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ミルの決断 1

日向とミルが楓のベッドへと押しかけたその日。

あれから1時間位すると二人共起きてもう一度楓の頰にキスをしてから自分の部屋に戻り朝の準備をしに行った。


「はぁ」


『どうしたんですか?ため息なんかして』


あの状況でどうやったら疲れないなんて事が起こるのかな?俺の自制心もよく持ちこたえてくれたよ。


後一歩で理性が飛びかけた。はぁ、危なかった…



「お父様が私を呼んでいる?」


みんなで朝食を食べているとエリスが一通の手紙を持って来て開けて中を見てみるとミルに王城に来るよう伝える手紙であった。


「私だけって言うのも不思議ですが…旦那様今日の予定は大丈夫ですか?」


「そうだな、それなら今日は休みにしよう。昨日ランクアップ試験を受けたばっかりだから別にいいだろう。確か試験の合否発表は明日だから問題ないよ」


「では、一度王城に戻ってきます」


と言う事で今日はミルが王城に呼ばれていつ帰ってくるか分からないのでみんなそれぞれしたい事をする事にした。



一体お父様は私に何の用事でしょうか。せっかくなら旦那様も呼んで二人でそのままデートも良かったですね。

さて、準備も出来ましたしそろそろ行きましょうか。最近の移動手段としては魔法を使って早く移動出来る移動手段に重宝しています。


旦那様は意外そうに見ていましたけど全属性魔法のスキルを頂けたのでそこまで難しくありません。流石にヒナタの魔法創造には遥かに劣りますが…。


最近では、私が街を歩いていても軽く会釈をされたりするだけであまり大ごとにならなくなってきました。お陰で気軽に外に出られるようになれてよかったです。まぁ、今日は屋根の上を走って行きますが。道であの速度で走ると私はいいですが周りに被害が出てしまうので屋根の上などの何もないところで使わないといけないのがネックですね。お父様が知ったら卒倒しそうな事ですけど。


魔法のおかげで本来20分位掛かる所を2分で着くのですから便利なものですね。何故皆さんこんな便利な移動手段を使わないのでしょうか?


などとミルは考えているがまずこんな使い方をする発想が他の魔法使いには思いつかないのと魔力消費量が半端ないので、修練したくとも簡単に出来ないのである。

キッカリ2分で城門の前へと着く。流石に止められるかと思ったが話が通っているのか顔パスで通れた。まぁ流石にこの国の王女を拒む事はしないか。


「ミルテイラ様、バルバトス様はこちらでお待ちです」


普段ならいくらお父様と言えど2時間くらい待たないといけないのに今日はほぼノータイムだった。


そんなに大事な要件なのかな?


「お久しぶりです、お父様」


「うむ、久しぶりだな。とりあえず座ってくれ。用件はその後だ」


お父様の部屋に行くと私服で待っていた。


プライベートのお話?なんだろう…


ここに突っ立ってても話は進まないので素直にお父様の前に座る。


「今回来てもらったのは…な」


何やら口ごもる。それがミルにはどこか嫌な予感がしていた。


「お前に命令する。カエデとの婚約を破棄する」


ミルは固まる。一体この父親は何を言っているのだろうか?


旦那様と別れる?


「ど、どう言う事ですか?」


今、ミルの頭の中はパニックに陥っている。まともに返事が出来ただけでも良好だろう。


「実はリングベリーの教会の方から縁談が来てな。それも婚約発表をしてから1週間後に」


正確には1週間と少しだがそこはあまり重要ではない。


「な、そんなの無視すれば良いではないですか!」


「それが無視も出来ない相手なのだよ。ここ数ヶ月前に勇者が召喚されたのは知っているだろ?」


「ま、まさか…」


「あぁ、そのまさかだよ。お前が婚約したのを知ったのか速達便をよこして来て今すぐ縁談を破棄しろ。代わりに勇者の代表を婚約相手とさせる。さもなくば勇者をそちらに出向かせ婚約相手もろとも殺させてもらう。と言う旨の手紙が届いた」


「そんな!横暴ではないですか!」


ミルはいつになく必至に自分の父親に歯向かう。昨日、日向と誓ったのだ。絶対に楓を裏切らないと。楓が嫌がる迄くっついてやると。それがこんな政略結婚とも言えない横暴なやり方で引き離されるなどたまったものではない。


「あぁ、横暴だ。だが勇者の力は本物だ。噂によれば最低でもA級、S級冒険者並みのやつもいるらしい。そんなのが約40人もいるんだぞ?この国でも対処は出来るだろうが被害が予想出来ない。それにカエデ迄、危険に追いやってしまうぞ?」


それを言われてはミルも言い返せない。国民の命に危険が及ぶのは避けたいし何より楓に迷惑をかけたくない。

でも…


「わ、私は嫌です。つい昨日ヒナタと誓ったのです。旦那様を愛し続けると。旦那様が嫌がる迄とことんくっついて旦那様の不安を取り除いてあげると。それを私が破りたくない」


ミルは目に涙を浮かべながら自分の本心を曝け出す。国民の命も大切だ。多分本来ならそっちを優先するべきなのだろう。でもせっかく初めて自分の全てを捧げられる人に会えたのだ。こんな形で無理やり離れたくない。


「では、こう言おう。これは国王として命令する。逆らえば反逆罪だぞ?」


バルバトスは伝家の宝刀を抜いて来た。これを言われてはいくらミルでもミルも断れば犯罪者扱いだ。

だが…


「良いでしょう。そんな自分勝手な勇者に自分の体を差し出さないといけないのなら今ここで死にましょう。最後に旦那様に会えなかったのが残念ですが仕方ありません。勇者に取られるよりここで死んだ方が旦那様のショックも幾分かマシでしょう」


ミルは譲らない。人には譲れない物の一つや二つあるものだ。今のミルにとって譲れない物とは楓の妻と言う事だ。そうでなく他の男に自分を奪われるのならさっきも言ったが本当に死んでやる。


そんな覚悟を持って自分の父親を睨む。


「ふ、ふはは!ミルも変わったな。やはりカエデに娘を託して良かった様だ」


バルバトスは大きく笑い自分の娘の成長を素直に喜ぶ。


「安心しろ、嘘だ」


「は、はぁ〜!?」


「だが、全てが嘘というわけではない。勇者が縁談を持って来たのは本当だし、今現在こちらに向かって侵攻中らしい」


「そうみたいだな」


「あぁ、だから…は!?」


バルバトスは大きく仰け反る。何故なら何時いつの間にか先程話していたミルの旦那である楓が机の上に立つ様にしていたからだ。


「だ、旦那様!」


「ミル、ありがとな。今朝のあれはそういう事か。大丈夫だ。お前から離れていかない限り俺は絶対にお前を離さない。もし今回の話が本当なら国を敵に回してもお前を渡さないよ」


「!!!」


ミルは自分の啖呵を聞かれていた恥ずかしさと今、目の前に楓がいる安心から涙が自然と込み上がってくる。


「ほ、本当ですか?」


「当たり前だ。この前もいったろ?お前達は俺の自慢の妻だ。絶対に手放してやるもんか」


そう言いながらながら楓はミルを強く抱きしめる。前の楓ならこんな事は出来なかっだろうが今は違う。目の前の妻は楓の為に頑張ってくれたのだ。この位安いものだ。


「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!!」


ミルは楓の胸の中で大きくうずくまるとそのまま込み上げてくるものを全て外に出すのであった。


それを楓は優しく包み込むように抱え込んでいる。

バルバトスは先程とは違う、優しい親の顔をしていたのであった。

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