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004 お嬢様生活はじめました

 


 私の護衛としてつけられたリヒト、それからメイドとしてつけられたロティルはどちらも10代前半に見える。


 どちらも見た目が可愛らしい、美少年と美少女と言えるだろう。

 眼福っすわー。


 そんな二人は、エリオットたちから私を預かると、淡々と職務をこなす。


 リヒトは護衛の他、私の身の回りの物を揃えたりする侍従としての役割も与えられたようで、生活必需品を揃えたり、飲み物やお菓子の用意から給仕までしてくれている。


 ロティルは私の身の回りの世話だ。

 早速ロティルに抱きかかえられた私は風呂場に連れていかれ、温かい湯を貯めた大きな風呂桶に入れられ身を清められている。

 一応2日に1度は孤児院の職員に体を拭いてもらっていたけど、結構汚れているもんだね、私。

 結構ショックだわー。


 今まではおねしょ対策にしか使ってなかった【浄化】の魔法だけど、自分に対しても使った方が良かったかもしれないね。

 今更だけど。


 その後着せられた服にも少なからずショックを受ける。


 かわいくない。


 お嬢様になったのならもっとこう…もっと可愛らしい服を着られると思ったけど、どうもこの世界と私の「可愛い」の感覚が違うようで。


 前世では服は寄付で貰っていた。

 可愛い服もあったけど、私の顔には似合わなかったし、年下の子を優先する為に私が選べる順番になるころには無難な服しかなかった。

 まぁ、それはそれで良いんだけどね。別に変と言うわけじゃないし。


 だからというわけではないけど、可愛い服やオシャレな服への憧れが強くあった。

 暇があるときや息抜きに図書館の雑誌コーナーで、ファッション雑誌を読みまくった。

 規制品は手に入らないけど、自分で手作り出来そうな小物はネットで調べて自作したりもした。結局は下の子たちにとられちゃったけどね。


 ああ、ネットと言えばあとは「あの店の再現レシピ」とかも調べて作ったりしたなー。

 食べてみたいけど食べられなかった。でも再現レシピで作ることが出来れば都会で人気のお店にも行った気分になれるし、下の子達も喜んでた。孤児院のお手伝いも出来て一石二鳥だったし。


 って現実逃避したくなるほど、前世の記憶がある私にとっては野暮ったい女児服だった。

 幼女服だからってのもあるかもしれないけど、幼女なら幼女なりにもっと可愛いデザインがあっても良いと思うんだよね。


 なんかこれ、上等な素材で出来た布で貫頭衣を作って袖とフリルと刺繍つけて綺麗な布を腰に回してベルト代りにリボン状にキュっとしてみました、みたいな…。

 刺繍が入っているってことはそれなりにお金かかってるってことなんだけども、それでもデザインが可愛くなさすぎる…!


 私今、せっかく幼女なんだし、せっかくお嬢様なんだから純正ロリっ子が着るような可愛い女児服着たかった…。

 それを今世の異世界で求めるのはわがままか。


 そんなどこか、私的にはパッとしない服を着させられ、またロティルに抱き抱えられながら私の為に用意された部屋に戻ると、両親とリヒトがいて、両親は私を見るなり


「ああ、ファル。とても見違えたね」


「そうだな。立派な淑女だな」


 と、大変ご満悦なご様子。

 それからアレンジークが私をロティルから受け取ると、高い高いをしてくれた。


 あ、コレ普通の3歳児にやったらダメなやつ…

 騎士と言うだけあって物凄い力技での高い高いなんですけど!?


 とっさにラノベ知識で作成した魔法【身体強化】を使って自分の身を守る。


 子供部屋なのに高い天井。

 その高い天井に届くか届かないくらいまで高い高いによって宙に浮かんだ私。

 そこから重力に従って落ち、きちんとキャッチされたとしても普通の3歳児への体の負担(G)は物凄いかかるはずだ。


 調子に乗って高い高いしてしまったアレンジークも私を上空に放った瞬間に気付いたらしく、物凄く焦った顔をしているのがわかる。

 エリオットとリヒト、ロティルも瞬時に顔が青くなるのがわかった。


 その表情や顔色を見て、私はどこか安心してしまった。

 この人達は心の中はどうあれ、私を本当に心配してくれてるんだな、と他人事のように思った。

 これが走馬灯と言うやつだろうか?

