はうつむいて数秒経ったのちに明里へとチェンジした。

 一見無機質な返答にも見えるが、その返答には間違いなく、また話したいという気持ちがこもっている返答に聞こえた。


「入れ替わったね、おはよう」

「うん、おはよう! なかなか上手くいってるみたいじゃない」

 

 明里は、お願い通り彩香と仲良くしているからか機嫌がよさそうだ。

 けれど俺はまだまだ、これだと仲良くなったとは言えないと思っている。


「うーん、まだまだこれからでしょ。まだ完全に心を開いてくれたって感じではないし」

「一か月ちょっとでここまで話せるようになってるなら十分よ。これからも彩香のことよろしくね」

「うん、そこは任せて」


 まあ、確かにこれまでずっと人との会話を明里に任せていたことを考えたら、よく話せている方か。

 つまるところ、彩香と仲良くなるは順調に進んでるなと感じ、少し嬉しくなる。

 あとは、最終的に英一とも仲良くなってもらい、いつか俺が消えても問題ないようにしておけば完璧だ。

 俺は、最終的なゴールをもう一度再確認した。


「それじゃあ俺の方も英一に戻るわ」

「わかった、またあとでね」


「......」


「あれ? これはどういう状況だ?」

「おはよう英一君、もうすぐ皆の集合場所につくところだよ」


 僕が混乱していると、明里さんが今の状況を簡単に教えてくれた。

 こればかりはどうしようもないことだけど、記憶を共有できないと真二とチェンジしてから意識がなくなって、気付いたら今みたいに知らないところにいる、なんてことによくなる。だから入れ替わり後は大抵状況がつかめず混乱してしまうことが多い。


「あ、おはよう明里さん。教えてくれてありがとう、記憶が共有できないといきなり入れ替わった時にそのときの状況がうまく理解できないことがあるんだよね」

「そうなのね、それって結構大変じゃない?」

「うん、かなり大変だよ。今みたいに急に入れ替わったら状況がわからないし、伝えたいこととか大事なことがあったらいちいちメモを残して入れ替わらないといけないし」

「そう考えると記憶が共有出来ないって面倒ね……」


 明里さんが苦笑いを浮かべながらそう言う。

 

「まあもう慣れたけどね」


 最初は本当に大変だった。真二も慣れてなかったのだろう。とりあえず入れ替わっている間にあったことが片っ端から書かれていて、それを読むだけで一苦労だった。

 最近は、慣れてきたのか、要点だけしっかりと書かれていて読みやすくなった。

 まあ、慣れるのもどうかとは思うけど……。


「ところでそろそろ集合場所のはずなんだけど他の二人は近くにいる?」


 集合場所は駅の三番乗り場の最前列、ここから発車する電車に乗って目的地に向かうのでここで集合することとなっている。


「まだ来てないんじゃないかしら?」


 辺りを見渡してもそこには家族旅行と思わしき家族が一組。帰省するのであろう若い男性が一人。あとは車いすにのった八十代くらいの女性とそれを押している五十代くらいの女性。

 どうやら信也と九条さんはまだ来てないらしい。


 今の時刻は八時四十分。僕たちが乗る予定の電車は九時十分のためまだ時間はあるが二人とも来てないのは珍しいな。


 ピコン


 そのときスマホに通知音が鳴った。

『ごめん、集合場所に着くの出発ギリギリになると思う。信也、幸より』


「信也と九条さん到着ギリギリになるんだって」

「そうみたいね」

 

 明里さんも自分のスマホを見ながら答える。

 とりあえず、二人とも連絡はついたから一安心だ。


「ここで待っててもまだ来そうもないし、駅弁でも買って待ってようか」

「そうね、皆で集合してから買う時間もなさそうだし、今のうちに買っておきましょう」


 こうして、僕たちは駅弁を選びながら、信也と九条さんが来るのを待った。




「ちょっとこれはやばくない? あと五分で電車発車しちゃうよ?」


 うーん、これは流石に困った。あれから二十五分ほど経った。そのうち来るだろうと思って、駅弁を選びながらゆっくり待っていたが、未だに二人とも到着しない。

 少し前に電話も入れてみたが、二人とも今こちらに必死で向かっているせいか、電話に出ず、連絡もつかない。

 普通の電車なら一本ずらす、とかで問題ないだろう。けれど今回乗る電車は特急券と指定座席つきだから次に乗るというわけにもいかないのだ。


「どうする? もう一度電話してみる?」


 憂いを含んだ顔で明里さんがが尋ねてきた。その顔には焦りも同時に見受けられる。


「うーん、いや、やめておこう。一度連絡はついてるし、もしかしたら今必死に走って向かっているかもしれない。それに時間ギリギリになるとはいえ、間に合うとは言ってたからそれを信じて一度乗車しておこう」

「でも、もし間に合わなかったら別行動になっちゃうよ?」

「うん、わかってる。だから万が一間に合わなかった時のことを考えて、いつでも降りられるようにドアの前で待機していよう」

「わかったわ」


 時刻九時九分、いよいよ二人は間に合いそうにないので降りようかと明里さんに言おうとしたところで二人の姿が見えてきた。


「おーい! 英一! 彩香ちゃん!」


「こっちだこっち! もうすぐ発車するから急いで!」


 やっときた、時間ギリギリだけどなんとか間に合ったようだ。

 僕も珍しく焦っていたのだろう、気付いたら大声でそう叫んでいた。


第12話を読んでいただきありがとうございました。

今日この12話を投稿する前の時点でアクセス数が新記録を達成しました。

これも、いつも読みにきていただいている、読者の方達のおかげです。ありがとうございます!



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