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011 それは革命

 


「ねえ、ファル。この間のプリン? というものをもう一度作ってくれる?」


 朝食後のお茶での会話で、エリオットにお願いされる。


 先日調合室で作ったプリンは双子にも両親にも家で働く人達にも衝撃と感動を与えたっぽい。


 え、マジで? そんなに?


 って思えるくらいみんな美味しいと言ってくれた。

 さすが異世界プリン様だ。


「うん」


「あー、できればその…たくさん」


「わかった」


「どのくらいで出来る?」


「大人用の木剣3本分、作り置きがある」


「ははは、そのたとえはどうかと思うけど、良かった! ありがとう! 早速で悪いけど、その木剣1本分くらいもらって行っても良いかな?」


「うん」


 返事をし、【アイテムボックス】から、パウンド型の耐熱性容器に入ったイタリアンタイプのプリンを、木剣1本分となる4本出す。


 エリオットはそれを自分の【アイテムボックス】に入れた。


 魔具作りを覚えて以降、両親にはいくつか魔具を渡している。

 そのひとつに【アイテムボックス】の魔具がある。

 付与魔法の【アイテムボックス】よりも魔力コスパがいいのでミスリル製の指輪型の魔具として渡してある。


 その指輪型魔具ひとつでいくつかの魔法陣を組みこんで落とし込めている。

 それをプレゼントした時、両親はとても喜んでくれた。

【アイテムボックス】【浄化魔法】【中級ヒール】だ。


 と言うのは表向きで、こっそり【通信】機能と【状態異常確認】が出来る術式も組み込んでいる。


【通信】は何かあった時便利かなと。


【状態異常確認】は瀕死の状態に陥った時、私が持っている受信装置に連絡が来るモノだ。よっぽどの事態ってやつだね。騎士である以上、怪我とか多いだろうし、訓練だってある。頻繁に連絡来てもアレだしさ。


 で、この二つの機能だけは人体から常に微量に滲み出る魔力で作動できる優れモノだ。


【中級ヒール】は回復魔法だね。

 体力の回復や、怪我を治すことが出来る便利な魔法。

 魔法が使える人の中でもヒールを使える人は少ないらしく、指輪のセット内容に含まれている事を知ると、物凄く驚きつつもとても喜んでくれた。

 下級ヒール程度の怪我だったらポーションですぐに治るし、中級ってのがいいみたい。




 あと私、知ってるよ。

 両親が結構な頻度で【浄化魔法】を多用し、重宝がっているのを。

 いいんだけどさ。

 汗かくもんね。騎士だし?

 運動量多いもんね?昼も夜も。うん。


「ファル、いつもありがとうね」


「うん。リオもいつもありがとう」


「ふふふ」


 私も日ごろの感謝の気持ちを述べると、エリオットは嬉しそうな顔をしながら優しく私の頭を撫でてくれた。


 そのあと、エリオットは双子の事も撫でようとしたらビクっとされてちょっと落ち込んでいたけど、なんとか二人の頭を撫でることに成功し、嬉しそうに出勤していった。



 ・・・・・・・・・・



 今日も今日とて私は調合室にこもる。

 よし、今日はゼリーを作るか。


 ここに来て双子はフォークの使い方やスプーンの使い方に四苦八苦しながら、使い方を間違えて怒られるんじゃないかと思っていそうな感じにビクビクしながら食事していたけど、プリンを食べたときは目をキラキラさせて嬉しそうに食べていた。


 だから姉さん、がんばっちゃうよ?

 スプーンで食べられるデザートシリーズ作っちゃうよ?


