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44 ドラさん

誤字報告ありがとうございました!

 

 場所は話し合い用に作られた大きな天幕。

 予想外に植生が豊かな領地に困惑しつつも予定していた計画を調整、変更をする会議に参加。


 最初こそ領主様のお嬢様扱いされ、ある意味マスコットみたいな感じに見られていたけど、ちょいちょい意見を挟んでみたら、今では立派な開拓メンバーとしての地位を確立し、職人じいちゃんたちと仲良しになれたし、きちんと意見を聞いてもらえるようになった。

 ここ1ヶ月と少し、お年寄りと生活することで私の声帯は鍛えられたと思う。お腹から声を出すって大事よな。


 なので早速私は提案する。

 下地は全部精霊にお願いしましょう、と。


「精霊?」


「精霊ってあの精霊ですかい?」


 不思議そうにするエリオットと、あの精霊ってどの精霊? ってツッコミを入れたくなる疑問を返してくるゴードン。


「うん。道作るの草大変。なだらかにするの大変」


「だから精霊にお願いする、と」


「うん」


 餅は餅屋って聞いたことあるし。

 そもそも人手が圧倒的に足りない。

 隣領の端っこを間借りしている状態のここで何ヵ月も過ごすより、さっさともらった土地に仮拠点作ってゴードン達を若返らせてマンパワーを得たい。


 それに毎日腰痛やひざ痛に悩ませれ、自力排泄が難しくて悔しそうにしているじいちゃんばあちゃんを早く何とかしてあげたい。腰痛やひざ痛、どっか痛いなどはポーション類で一時的には何とかしてあげていられているけど、頻尿などでトイレが間に合わないとかは今の私にはどうにも出来ていない。私も悔しい。


 幸いにしてそういった老人達にもんくを言う人はこの集団にはいなかった。

 お世話に雇っている未亡人やお手伝いできる年齢の子供達以外にもたまに手の空いている人達が率先して手伝ってくれている。


 うちの領民になってくれる人達がいい人揃いでよかった。


 後で聞いた話しによると、自分達を捨てた家族や貴族への復讐心で一致団結状態だったらしい。

 その復讐ってのも、うちの領地を他の領地より、より良く立派にして見せ、ざまあする方向の復讐だったようなので、まあ穏便な復讐方法でよかった。


「う~ん、お嬢様のことなんでそれができるとしましょう。そしたら対価はどうするんで?」


「「対価?」」


 エリオットと私がハモった。


「精霊に頼みごとするには相応以上の対価が必要と聞きます」


 後から追いかけて来てくれた組の文官くんが補足してくれた。


「そなの?」


 初耳!


「はい。精霊や妖精は時々我々人間の願いを叶えてくれます。しかし精霊は0か100。全く願いをきいてくれないか、人が頼んだ以上にやり過ぎて破壊の領域にするかです。そして妖精は望んだことを対価さえ払えば叶えてはくれますが、いたずらという悪意込み、という後味の悪さを残してくれます」


「へー」


 知らなかった。

 私の知ってる精霊や妖精と違う。

 その事を伝えてみると逆に驚かれた。

 エリオットは精霊とか妖精の存在は知っていたけど詳細までは知らなかったらしく、どちらの話も新鮮に聞いていた。


「そうか。ではファルの知り合いの精霊ならそんなことはないんだね?」


「うん。みんなでお酒飲んだり食事して魔石か魔力をちょっとずつ渡したら対価になる」


 はず。


 そもそも対価なんて今まで払ったことない。

 呼び出していっしょにお菓子食べてジュース飲んでおしゃべりしてばいばーいってして終わりだった。


 あ、そうか。

 野良の精霊と召喚精霊は違うのかも。


 その気付きも加えて話してみたら、試しに召喚精霊と話して見ようとなった。


 なのでいちばん話しやすそうな精霊さんを喚ぶよ!


「召喚! ドライアド!」


「ちょ、ファル! まだこちらの準備がっ!」


 めずらしく慌てるエリオットだけどもう遅い。

 喚んじゃった!



 ふわーって輝く魔法陣から出てくるおっとりした感じの美しいふくよかマダム。


「ドライアドのドラさん」


 やっぱ植物系のエキスパートと言ったらドライアドだよね。


「ごきげんよう、ファルちゃん。あら、今日は人がたくさんね」


「うん。父と職人たち」


「ウフフ。あなたがファルちゃんのご自慢のお父様ね。はじめまして、わたくしは精霊のドライアド。ファルちゃんからはドラさんって呼ばれておりますのよ」


 ドラさんは私の雑な紹介にも快く対応してくれるんだよ。


「お初にお目にかかる。ファリエルの父、エリオットと申します」


 さっきまでのふんわりした雰囲気からキリッとお仕事モードでドラさんにご挨拶するエリオット。さすが元近衛騎士団長、切り替えが早い。すごい。


「ご丁寧にどうも。……あらら? ファルちゃん、もうひとりお父様がいらっしゃるんじゃなかったかしら?」


 他はどうみても老人、どうみてもナヨっちい文官。

 ドラさんに教えたもうひとりの父、アレンジークの特徴とは一致しないひとばかりだ。


「うん。それが……」


 これまでの経緯を説明した。

 途中から、というか割とはじめのほうからエリオットと文官くんが説明してくれた。

 ドラさんが(ファルちゃん)ではさっぱり要領を得ないとさっさと見きりをつけてエリオットに聞いたのが始まりだ。ちょっとヒドイ。


「なるほどね。それはとっても楽しそうね!」


 うふふっとホントに見るからに楽しげにするドラさん。

 それを見て少し驚くもホッとするエリオットたち。


 私は私が楽しいと思うことにドラさんも楽しそうと言ってくれたことがとても嬉しい。

 いっしょにワクワクできるのって楽しいね!


「喜んでお手伝いしましょう。そうね、どうせならパーっと盛大にしたほうがお祭りみたいで楽しいと思うの」


「うん!」


「うん、ってファル、どう言うこと? きちんと説明して。ドラ殿もよければ詳しく我々に教えていただけないだろうか?」


 焦りを滲ませるエリオットが、勝手に盛り上がる私とドラさんを少し冷静にさせるように説明を求める。


 私はなんとなくイメージがあって、それは私に召喚されたドラさんにはなんとなく伝わる。

 それにドラさんの考えもあるのでそれ込みでエリオットに説明したい。なので……


「ドラさん……」


 私はその説明をドラさんに丸投げる。


「しかたないですね。では、わたくしから説明いたしましょう」


 私の説明ベタを完全把握しているドラさんがしっかり説明してくれた。

 しかたないとか言ってるけど、お顔はとっても楽しげだ。


 説明としては、たくさん精霊や妖精を喚んじゃってさっさと領地開拓しちゃいましょう。ついでに土地開発して精霊や妖精の住み良い場所も作りましょう。その目眩ましの為に人間の娯楽施設とかも作れば我々にちょっかいかける暇ないですわね。ってな感じだ。


 ちゃっかり精霊村作る計画を立てたようだ。


 この世界は普通に人と精霊は共存できている。

 人が精霊や妖精を虐げることはない。危害を加えようものなら何されるかわからない、触らぬ神に祟りなし的なアレだ。

 逆に精霊教みたいな宗教はある。

 といっても、ガチなやつではなく、いや、ガチなんだけど、ちょっと違うんだ。

 宗教としてきちんと統制がとれているアイドルオタク集団みたいな感じなんだ。


 そして精霊教の教団内も細分化されているみたいなんだけど、私はそこまで詳しくないので、そんなおもしろ……変わった宗教がこの世界にありますよってお知らせでした。


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