表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/47

032 絶望の先、それは

 


 ダンジョン2泊3日目。

 2日目の昨日は余裕を持って探索を切り上げた。

 おかげでキャンプ道具をバージョンアップさせることが出来たので快適に眠れたよ。私は初日もグッスリだったけども。


 もちろんリヒト用の簡単なテントも作った。

 寝袋をリメイクしてキャンプ用の簡易ベッドをつくった。

 地べたに寝具を敷いて寝るより、寝起きしやすいよね。


 作っているうちに、【アイテムボックス】あるんだからコンパクトに畳める寝袋にこだわるより、かさばったとしてもグランピング並みの設備や備品をつくっても良かったことに気付いた。

 帰ったらいろいろ作ったり作り直したりしてみよう。


 昨日の反省を踏まえて安全部屋にいるうちは温かいものを摂る。

 今朝は根野菜とソーセージのスープにトマト入りのスクランブルエッグ、それから焼き立てのカリっとむっちりのベーグルを朝食としてしっかり食べる。

 ベーグルだけは随分前に試しに作ってみて、こっちでも作れることがわかって満足してそのまま【アイテムボックス】に入れてたやつ…。

 でもリヒトとロティルには好評だったので家でも出してみよーっと。


 美亀乃さんと瞬獺は昨日からずっと召喚しっぱなし。

 夜の見張りを交代でしているリヒトとロティルの負担が少しでも減ればいいなと。

 少なくとも美亀乃さんと瞬獺はおしゃべりな方なので話題には事欠かないはずだし、寝ててもスキル外の危機察知能力が人間よりすぐれているのですぐに異変に気づける。


『んんー。こちらの食事もたまにはいいわねえ』


『んまっ、うまっ、え、ボクずっとこっちのごはんがいーなー』


『ずっとはねえ…わたしのこの美しい体を維持するのにキラキラがたりないわ』


 キラキラとは天然の宝石類やクリスタル、金とか銀とか特殊金属とか。

 美亀乃さんは普段、どこぞの洞窟住みだからそういうの食べてるみたい。

 瞬獺は木の実やイモムシ食べてるとかいってたなー。


 私もロティルもリヒトも口数が多い方じゃないから、美亀乃さんと瞬獺の存在が場を賑やかにしてくれる。ありがとう! あ、でもだからって静かなのも嫌いじゃないのよ?


「魔石たべる?」


『まあ! 魔石はわたしの大好物よ! アレキサンドライトの次に大好き!』


 アレキサンドライトがどの順位くらいに好きなのかわからないけど、美亀乃さんのテンションが上がったのはわかる。

 渡した魔石を金平糖感覚でボリボリ美味しそうに食べている。


『ボクもこれ好きー』


 瞬獺も一緒にボリボリ始めた。

 結界のペンダントに使う魔石を加工する時に出た屑魔石だからいいんだけどね。

 粉になっちゃった分は土に混ぜればいい薬草を育てられる畑を作ることが出来るので魔石って無駄が無いね。





 朝食を食べたら片付けをして、武具を装備してさあ探索。

 連携を取って魔物を倒しながら昨日探索を終えたところまで進む。


 この広大な洞窟型のフィールドダンジョンは、壁沿いにいくつもの脇道があり、その脇道にいくつかの小部屋があった。

 その小部屋には基本、魔物がたむろしている。ただたむろしているところが多いけど、たまに宝箱を守るように集団でいるときもある。

 部屋の中を確認すると強制的に魔物とエンカウント状態になってしまう。そしてエンカウントしてしまうということは戦闘になってしまうわけで。


 ダンジョンに入った初日である一昨日は宝箱を見つけられなかったけど、昨日はいくつか宝箱を発見出来た。

 リヒトによると、罠仕掛けの宝箱もあるので、宝箱を開けるときはそれなりに時間がかかってしまうものらしい。


 だから私達は宝箱ごと【アイテムボックス】に入れて持ち帰ることにした。帰ってから開ければいいねって。

 せっかく発見したものを置いておくのも嫌だったので、我がまま言わせてもらった。


 宝箱周辺も時々罠があったけど、魔法をいくつかブチ込んだら強制解除できた。よかったよかった。




 今日もまた昨日の続きでコツコツ脇道に入って小部屋に入る。

 安全部屋は初日に見つけた部屋以外まだ見つけられていない。階層主部屋然り、ダンジョンの出入口、または次の階層に移動する上下階段然り。


『リヒトくんもロッテちゃんも昨日の今日で随分レベルが上がったんじゃないかしら? 心強いわねえ』


「レベル…」


『そおよ。ファルちゃんはまだステータスが解放されてないから実感が無いかもしれないけど、ステータスが解放されているリヒトくんとロッテちゃんはレベルアップの恩恵を実感できていると思うわよ?』


 へー。

 ステータス、すごい!

