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貴族の野望 4


「はぁ、面倒臭いのに絡まれたなー」


楓達はあの後二階のいつもの部屋に集まり談話をしている。今はマリーも一緒だ。流石にさっきマリーの存在を明かすのは得策ではなかったからな。


「あれは絶対また絡んでくるね」


「ですね、今回実力行使をしてこなかったのは賢い選択だったと思いますがまだ油断出来ませんね」


「何かあったらカエデがなんとかしてくれるよ」


まぁ、その通りなんだけどな。次に何かしてくる様なら本当に容赦はしない。


「さて、じゃあもう面倒事は一応片付いたから各々行動していこう」


楓の締めによってクランメンバーの行動が始まる。まだみんな依頼を受ける事はしない。


別にお金には困ってないしもう少し落ち着いてから冒険者稼業を始める方がいいと思った。


まだ、完全にあいつらとの決着が付いているわけでは無いからな。




「クソ!何であそこで行かなかったんだよ!」


薄暗い部屋の中で元副団長ことシルクはチェカーに叫ぶ。


「あの、状況でまだ冷静でいられると言うのはまだ戦力的に余裕があるからです。100人では足りなかったみたいです」


「なら!」


「次は500人の私兵を集めてみますよ。それでミル王女の奪取だけを考えましょう。決行は2日後いいですね?あなたには例の少年の相手をしてもらいます」


「あぁ」


シルクもチェカーも本気で楓の素手の力がイカサマだと思い込んでいる。クランマスターになれるAランク冒険者程度ならシルクも引けを取らないのでその采配にする。


「ふふふ、やっとあいつを叩きのめす事が出来る」


「あぁ、これはあなたへのプレゼントです。上手く使って下さい」


そしてチェカーはシルクにそれを渡す。


「おぉ!これがあればあいつも一撃だな。さっさと排除してミル王女を娶るのはこの俺だ!」


「えぇ、その調子です」


二人の笑い声が薄暗い部屋に響いていた。




翌日、楓たちは冒険者ギルドにいた。


『しばらくは冒険者稼業をしないのでは?』


いや、そう思ってたんだけどミルは「私も冒険者になってみたいです!」なんて目をキラキラさせて言ってくるし日向も「久し振りに外に出て魔物を狩りたい!」とか言うんだもん。


俺はしばらくはやめようって言ったよ?だがこんなに可愛い妻にお願いされたら言う事聞いてしまうでしょ!


『マスターは一度決めたことは絶対に守るんじゃ?』


可愛い妻の前では自分の信念など豆腐よりも柔らかいわ。


『…』


そんなわけで四人で冒険者ギルドに行く。ミルにも逸話級の弓と杖を渡してあるのでそのまま戦力になる。


ミルは今ではAランク級の実力なのでそんじょそこらの魔物に負ける事はないだろう。


街を歩いているとちょくちょく人が楓達に視線を向けるが貴族に対して無礼を働くと不敬罪で殺されてしまうかもしれないと思いあまり絡んでくる人はいない。


そして毎度お馴染みの適当に出店の食べ物を買い食いしつつ冒険者ギルド迄行く。


ミルもこの雑な味の虜になっていた。なんだかんだでみんな出店の料理が好きなのだった。


冒険者ギルドはどこもあまり変わらないと思っていたがそれは違った。リングベリーやシュトガルとは比べものにならないほど大きかった。2倍はあると思う。


「でかいな」


「大きいね」


「そうなんですか?」


ミルは冒険者ギルド自体が分からないので判断がつかない様だが楓達からすればこれは十分大きい。


中に入ると中も大きかった。まず受付の数が他とは比べ物にならないし個室も結構あった。酒場も大きかった。


「本当に全てにおいて大きいな」


楓達は呟く。


「まず、ミルの冒険者登録からだな」


という事でミルの冒険者登録をする。ミルは大はしゃぎだ。他の冒険者はそんな純粋なミルに鼻の下を伸ばす。


『マスター、イライラしないで下さい』


だって、日向達を見て鼻の下を伸ばしてる奴らだぞ?殺ってもいいんじゃ…


『ダメです』


分かりました。


ナビちゃんの有無を言わさぬ声に楓は素直に従う。もともとする気は無かったが…言ってみたかっただけだ。絡んでくるならその限りではないが。


っち、指輪をしてるんだから察しろよ。


そんな事を考えているうちにミルは冒険者登録を済ませていた。大切そうに冒険者カードを持って楓達の元に行く。


「今日はどんな依頼を受けるの?」


「そうだな、まずは肩慣らしにこの魔物が大量発生しているのでいいか?」


楓が手に取ったのはBランク指定の依頼だった。楓達の最高ランクはDだが楓がクランマスターなのと楓達がクランで行動している為最大Aランク迄の依頼を受ける事が出来る。まぁ、誰も自分のランクより上の依頼を受けようとはしないが…


普通、命あっての物種と言われているからだ。


もちろん、そんな事をするバカな冒険者はいないわけで…


「あの、流石に危険じゃないですか?」


案の定受付嬢に止められる。というか心配される。ただでさえ楓達のパーティーは美形揃いで冒険者への客寄せ効果は絶大だ。無駄に失っていい存在ではない。とこの一瞬で考え楓達に忠告する。


なかなか頭のいい受付嬢であった。


「大丈夫ですよ」


だが、楓も楓で有無を言わさぬトーンで受付嬢に言い放つ。


「わ、わかりました。では皆様の冒険者カードをご提出下さい」


と、まだ少し不満そうだが渋々楓達の依頼の確認して行く。


それから依頼を受ける事が出来た楓達の一行はそのまま門を出て魔物が大量発生している所までいつもの移動手段で移動する。


なんと意外にもミルも出来る様になっていた。魔法創造スキルがないのに出来るのか謎だったがミルに聞くと既存の魔法でも工夫をすれば出来る様になるんだそうだ。出力は日向より大きいが魔法神の加護がある為使えば使う程威力も魔力効率も上がる為どんどんミルも魔力が高くなっていく。


「初めて魔物を倒すので楽しみです!」


ミルは負担が大きいにも関わらず凄く楽しそうであった。

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