事後報告 2
「はぁ、終わったー!」
あの後6時間ぶっ通しで楓は空間世界を創っていた。他の神でも10年は掛かる所を楓は全部で8時間程度で終わらしてしまうのだからやはり神をも超えるというのは伊達では無い様だ。
「さて、今日は日向の部屋に行くんだよな」
楓はだいぶ汚れていたのでお風呂に入ってサッパリする。この時間になってもメイド達は起きて何やらしていた。仕事熱心なのはいいが体壊さないのかな?
『彼女達は普通の人間では無いので睡眠の必要はほとんどありません』
って事はほとんど寝てないんだよな。うーん、日本にいた時もブラック企業が〜とか騒がれていたのだ。あまり無理して働かせたくなかった。
「エリスー何してんの?」
「あ、ご主人様。とりあえず朝食の仕込みですね。他の者達は深夜の警備に当たらせています。ご主人様こそ、こんな夜遅くにどうなさったんですか?」
「明日になってからのお楽しみだ。それとここにメイド全員集めてきてくれないか?」
楓の提案にエリスは一瞬頭を傾げたが自分のご主人様の言う事は絶対なので一瞬で5人全員を呼んできた。
「ご主人様。全員呼んできましたがどうなさいましたか?」
エリス達はメイドと言うより忍者の様な忠誠の構えをしている。
「あ、そういうのは無しで。それと来てもらった理由としては皆んなの勤務時間を決めてなかったからね」
気付くのが遅かったのはごめんなさい…
「私達なら1週間位徹夜でも大丈夫ですが?」
それはそれでどこの超人メイドだよと言いたくなるが女性にそんな無茶をさせる程腐った主人ではいたくない。
「ダメだ。君達は週に一度必ず休む日を入れる様に。それと夜も毎日しっかりと6時間は寝よう。これは主人としての命令だ。もし出来ていない事があったら俺に言ってくれ。後は俺がする」
俺こそ本当は睡眠を必要としない。もうとっくに人間離れしてしまった事は自覚している。
「い、いけません!どこにご主人様に仕事を頼んで自分は休むなんてメイドがいるんですか!」
エリスは猛反対してくる。他の五人も同様に口々に猛反対してくる。
仕事熱心なのは嬉しいけどやっぱりここは普段頑張ってくれているメイド達にもしっかりと王都の生活を楽しんでほしい。
あ、そうだな。どうせならメイド達も冒険者登録をしてクランに入れておくか。そしたらそっちの稼ぎも出てくるしもっと自由が増えるだろう。
「大丈夫だ、もし俺に仕事を渡したくないならそれまでに終わらせたらいい。もし無理なら俺が残りをやる。あ、でも無理はするなよ。いくら俺が創り出したと言ってもお前達は女の子だ。さっきも言ったがこれは命令だ。絶対に聞いてもらう」
最後までエリス達は納得していなかったが俺は問答無用で押し通した。それと暇な時に冒険者登録をしてクランメンバー申請をしておく様に頼んでおいた。俺が招待状を書けば俺が行かなくても大丈夫みたいだ。後で確認はされるだろうけど。
『さすがマスターです』
まぁ、夜の警護はマリーがいるから何とかなるしな。あいつ、最近ずっと日向とミルと女子トークしてるしあいつは人間ではなく妖精なので睡眠が必要ない。俺も何かあったら起きるしそもそもこの屋敷はそんなに簡単に侵入される程優しく改造はしていない。
『たまには私も休みが欲しいですね』
ナビちゃんって休みいるの?俺の心の声のツッコミ役はナビちゃん以外は務まらないゾ
『はぁ、もともと休みなど必要ありませんよ。マスターの相手をするのも私の専売特許なので』
そう言ってくれると嬉しいよ。
さて、それじゃ日向の部屋に行くか。めっちゃ緊張するが多分寝てるだろうから俺もさっさと寝させてもらう。
「ん…楓くん、大好きだよ」
楓が日向と同じベッドに潜り込み寝ようとすると胸の中に顔を埋めてスリスリしながら惚気ている。旦那様から楓くんに戻ってるし多分夢の中なんだろう。俺は抱き枕かな?
「日向、ミルにも言ったが二人とも最高の妻だよ。ほんと、俺みたいなのを好きになってくれてありがとう」
聞こえてないだろうがそう言って日向を抱きしめて楓も眠りにつくのであった。
「もう、恥ずかしいなぁ。私も楓くんの事。大好きだよ?最高の旦那様だよ」
楓が寝てからしばらくしてから日向はこっそりとそう呟くのであった。
翌朝、二人は抱き合った形で目覚めて二人してずっとドキドキしていた。昨日はミルもいて3人だった為日向はそこまで恥ずかしくなかったのだが今は違う。一対一だ。生まれて初めて異性とそれも好きな男の子と同じベッドで寝たと言う事実に混乱していたが今はこの貴重な時間を無駄にしまいと夜と同じ様にぎゅっと楓を抱きしめて顔を楓の胸の中に埋めてスリスリするのであった。
している方は幸せなのだがされている方はめちゃくちゃ恥ずかしい。日向の女の子の香りがほんのりして楓は楓で癒されているのだが…
『ほんと、最後まで行くのも時間の問題ですね』
どうだろうな。でも、二人が望むのであれば俺も覚悟を決めるよ。いつまでも過去に囚われてたら情けないもんな。
『頑張って下さい』
楓の一部であるナビちゃんはその辛い過去も把握している為今回ばかりは優しい声色で心からのエールを送ったのであった。
「旦那様、今日はランクアップ試験の合否発表だけど私達合格してるかな?」
「どうだろうな、それと日向。無理して旦那様呼びしなくていいぞ」
昨日も寝ている時は素が出てたしな。
まぁ、日向は寝ていなかったのだが楓はそれを知らない。
「そうだね。わかったよ楓くん!」
「うん、そっちの方がしっくりくるよ」
と言う事でやっと呼び方も落ち着いた所でそろそろ楓は着替えに自室へと戻る。日向の部屋はしっかりと女の子の部屋だったのであまり落ち着かなかった。まぁ、恥ずかしかっただけだけどな。
『マスターの部屋なんてほとんど無駄な物がないじゃないですか』
前にも言ったがあまりごちゃごちゃしたくないんだよ。
そう言った楓の部屋はベッドに大きな机と椅子、あと本棚が3つあるだけで本当にほとんど何もない部屋であった。
楓の部屋は他の部屋よりも大きい為まだまだスペースに余裕はある。
今後、この部屋には沢山のものが置かれていき気が付けばいい感じの部屋になっている事をまだ楓もナビちゃんも知る由はなかった。




