47 黄昏の暁
誤字報告ありがとうございました!
豆知識ありがとうございました!
ユウくんはあっという間に周囲に馴染んでアレンジークと騎士達とともに魔物討伐に向かっていった。
私は家族用のテントにエリオットと二人。
めっちゃ説教されている。
既に私は半泣きだ。
とにかく報告・連絡・相談は大事だから、なにか事を起こす前は必ずエリオット達に報連相する事を何度も言われている。
「報告と連絡をしたからいいと言うわけではないよ。そこから相談して行動するかどうか決めるんだよ」
対面でしっかり目を合わせながら確認とってくるあたり、とても大事なこと言われているんだろう。
私はこくこくと頷き、時々復唱。
精霊の偉大さや危険性まで説明され、普通は驚くし畏怖するものらしい。
私が召喚した精霊のドラさんがたまたま友好的だったから良かったものの、とか伝承にある勇者を気軽に喚ぶなんて、とかを言葉をちょっとずつ変えてそれはもうこんこんと。
二時間ちょっと、大事なお話は続いたよ。
後半はちょっと泣いてしまったけど、私が将来周りに迷惑をかけないように、真剣に諭してくれたんだとしっかり感じられた。
転生して幼児化したことであまり我慢できてないなとぼんやりした自覚はあったけど、甘かったなー。
落ち着いた行動を心がけなければ。
って今はこんな風に考えられるけど、いざ現場になると後先考えられないんだよなー。
これが若さか……!
と、お話後のぼんやりした頭でぼんやりと思考。
現実逃避とか言うやつだね。
ありがたいお説教が終わってすぐに、タイミングを見計らったようにアレンジーク達が帰ってきた。
帰ってきたアレンジークは私を見て優しく微笑み頭をなでた。
たぶん絶対タイミングはかってたよね!?
私がハッとしたのを察すると、アレンジークはすぐにエリオットのところに報告に行くと向かった。
してやられた気分とはこの事か!
皆会議用テントに入るなか、ユウくんだけは私のほうに来た。
私はお説教され後、お外でぼんやり景色を眺めている。
「ただいまファリエルちゃん! なんかほんとゲームっぽい世界だよねー! ステータスとか出るし、魔物倒すと消えてドロップ出るとかさー。まあ、ときどきダンジョンからのスタンピード産じゃなくてナマモノの魔物でショッキングな事態になったりしちゃったけど」
ユウくん、ご機嫌だね。
ユウくんの話では領地の一割程度分の魔物討伐が終わったらしい。
アレンジーク達騎士が的確に指示出ししてくれたから効率よく討伐出来たんだって。
もうそんなに倒したんだ。すごいね、勇者とアレンジーク達。
「てなわけで今日はもう夜支度するって言うから戻ってきたんだ。だから僕も今日は帰らせて貰うね! 明日は朝六時くらいに喚んでよ」
ユウくんは気軽に送還希望でさらにまた召喚希望らしい。
これ私またエリオットに説教コースならないよね?
一応エリオット確認してからユウくん送還しよーっと。
翌朝、言われた通りの時間にユウくんを召喚したらめっちゃ荷物持ってた。
懐かしのMADE IN JAPANのお菓子くれた。
やったー!
朝からアレンジークとユウくん達は張り切ってまた魔物討伐に出掛けた。
そのあとを今日はゆっくりと追いかけるようにまた大移動する。
今日からは貰った領地で過ごすことになる。
お隣の領主様、今まで間借りさせてくれてありがとう!
「ではでは、わたくしの出番ね」
ドラさん。
朝から張り切っている。
「ワシも出番だな」
ドラさんの隣にずずいと並んだのは大地の精霊ノームのノムくん。
朝、きちんとエリオットの了承を得て召喚した。
ノムくん、ワシとか言ってるけど見た目八歳くらいなんだよね。ジジイぶりたいお年頃らしい。
ドラさんがコッソリ教えてくれた。ついでにそっとしといてあげて、とも。
領地の大体の地図とノムくんの能力で道をつくりながら進む。
道を作る予定の草原や森はドラさんが開いてくれる。
わさわさわさ……
ダダダダダダ……
あっという間に出来ていく綺麗な道並み。
エリオット達も領民としてついてきた人達も呆然とその光景を眺めている。
もちろん私もびっくり。驚きすぎて口を開けて見てしまった。ご令嬢にあるまじき姿というやつ状態。
しょうがないよね。
だって草や木がひとりでにわさわさと避け、それに呼応するかのようにダダダダダっと平らに押し固められた整備された道が出来ていくんだもん。
しばらく皆呆気にとらわれていたけど、どんどん作られていく道にふらふらと誘われるように進んだ。
すると昼頃には隣領に近い村建設予定地に着いていた。
精霊すごい。
ノムくんによってきちんと整備された道は今まで通ったどんな道より進みやすかった。
なんだかわからないけどすごかった。
ドラさんによる草木の移動もすごかった。
進みながら森を整理したらしく、街道に近いところは林にしていたし、所々休憩できるスペースもつくっていた。見渡しが良い街道となった。
その際に間引きした木ももらえた。
そして村の建設もすぐに終った。
ドラさんに張り合ったノムくんが、村の建設予定図をエリオットからぶん取るように受け取り、レンガ造りの家や施設を、村を囲う堅牢な壁を、その外堀を、壁門に続く橋をあっという間につくっちゃったんだよ。
で、現在私たちの前にどや顔で立っている。
「ふふん、どうじゃ。ノームはドライアドより役に立つ精霊ぞ」
ドラさんをみると、苦笑しながら頷いているので
「う、うん。ありがとう」
とノムくんにお礼を言った。
ノムくんはそれでご満悦の様子。
完全にドラさんに子供扱いされてるけど、気づいてないっぽい。
それがドラさんには可愛く見えるらしい。
私はまたその境地には至れてないので、ちょっと引いてしまったのは黙っとこう。
思いもよらずあっという間に拠点ができてしまったので、ずっと呆気に取られっぱなしになっちゃったけど、拠点という落ち着ける場所ができ、エリオットの部下により周囲の安全が確保出来たのがわかった。
なんだかんだエリオットはしっかりやることはやっていた出来る領主だった。
ぼんやりしていた私とはちがかった。
そしてエリオットはお年寄りを一ヶ所に集めた。
そんなエリオットの隣に私は立っている。
「これから、約束のポーションを配る」
そう宣言し、エリオットはお年寄り一人一人に若返りのポーションを渡していった。
……あれ?
300人どころか400人くらいいるような。
お年寄りの方々はエリオットからポーションを貰ってもすぐには飲まなかった。
最後に渡される人を待っていた。
1時間近くかけてエリオットが全員に配り終え、元の位置に戻って周囲を見渡したのを見てから、お年寄り達は示し合わせたように一斉にポーションを飲んだ。
ミシミシ、ビリビリ、ベリ……
っとなんとも表しがたい音がそこかしこで聞こえた。
若返りポーション、思ってたよりすごかった。
さっきまで腰を曲げ、ちんまりとしていたお年寄りたち。
ピシッと背筋が伸び……どころじゃない!?
えっ、グングン背が伸びてる!?
髪や肌はコシ張りツヤはもちろん、白髪から元々の髪色に。寂しげだった髪もふさふさ!
男性の半数以上が筋骨隆々、その他の男性でも引き締まった体に鍛え上げた筋肉が。
女性もアスリートのようなしなやかな筋肉がしっかりついた体つきに。
元のお年寄り全員が何故か身長が伸び、筋肉が張り、着ていた服が大事なところは避けつつはち切れていた。