 ちがうか。


 物凄い高い天井なのに、私の背中が天井に トンッ と付いた。


 けど大丈夫。

【身体強化】によって私はなんともない。

 けど私を見上げる人達はとても悲壮な顔をしている。


 それから慌ててアレンジークは私をキャッチする態勢をとり、受け止めた。


 その時彼は私の状態に気付いたっぽく、


「これは…」


 と驚き呟いていた。


 けどすぐにその腕から私をエリオットに取り上げられ、ついでに殴られていた。


「バカか! 脳筋! 女の子だぞ!? しかもまだ3歳の! あんなに高くあげるバカがどこにいる!?」


 ここにいますね。

 てか優男風のエリオットでも怒ることあるんだね。

 まあまあ、とか言って結局怒らないタイプに見えたのに。

 アレンジークの顔グーパンしてたぞ?


 エリオットは私に異常が無いか確かめ、見た目と私の表情に異常や問題がないことがわかるとすぐに私をロティルに任せ、アレンジークに説教を始める。


 一通りエリオットから説教を受けたアレンジークは反省の言葉を口にし、それから私にも謝罪。

 その後で、私についてエリオットに伝えた。


「ファルはもしかしたら、天性の魔法の素質があるのかもしれない」


「はぁ? 何を急に」


「抱きとめた瞬間、【強化】魔法を感知した」


「なにを…」


 とエリオットも反論しそうになるが、あの状況を思い出したのだろう、すぐに少し考え始める。


「孤児院の中でも群を抜いて魔法の素質がある子だと思ってはいたけど、まさかこんな幼い子が…?」


「あの状況で泣きもしないと言うことは、痛めた所はどこもないと言うことなんだろう。と言うことはやはり無意識で【強化】魔法が使えたということにならないか? もしやそのせいで、知らず魔法を使っていたから魔力枯渇を起こして毎日倒れていたのではないか?」


 ふむふむ。

 いいとこついてますね。


「そうか。よかった…そのおかげで大事にならなくて…。本当に良かった…」


「その、本当に悪かった」


「いくらファルが【強化】魔法が使えるとわかったとしても今回はたまたま発動出来ただけかもしれない。今はこんなに幼いから無自覚で使った可能性が高い。けどこれが何度も続くとは限らないんだから、気をつけよう。俺も気をつける。子供を育てると言うことをもっと自覚しないといけない」


「そうだな。本当にすまなかった」


 と、そんなことがあった事を境に、この家での私の扱いはとてもデリケートなものとなった。

 両親が率先してガラス細工でも扱うかのように接する。

 そしてとても可愛がる。


 不思議な感じだった。

 私の事だけど私の事じゃないみたい。

 夢を見ているみたい。


 こんなに誰かから構われたり大事にされたこと、今まで無かったから反応に困る。


 両親の私への対応に、家の人達もそれなりにきちんと私を「お嬢様」として扱う。

 黒い髪と目をした元孤児という侮りも蔑みも、私には感じられない。

 うまく誤魔化してくれているだけかもしれないけど、今のところはホッとできる環境が作られていることにありがたく思う。



 ・・・・・・・・・・



 私に魔法の才能があると知った両親が、早速次の日から魔法の先生を私につけた。

 3歳児の私につけられた先生は唖然としていたし、親バカにも程があると思っていたっぽいけど、いざ私の魔法を目にするととても驚いていた。


 魔法の先生はアレクシスと言う名前で肩に猫を乗せている青年。

 両親の知り合いだったらしく、宮廷魔術師という肩書を持っていた。

 バイトと言う名の冷やかしで私の家庭教師を引き受けたようだった。


 初授業を受ける私を、半休を取って見まもっていたアレンジークも、アレクシスに言われるまま魔法を披露する私に唖然としていた。


「ちょっと待って。もしかして、言葉をしっかり理解している、と言うことでもあるってこと? この歳で、何が水魔法で何が空間魔法であるかと言うことも理解しているのか!? 魔法の才能どころの話じゃないぞ!? てかしゃべらないのに魔法? 無詠唱だよな!? コレ!」


 アレクシスはそっちの方でも驚いていた。

 彼はしばし混乱した後、何か吹っ切れた様に、いい笑顔で私に色々魔法を教えてくれた。


 教えてもらった魔法も聞けば大体彼以上の威力で再現出来た私。

 アレクシスのプライドはズタズタッぽかったけど、それ以上に「なるほど、こういう原理か! そうか! こうすると威力が!」とか、彼も私から学ぶことも多かったらしく、とても喜んでいた。


 しばらくして私が魔力の使い過ぎでぶっ倒れ、その時遠くの方でアレクシスがアレンジークに怒られているのを聞いたような気がする。

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