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私の中に私たちはいる  作者: µ(ミュー)
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第10話 夏休み

第10話を読みに来ていただきありがとうございます。

「よし、じゃあこれで1学期は終わりです、夏休みだからといって羽目を外しすぎないよに」


 三十度を余裕で超えるこの気温。ミンミンとうるさい(せみ)の鳴き声。そして、先生による一学期の締めの言葉。いよいよ夏休みが来たんだなと実感する。


「よお英一、お前は夏休み何するんだ?」


 信也がこっちへとやってきて気楽なことを言い出す。


「バイトだよバ・イ・ト」


 僕は苛立ち、少し強い口調で返す。


「あー、そうだったそうだった、英一君勝負に負けちゃって旅費稼がないといけないんだったね~」


 こいつ絶対わかっていて聞きにきやがったな。


「大体大して差がなかったんだからお前も少しは払えよな」

「やだね~、一点差でも勝ちは勝ちだもんね~、それじゃバイト頑張ってね~。俺は今から友達と遊んでくる」


 そう言い残してうきうきと向こうへ行ってしまった。


「あいつは僕を煽るためだけにわざわざ話しかけに来たのか?」


「ねえ、英一君」

「へ?」


 後ろから突然明里さんに声をかけられ、驚いてしまい、思わず声が裏返ってしまった。

 この間のあの出来事があってから、少しお互いに気まずい雰囲気が漂ってしまっている。

 正直、あのときの僕は混乱しすぎていて何を言ったのかははっきりとは覚えていない。だけど何かとんでもないことを言ってしまった覚えだけはある。


「よかったら一緒に帰らない?」

「あー、うん。いいよ」

「よかった、それじゃ行きましょ」


 帰り道、気まずかったから普通に話せるか不安だったけれど、案外話題には困らなかった。


「それにしても暑いねー、いったい今日何度あるの?」


 明里さんはハンカチで汗を拭いながらそう言った。


「確か今日の最高気温は三十七度だったかな」


 ほんと暑い。日差しが僕の皮膚をじりじりと焼き付け、じっとしていても汗が体を伝う。まるでサウナにいるような暑さだ。


「あー、暑い! それ聞いたら余計に暑く感じてきちゃった」

「暑いのは嫌いなの?」

「ええ、嫌いだわ。冬は厚着すれば寒さはしのげるけど、夏はどんなに薄着にしても暑いもの!」


 明里さんは苛立つ素振りを見せながらそう言った。


「それにこうも暑いと頭がボーッとして何も考えられなくなっちゃうわ」

「まあ、確かにこれだけ暑いと判断が鈍りそうだよね」

「でしょ? だから私は断然冬の方がいい! 冬、こたつに入って鍋をしたい!」


 そう言って、明里さんはこたつに入って鍋を食べる妄想をしているのか、顔を少し上にあげて、幸せそうな表情をしていた。

 僕も彼女に続いて想像しようかと思ったが、余計に暑くなりそうなのでやめにした。



「そういえば明里さんは夏休み何して過ごすの? 僕はほぼ毎日バイトになっちゃうけど」

「私? そうね、暑いの嫌だし一日中冷房の効いている部屋で寝ていようかしら」


 このようなたわいもない雑談が続いていたが、僕は話しながら他のことを考えていた。

 この前のことを謝らなければならない。


「ね、ねえ。この前のことなんだけどさ」


 そう言おうとした途中で彼女の叫び声で止められてしまった。


「あー! アイスの新商品だって! これは買うしかないでしょ!」


 そう言って彼女はコンビニまで走っていってしまった。


「冷たーい! やっぱり夏といえばこれだよね」

「うん、ひんやりしてておいしいね」

 

 よし、今度こそ謝ろう。


「あ、あのさこの前の」

「英一君! ボーッとしてたらアイス解けちゃう!」


 そう言われて、僕のアイスを見てみると買ったばかりなのにもう液体へと変化し始めている。


「あ、本当だ。早く食べなきゃ」



「それじゃあね、皆で行くミニ旅行楽しみにしてるから」

「うん、またね」


 結局謝るタイミングが見つからず解散し、謝り損ねてしまった。




 夏休みも半分が経過したころ。僕はというと、その期間中ひたすらバイトに打ち明けていた。

 そしてやっと四人分の旅費も稼ぎ終わり、今日は久しぶりに家でくつろいでいる。

 本でも読もうかと思って本棚を物色しているとスマホからメッセージの通知音がなった。

 明里さんからだ。そいえば最近二重人格の件で真二とよく会っているらしい。真二が出ている間は僕の記憶はないので、どんな話をしているのか詳しくは知らないけど、真二と彩香さんの間でやりとりが少しずつ増えてきているらしい。本当のところ、僕が彩香さんとのやりとりを増やさないといけなかったのだ。けれど、あの出来事のせいで真二に丸投げした形になってしまって申し訳ないと思っている。

 一応このことは真二には謝っておいたけど、とりあえず、しばらくは真二が彩香さんと少しずつ仲良くしていくことにしたらしい。


 もちろん悪いとは思っているが、僕は明里さんに残って欲しいし、それとは別に違和感も感じるんだよな。

 まず、明里さんと彩香さんの関係について。とても明里さんが副人格のようには見えない。だからと言って、彩香さんが主人格ではないとは言わないけれど、なぜかしっくりこない。

 僕が普段から明里さんと会話しているからなだけかもしれないけど、明里さんは明里さんで彩香さんの副人格とか関係なしに一人の人間として日々過ごしているように見える。

 次に明里さんの反応。この前自分が消えるべきだから仕方ないと明里さんが言っていたとき、凄く違和感を感じた。まるで自分にそう言い聞かせているかのように、辛そうな表情をしているように僕には見えた。


 まあ、あくまでも全て僕の想像だけど、どこかで二人になるタイミングがあったら、もう一度しっかり話し合いたいなと思う。

第10話を最後まで読んでくださりありがとうございました。

とりあえず節目までいきましたが、まだまだ続きますのでよろしくお願いします!


あと、今後のモチベにもなりますのでよければブックマーク登録などもよろしくお願いします。

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