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攻城戦 3

なんと日間ランキング10位と言う知らないところで凄いことになってました。

本当にこの作品を読んでくださってる皆さんに感謝です。

これからも頑張るのでよろしくお願いします!


「あれ、思ってたより窮屈だね」


アルは転移門に入って一番そんな事を言い出した。


まぁ、分からないでもないが…


全体的にこの異界は楓の作った異界よりも窮屈だった。楓の作った異界は広さもさることながら細部まで頑丈に、かつ工夫されていた。


その点今入ってきた異界は更地が辺り一面に広がっているだけだ。多分そこまで大きくも無いはずだ。


「だな、更地っていう事は小細工なしの力任せに戦えって事だ。やばいな、実力が圧倒的過ぎてすぐ終わってしまう」


「まだ楓くんの作った異界みたいに森林とかがあるなら時間稼ぎは出来ただろうにね」


楓達は『どうやって勝つか」ではなく『どうやって手加減をするか』と言う議論を始める。


「よし、日向。コアを使って城を建てるのは任せた」

「え!?それって楓くんの仕事だよね?」


「あれを見てみろ」


楓はそう言ってちょうど一キロ先の勇者達の城に指を指す。


「あれでは旦那様のお城が圧倒的過ぎて攻城戦が始まってもないのに終わりますよ」


「あーそうだね…」


一度、練習を兼ねて楓はコアを使って城を建ててみたが、あまりにも立派過ぎた。


勇者達の作った城は王都デスハイムの城より少し大きく頑丈かな?と思わせる様な物だった。


このまま、楓が作戦通り城を建てたらミルの言った通り始まってもないのに勝負が決まりそうなので今回は急遽日向に作ってもらう事にする。


「それで、どんな感じのを建てればいいの?」


「あれと同じ位のでいいよ。そもそも、あまり城自体重要じゃないし」


「はーい」


日向はコアを両手に抱えだんだん魔力を込めていく。


すると、だんだん地面から壁やら地面やらが生成されていき1分もすれば立派なお城が出来てしまった。


「多分規模的には同じ位だけど速度が桁違いだったね」


アルは笑いながら日向に言う。


「あちゃー、規模に目を向け過ぎてた…」


「まぁ、やってしまったものはしょうがない。向こうもあんまりこっちに注目してないだろ」


今、楓達がいるのは謁見の間のようなところだ。勇者達はどこにコアを隠したのか知らないがこちらは正々堂々玉座の上に浮かしてある。


「さて、そろそろ始まるはずだけど…あミルのお父さんだ」


アルがそう言うと同時に楓達の目の前に空中スクリーンの様な物が展開される。


一応魔法なのだがあまり需要がないため覚える人は少ないのだが…宮廷魔術師の中に物好きがいたのかな。


「これより、攻城戦を始める。両者共に正々堂々戦ってくれる事を信じておるぞ。ちなみにここには宮廷魔術師長を含む宮廷魔術師が三十人、騎士団からは騎士団長、副団長、それに騎士が二十五人が君達の事を見ている。不正などしても無駄な事を先に言っておこう」


純粋に俺達の戦い方を分析させたいだけだろ。


たかが見張りにこんな国の主要人物を集める必要がない。


「お父様ったら…私達の戦力を把握したいだけですね」


娘に迄バレてますよ。


「まぁ、今回はほとんど実力を出さないから大丈夫だと思うよ」


「だな、まず今回俺とアルは戦わないし」


「えぇ!!!なんで?」


楓のびっくり発言に日向は食いついていく。


「いや、そっちの方が勇者達の反応が面白そうだし。それに、俺達二人が出ない事によって国も俺達クランの戦力を計りにくいだろ」


確かに楓も勇者達に怒りを感じてるし直接手を下したいがこの異界の結界を見るに俺とアルが攻撃したら結界を壊して直接殺してしまいそうなので今回はパスだ。


勇者達が日向達にボコボコにされるのを見て溜飲を下げるとしよう。


「まぁ、作戦は用意してあるから安心してくれ」


「むう…」


「まぁまぁヒナタ、旦那様が決めたのですからそれに従いましょう。それより私達がメイドを先導して勇者達を倒してやりましょう!」


日向はまだ納得のいかない表情をしているがミルはやる気満々だった。


「分かったよ、それで作戦は?」


「あぁ、一番最初は…」




〜勇者side〜


「やっとだなー、それにしてもこの異界ってやつ凄いな」


既に勇者達は城を作り終えているので日向があの速さで城を建てた事には気付いていない。


「そんな事よりあいつらもこの攻城戦の条件の網を抜けてくるとは…」


「あいつ、佐倉やミルテイラさんだけでなくあんな可愛いメイド迄…許せない!」


「ほんと、あいつこの異世界に何しに来たんだよ」


特大ブーメランであるが誰一人として突っ込む事はなかった。むしろみんな「そうだそうだ!」と喚き散らしている。


一応言っておこう、こいつら高校2年生です。


「まぁいい、俺達が勝てばあいつの物を全て奪える」


「そうだ、今回の戦いに負けるわけにはいかない。指揮をとるのは俺でいいか?」


須藤 佐助はみんなの前でそう言った。誰も反対する言葉を発さない。


これだけならなかなかいい感じなのだが攻城戦が始まる前に指揮官を決めてる様では遅いと思う。


勇者の動向を並列思考で確認していた楓は思わずそう、突っ込むのであった。


「それじゃあまず、こちらもルールの穴をつこうか。召喚魔法が使える者はこっちに来てくれ」


佐助は早速クラスメイトの指揮に入っていくのだが楓はそれを見て自分とアルは戦場に出ない様にしようと心に決めたのであった。

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