クラスメイト達、王都に向けて侵攻!
〜リングベリー教会〜
「な、何!?ミルテイラ王女が婚約した!?」
ガウルは二週間遅れの情報を得ていた。まぁ、それは仕方のない事だ。
日本にいた時はネットワークと言う素晴らしい物があり、100キロ先でも1000キロ先でもすぐに伝えたい事、知りたい事が知る事が出来たがこの世界では違う。他の国の情報を得ようとするならば他国にスパイを忍ばせ商人等から情報を買う事をしなければいけない。しかもそれがいつも新鮮な情報というわけではない。手紙にしても商人にしても移動時間があり普通に一週間、二週間の誤差が出てくるのだ。
「ぐぬぬ…ミル王女は勇者に嫁がせるつもりだったのだが。仕方ない。相手は…なに!?」
ミル王女が婚約しただけでも頭が痛いのに更にその相手が問題だった。
「な、何故あいつが生きている!」
その相手とはかつて刺客を送って始末したはずの相手、そう楓であった。そして楓が生きていると言う事は日向が生きていてもおかしくはない。
この時日向も婚約している事はガウルの情報にはなかった。
「どうやってカエデはミルテイラ王女を娶った?これは流石に見過ごせないな。『あの方』の手を煩わせる訳にはいかない」
ガウルは一人でこれからの事を考えているのであった。そして出た結果は…
「勇者の皆さん、少し聴いていただきたい事があります」
迷宮攻略をミスって帰って来た勇者達を使おう。最近は訓練もあまりせずにダラダラと過ごしていただけの存在だ。勇者の数で押せばあいつも流石に死ぬだろう。
「なんだって!楓がこの国の王女と婚約した!?」
「ぼ、僕が娶るんだぞ!」
「いや!俺が!」
ガウルが勇者達を集めて事の顛末を話すと勇者達が騒ぎ出した。まぁ男子達だけであったが…
女子はと言うと…
「そのミルって奴を殺さないと…」
「楠木くんは私が…」
「ついでに佐倉さんも…」
などとドス黒いオーラを醸し出していた。
ガウルはあまりにも予想通りの反応に思わずニヤッとしてしまう。
「今回は王都に行ってこの教会の裏切り者であるカエデ様とヒナタ様を討ち取って欲しいのです。成功報酬はミルテイラ王女との婚約を約束しましょう。女性勇者様が方にはカエデ様以上の男を約束しましょう」
ガウルは報酬という甘い蜜を醸し出して本来の命令を言い渡す。
「おー!カエデも殺せて王女と結婚出来るなんて最高じゃねーか!」
「早い者勝ちだ!王女と結婚するのは俺だ!」
「楓くんよりいい男…ふふ!」
「よし!王都に行って楓と佐倉を殺りにいくぞ!楓は雑魚だろうし面倒臭いのは佐倉だ!みんな!気合い入れていくぞ!」
男子の一人がそう締める。もう皆楓達を殺すのに何も躊躇いを持っていない。つい半年前まで日本に帰りたいと願うクラスメイトだったがここで勇者とチヤホヤされる事に慣れ過ぎてしまった。人を殺すのにも目的の為ならなんの躊躇いも持たなくなってしまった。
今ここに楓がいたのなら「魔王討伐はどうなってるんだ?」と冷たい目で見ていた事だろう。
まぁ、ガウルも他国とこの領地の領主への牽制の為に召喚したようなものでもはや魔王などどうでも良かったのだが…。
「それじゃあ!楓達の元へいくぞ!」
「「「おー!」」」
最後に学級委員長が皆んなのやる気を上げる為に指揮をとると皆ノリノリで付いて来た。
ちなみに今の勇者達は全員がAランク相当の力を持っている。何だかんだ言っても勇者の端くれなのは間違いない。真剣に訓練をこなして入ればSランクも夢ではなかっただろうに…
「さて、次の勇者召喚の準備をしなければ…」
ガウルは勇者達が王都に行ったのを確認すると部下を連れて次の勇者を召喚する為に準備を始めるのであった。
今でも他の教会では勇者を召喚するべく儀式を続けている所が多いだろう。ならばリングベリーも一度の召喚だけでなく何度も勇者を生産して教会の武力を上げるべきであろう。今度はもっと勇者っぽい圧倒的な人材が出てきてくれる事を願って準備をしているのであった。
〜クランハウス〜
「何とまぁ面倒臭い事を…」
楓は元クラスメイトの動向を探っていると自分を標的にして王都に来る事を把握していた。
楓にしか出来ない芸当だがそのおかげで楓は元クラスメイト達が王都に向かって来るのをいち早く察知出来た。
「人って環境で変わるもんだよな」
自分の部屋でどこか悲しそうに呟く楓であった。
つい半年前迄うざかったがまだ人の心を持っていた元クラスメイト達も今では自分の欲望の為に力を振るう様になっていた。
「俺もこんな風にならない様に気を付けないとな。それと、ミルと日向には指一本触れさせない様に俺がしっかりと守ってあげないとな」
元クラスメイト達も地味にではあるが力を付けている様なので周りに被害が出ない様にしないとな。
もし勇者達が乗り込んで来ても大丈夫な様に敷地と屋敷を更に強化していこうと決める楓であった。