 そうなんだ! へー!


 ステータス解放には7歳になる必要がある。あと2年かー。

 待ち遠しいなー。楽しみ!

 って視線を二人に向けると、二人は困ったような笑顔になってた。



 そんな会話をしつつ、途中瞬獺がお腹すいたと言うので午前のおやつにみたらし団子をもっちもっちと食べる。


「これはなんだかクセになる味ですね」


 ふわりとロティルが微笑んだ。

 私の作ったみたらし団子が美少女の心を射止めたようだ。


 そしてそんなロティルの笑顔はリヒト美少年の心に揺さぶりをかけているようで、ロティルの笑顔を見たリヒトの顔が真っ赤になっている。


 ははーん。

 ふふーん。

 ほっほう。


『だめよ。ファルちゃん。そっとしておいてあげなさいね?』


 ニヤついていた私にそっと忠告してくれる、気づかい上手の美亀乃さん。


「……うん」


 言い含めるようにじーっと美亀乃さんに見つめられたので渋々頷いておいた。

 ロティルへの返事込みで。


『んまっ、んま! これもうんまっ!』


 両手と口まわりをみたらしあんでベトベトにしながら美味しそうに団子を食べる瞬獺は幸せそうだなー。





 おやつタイムを終えてまた探索。

 そろそろお昼かなーって考えていた時だった。


『ファルちゃん、あの道の奥の部屋あたりにいるかも!』


「?」


『あら、ほんとね。いるわね。階層主』


「「「!!」」」


「本当ですか!?」


 意気込むリヒト。

 言葉は出なかったけど、私も鼻息荒く意気込んでるよ!


『うん!』


『そうねえ。気配的にはミノタウロスあたりかしらね?』


 リヒトの確認に瞬獺と美亀乃さんが肯定する。

 さらに美亀乃さんはより多くの得た情報を教えてくれる。


「み、ミノタウロス…」


 リヒトとロティルの顔が強張る。

 絶望的な顔をしている。


「どしたの?」


 強いのかな?


「Aランクに属する魔物です。雄牛頭に雄牛の足。手と体はオーガのようであり、それよりも大きいです。大斧を体の一部のように自由に振り回し、知能もそれなりにあります。基本的には単体行動ですが、階層主の部屋にいるとなると…」


『2体いるわねえ』


 すとんとリヒトが膝から崩れ落ちた。

 ロティルも顔を色を真っ白にしている。


『どしたの?』


「わかんない」


 よくわかってないのがここに2名います。

 誰かこの中に説明上手な方はいらっしゃいますかー?


『普通だったら絶望的よね。でも私は防御力だけならミノタウロス程度には負けないわよ。シュンタちゃんだってスピードなら絶対負けないはずだもの』


 うん。なら余裕だね。

 最高の(タンク)職が2名いるんだから。

 火力は私とリヒトでまかなえる。

 そしてロティルがいつも通り両方のバランスをみてどちらかの戦闘に手を貸したりアイテム管理してくれればいいんだから。


 ちなみに美亀乃さんの言う『シュンタちゃん』とは瞬獺(しゅんたつ)のことだよ。


 それにしてもミノタウロスかー。

 魔物図鑑で見たな。

 頭が牛で大きな角が横から斜め前に突きだしている。

 体は筋骨隆々だけど、シュッとしている。

 人間っぽい手だけど、指は4本だったなー。

 そしてヘソから下にかけて牛っぽくなっていって、足は牛の蹄になっている魔物だ。たしか小さいものでも3メートルはあるって書いてあったな。


 つまり、二足歩行のほぼ牛。

 生息区域は火山系の岩山で、その身は大変美味と書いてあった。


 しかしここはダンジョン。

 倒しても魔石ぐらいしか落ちない。

 他のドロップ品が出たとしても大斧だろうな。

 今までの魔物がそうだった。うるさい大きな猿の魔物をたくさん倒したけど、魔石以外はたまーにメリケンサック落としていた程度。


 ドロップ品目的のダンジョンアタックならガッカリしていたところだけど、今は外に出るのが目的。

 ここは喜び一択です!


 でもやっぱりお肉欲しかったなー!


「そか。なら大丈夫だね」


 という私の発言に、召喚組はにっこりし、側近組は泣きそうな顔をした。


『ええ。それにミノタウロスは十パーセントの確率で高品質の肉を落とすらしいわ。ファルちゃん好きだったわよね、お肉』


 私、ミノタウロス20匹は倒そうと思うんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