 既に調合室は調理室と化している状況。

 コンロもオーブンも作ったし、冷蔵・冷凍庫も作ってあるので色々作れる。


 ロティルとは別の、雑用をしてくれるメイドさんに買い物を頼んで、材料を集めてもらう。


 その間に手持ちの材料で作れそうなものを作り置きしておく。


 アイスクリームにチーズケーキに、それから材料3つで簡単に出来る蒸しプリン。

 カカオがあったらチョコ系も行けそうだけど、私の探し方が悪いのかどうも見つからない。コーヒーも同様に。


 なのでここで用意できて且つ私が作った事があるレシピで何とか作るしかない。


 あ、手で食べられるものも作ろうかな。

 クッキー系がいいね。プリン作る時卵白余るから、少ない材料で作れるメレンゲクッキーやラングドシャとかいいかもね。


 午前中いっぱい使って思いついたものをどんどん作って、自然に冷ましたり冷蔵庫や冷凍庫で冷やし固める。

 出来あがったら【アイテムボックス】にどんどん入れていけば安心長持ち。

 てか、前世知識を活用した私の【アイテムボックス】の仕様は無制限にものを入れられるし、時間停止機能も標準装備。

 半年前に作ったコロッケだって今出せば熱々サクサクなままさ。



 午後からはゼリーの材料も揃ったので、錬金術の「抽出」や「精製」を駆使してゼラチンを作り、フルーツを砂糖で煮たりしてなんとかフルーツゼリーを作ることが出来た。


 午前中のお菓子作りについては味見目当てのメイドたちが手伝いに来てくれたけど、午後からのゼリー作りについては普通の何かの作業だと思ったらしく、私の専属メイドであるロティル意外、誰も手伝ってくれなかったのでちょっと大変だった。


 そうだよね。

 ブタの皮からスイーツが出来るだなんて誰がわかるかってやつだよね。


 私も前世で何気なくゼラチンの成分表示見てビビったことあるもん。

 でもあの時の心の衝撃のおかげで、今世でフルーツゼリーを作ることが出来たんだから良かったよ。

 貧乏経験あって良かった…。

 ありがとう、前世のコスパ最強業務用ゼラチン!


 と言うわけで、午後からはロティルと二人で大量の、何種類かのフルーツゼリーを作り上げましたよ。


 大変な思いをした甲斐あって、ゼリーも双子は喜んで食べてくれた。もちろん両親もさっぱりしておいしいと言ってくれたので良かった。



 ・・・・・・・・・・



「ところでファル。今日のデザートもとても美味しかったんだけど、アレもまたいくつかあるならもらっても良いかな?」


「”アレも”? …エリオット、他にもファルに何か催促したのか?」


「あー、うん。ゴメン。最近王女殿下が元気ないご様子だったからね。つい。でもファルのおかげで今日は随分喜んでおられたよ。また珍しい甘味があれば是非に、ってお言葉をもらってね」


「そうだったのか。元気になられたのだったらよかったな。でかしたぞ、ファル!」


 エリオットの報告で、何故かアレンジークが嬉しそうにして私の頭をぐりぐりと撫でる。

 もげそうでもげない絶妙な力加減だ。


「メイド長の話では他にも何かたくさん作ってたんだって?」


「そうなのか?ファル、何を作ったんだ?」


「ひみつ。また明日の夕食のお楽しみ」


「ははは、そうか。お楽しみか!」


 ご機嫌なアレンジーク。

 今日の夜はきっとYESの日なんだろうな…。



 ・・・・・・・・・・



 エリオットがゼリーを持って行ったその日の夜。


「手紙?」


「そう。王女殿下からファルにって」


 お姫様からお手紙もらいましたよ!?

 スッゲー!

 家宝モノじゃんね?

 あとで額に入れて飾っとこ!



 エリオットから手渡された手紙は、思った以上に分厚いものだった。


 枚数で言えば10枚程。

 内容をまとめると1枚くらいじゃないかな。


 要約すると、「プリンとゼリー、すっごくおいしかったよ! 世界が変わった! スイーツ革命だ!」とのことだった。


 ああいう舌触りが滑らかで、見た目に清涼感のあるスイーツは今まで無かったらしい。


 確かにこの家に来てから出されたスイーツはサクサクしたのとかザクザクしたのとかモソモソしたのとかパリパリしたのが多かった気がする。

 うちだけだと思ったら、王家でも同じような感じだったんだね。


 あとお姫様には弟がいるらしく…って、王子様か。

 その王子様もとても喜んでいたし、お父さんやお母さんたちも絶賛してたんだって。


 って、王様と王妃様じゃん!?


 それから是非遊びにきてだって!?


 無理無理!

 こちとら黒髪黒眼で不吉なんだからね!

 王城になんて行けるわけないんだからね!

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