第11話 ミニ旅行(集合前)
第11話を読みに来ていただきありがとうございます。
三日後、いよいよミニ旅行出発の日が来た。
どこへ行くか散々揉めた結果、山へ二泊三日で行くことになった。
今から集合場所に向かうところなのだが、その前に彩香さんと先に会ってから行くので代わって欲しいと真二に言われたのでとりあえず変わろう。
「......」
「よし、それじゃあ行くか」
荷物を持って駅に行く。電車に乗って目的地に向かうが、皆最寄り駅がバラバラなので四人が合流出来る大きめの駅で集合することに決まっている。そしてその四人で合流する前に俺は彩香の最寄り駅に行くことになっている。
今回の旅行で、彩香にある程度俺と、あと英一とも仲良くなってもらうっていうのが隠れた目標なのだ。ただもちろん信也と九条には彼女らの二重人格のことは教えていない。つまり二人っきりの時にしか彩香は出てこられないからとりあえず四人で集合する前に一度彩香と会う。そして四人の集合場所に向かうまで少し話す、ということに少し前明里と相談した結果決まった。
そうこうしているうちに彩香との集合場所に到着する。
「さてと彩香はもう来ているかな?」
辺りをキョロキョロと見回してみると背後から声をかけられた。
「真二さんお久しぶりです」
「お、おう久しぶり。もう来てたんだ」
背後からいきなり声をかけられたので少しびっくりしてしまった。まあでも無理はない。もともと引っ込み思案な彼女が俺を見つけたからと言って大声で呼ぶところは全く想像がつかない。
そうなるとこちらによってきて声をかけるのが普通だろう。
「とりあえず集合場所に向かおうか」
「はい」
そういう彩香だが、また緊張しているのか、前回会った時ほどではないにしろ、表情がまだ少し強張っている。
このような微妙な空気感のなか、集合場所に向かうために再び電車に乗りだした。
「……」
「……」
(ガタンゴトン)
周囲には僕らのほかにはほとんど人はおらず、常に電車が音を立てて移動しているのが聞こえる。
いかんいかん! このまま無言で集合場所まで行ってしまったら先に二人で会っている意味がないじゃないか! とりあえず何か話さないと!
「えっと、彩香は今回の旅行で何をするか明里から聞いてるかな?」
いい話題が思いつかず、今回の旅行のことについて話そうと試みる。
「はい、明里の記憶は私にもあるので彼女が知っていることは私も知ってる思います」
「そういえばお互いの記憶を共有しているんだったね」
「はい」
俺たちの方は記憶の共有は出来ないからそのことをすっかり忘れていた。
「......」
「......」
だめだ! 会話が終わってしまった。次!
「えっと、彩香は普段どんなことをしているの?」
「どんなこととは?」
「ほら、彩香と明里って全然性格違うでしょ? なら趣味とかも明里とは違うかなと思って、普段何してるのかなって?」
とりあえず、話題に困ったら、趣味の話でもしていれば、なんとかなるだろう。
「そうですね、普段は本読んだりしてます」
「小説?」
「はい、そうです」
小説か、俺は普段読書しないから、その辺は全然わからないな。けれど、もっと彩香のことも知っておきたいしもう少し詳しく聞いてみるか。
「俺はあまり小説とか読まないんだけど読みだすとハマるものなの?」
「はい、何というか読んでいると自分が小説の世界に入り込めるというか、とにかく読みだすとやめられませんよ」
少し、彩香の口調が元気になった。自分の好きな物だときっと話しやすいのだろう。
よし、それならこのままこの話題を続けよう。
「へー、そうなんだ。じゃあ俺も今度読んでみようかな。何かおすすめの小説教えてよ」
「初めて読むなら○○著の○○○なんておすすめですよ。初めて読む人でも読みやすい配慮がされてあってそのうえ物語も結構おもしろいんです」
「わかった、じゃあそれ読んでみるよ」
やはり、相手のことを理解するなら、まずは相手のことを知るところから始めないとな。小説にはあまり興味はないけど、英一の代わりに出ているときにたまに読んでみるのも悪くないかもしれない。
「その本なら私持っているのでよければお貸ししましょうか?」
「え? いいの?」
「もちろん構いませんよ、それで小説に興味もってくれたら私としても嬉しいですし」
「ありがとう、じゃあお言葉にあまえて貸してもらうよ」
気付けば彩香は、先ほどのような緊張している顔の強張りもなくなり、自然な笑顔へと変わっていた。
うん、やはり自分の好きなことになると口数が増えたな。誰でも自分の好きなことについては楽しく話したいものなんだろう。
まあ、問題はその借りた本を読んで俺が小説に興味を持てるかどうかなんだけど。まあ、そこはとりあえず読んでから考えても遅くないだろう。
第11話を読んでくださり、ありがとうございました。
最近少しずつではありますが、ブックマークや評価を押してくれる方が増えてきて嬉しく思います。
これからもっと増やせるほど読み応えのある小説にしていけるように頑張っていきます。




