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貴族の野望 2


「よし、今回ばかりは気合を入れて作ってもいいよな?」


楓は今自室で一人、何か呟いていた。


『マスター自重して下さいよ、神具なんて天界でもとんでもない物なのですから』


あぁ、分かってるよ。


今楓が作ろうとしているのは日向とミルの二人用に婚約指輪を渡そうと思って素材から自作しようと思っていたのだ。例の迷宮に入った時にオリハルコンも大量に取れたのでそれを拳一つ分の物を二つ取り出す。


本来なら指輪を作るのであれば10円玉サイズの物でいいのだがこれから楓が更に純度を高め圧縮をするので加工をすればその位になる予定だった。


「物質創造」


楓がスキル名を唱えた瞬間オリハルコンの塊は眩しい位の光を纏いだんだん大きさが小さくなっていく。


「おぉ、結構綺麗だなー」


目の前の物質はもう、オリハルコンの原型をとどめていなかった。それはもうすでに神級の鉱石と化していた。


その証拠に普通物質に光など纏う物はないのだが目の前の鉱石はキラキラと輝いていた。


『あれほど自重しろと言ったのに…』


ナビちゃんは諦めモードに入っていた。


「よし、じゃあ次にどの位魔力を込めようかな?」


『いいですか?マスター。あなたの場合魔力の純度、量共に手を抜く事を忘れれば1%の魔力を込めただけでこの世界はもちろん銀河系すらも消えますからね?』


気を付けます…。


よし、魔力の純度は…この位なら多分大丈夫だ、量もこれでOK。


「アイテム創造」


次の瞬間目の前の鉱石は更に小さくみるみる指輪の形を作っていった。


「これなら喜んでくれるかな?」


光が収まり目の前の指輪を見てみると自分で作っておいてなんだがとても綺麗な出来だった。


鉱石の時みたいに無駄に光る事はないがそれでも仄かに光っていて光沢も付いている。そして中心にはあまり派手すぎないオリハルコンを基にした楓が作った鉱石の一部が輝いていた。


一応鑑定しておこう。


〜神話級〜

愛の証

ステータス隠蔽

劣化防止

魔力貯蔵 + 100万

超身体強化

絶対防御 3枚

一撃必殺

???


こんな感じだな。絶対防御はどんな攻撃も全て防ぐ優れ物だ。シールドは3枚までストック可能で半日につき一枚回復する筈だ。


一撃必殺は自分より20レベル高い相手迄一撃で倒せるスキルだがこれは一日一回だけだ。


劣化防止はその名の通りいくら傷をつけたり汚したりしようとしても常に新品同様のものになる。


残り3つの???は今後のお楽しみ要素だ。魔力が100万の貯蔵が可能な為多分余程の事がない限り魔力が無くなる事はないだろう。これは俺が先に溜めておいた。使いきりそうだったらまた補充しておこう。俺なら1秒も要らなかった。


「これ、渡すの緊張するなー。受け取ってくれるかな?」


『マスターが初めて気合を入れて作った物なのですからきっと喜んでくれますよ』


ありがとう。後はこの指輪を入れる箱を作らないとな。少しオシャレにしておこう。


そう言って楓は市販で買えば光金貨10枚はいるであろう物を作ったのであった。


「あー、日向、ミル」


楓は顔を真っ赤にしながら二人を呼ぶ。


「んー、どうしたの?」


「どうかなさいましたか?」


「あの、これ…」


そう言って楓はさっき作り上げた指輪の箱を二人の手の上に丁寧に乗せていく。


「その、婚約指輪がまだだったから、俺が自分で作ってみた。もしよかったら…その、劣化防止スキルが付いてて最初に着けた人しか装備出来ない様になってるからずっと二人に着けて欲しくて…」


楓は柄に似合わず照れながら二人にそう伝える。


すると二人は一度顔を見合わせそれから楓から送られた箱の中身を見る。


その瞬間二人の目には大きな涙が流れた。


二人共婚約指輪は別になくてもいいと思っていた。というか楓が婚約指輪の存在自体知らないものだと思っていた。楓にはそれ以上に自分達に素晴らしいプレゼント(ステータス)を貰っているのだから特に期待はしていなかった。


それが、見るからに楓が作ったこれまでの武器や道具とは比べものにならないほど貴重な物だと肌で感じられた。すごい楓からの愛を二人は感じられた。目の前の自分たちの旦那様はいつもは堂々とどこか余裕のある姿を晒しているのに今は1人の恋する少年だ。どこか怯えているような、でも本気の態度が窺われた。


日向はこの世界に来て力が全てだと知って楓と行動している時に、正直自分はそのまま食べられてしまうかと思っていた。ここはそういう世界なのだから。でも楓はとても自分を大切にしてくれて、一人の女の子扱いをしてくれていた。何時いつの間にか自分から襲ってくれないかな?とか考える様になってとても恥ずかしかったのを覚えている。


ミルはこの国の第二王女だ。自分の身は政治の道具とそう割り切っていた。それでも毎日とんでもない数の縁談話とあまり異性として好感を持てない貴族ばかりで正直うんざりしていた。そこに現れた一人の少年。その少年に助けられてからどんどん興味がそそられていった。どんどん話を聞いているうちに心が温かくなっている事に気付いた。


そんな、二人にとっての最高の旦那様からの最高の婚約指輪をプレゼントされて、二人共とても嬉しかった。


でも…


「え?」


カエデの顔が一瞬強張る。二人とも箱を楓に返して来たのだ。そして手も…


「せっかくだから着けて欲しいな!旦那様!」


「私もお願いします。これからどんな時も絶対にこの指輪を外しません」


二人はそう、楓に笑いながら言う。


「あぁ、分かった。お前達は絶対に俺が幸せにしてやる」


そう、自信満々に楓は二人に宣言すると二人の左手の薬指にその指輪をめたのであった。


それから二人とは軽くハグをして、あまーい空間を楽しむのであった。


「おめでとうカエデ」


空気を読んで気配を消していたアルはそのまま静かに、多分楓にはバレているだろうがそのまま部屋を出て行くのであった。

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