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貴族の野望 1

明日は諸事情により21時に、1本投稿になります。

楽しみにしていただいていた方申し訳ございません!


〜王都のとある酒場にて〜


「クッソ!」


とある一人の青年がまだ昼間だと言うのに度数の高いお酒も7杯目へと突入していた。


「そんなに窶れて、どうしました?」


そこへ一人の男が入ってきてその青年に声をかける。


「うるさい!な、なぜ僕が副団長を辞め、ミル様も…」


そう、この青年はかつて楓との決闘に敗れそのまま本当に副団長を王様から直接解任を言い渡されていたのだ。


「ほう、あなたが副団長の座を降りられた、と。それは?」


「あぁ、カエデとか言うガキがミル王女と婚約するとか抜かしていたので僕があのガキを制裁してミル王女に真にお隣に立つのは僕だけだ、と主張したかったのだがあのガキどんな不正をしたのか素手でこの僕に相手してきやがった」


「なるほど、カエデとは今ミル王女と婚約なされたと周囲では噂になっていましたが本当でしたか」


男は本当は知っていたが…というかあんなに公に婚約発表されといて知らない方がおかしいのだが一応知らなかったふりをしておく。


「あぁ、だがいつかあのガキには目にもの見せてやる…」


そこには自分の恋心だけでなく栄えある副団長という役職まで踏み躙られた。もうそこにはかつてのいつもどこか余裕のあった副団長とは別人だった。カエデを憎みなんとしてでもミルを自分の元に、などと考えているのだろうか。その目はすでに濁りきっている。


「そうですか、実は私もそのカエデとか言うのには表舞台から立ち去って頂きたいと考えているのですよ。もしミル王女との婚約を利用し政治に顔を突っ込まれたらこちらは好き勝手に出来ませんからね」


男は元副団長にある提案を持ちかける。


「ふふ、それは良いな。分かった、手伝おう」


「そう言ってくれると思ってましたよ。では、先に私は例のクランハウスの前で見張りをする様に行って来ます。作戦はゲリラ的ですがしっかりとお願いしますよ」


「任せろ、すでに職を失ってる。基本的に暇なんでな」


「そうですか、では」


そして、男は不気味な笑みを浮かべてその酒場を出て行くのであった。



ミルのステータスを書き換えてから約一週間が経った。

今のミルのステータスは


ーステータスーーーーーーーーーーーーーーーー

ミルテイラ・デスハイム Lv28

種族 人間族

体力 10 → 500

筋力 10 → 480

敏速 15 → 550

知力 50 → 1200

魔力 50 → 1200

幸運 20 → 300


スキル

回復魔法 Lv8 → Lv15

弓術 Lv8 → Lv15

遠目 Lv8 → Lv15

夜目 Lv8 → Lv15


ユニークスキル

成長速度倍化

成長倍化

千里眼


エクストラスキル

限界突破


加護

魔法神の加護

武神の加護


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


と言った具合である。たった一週間で冒険者が10年も20年もの長い努力と死闘の上に鍛え上げられたステータスを軽く超えてしまった。


「これ、他の冒険者にバレたらきっと妬みの視線だけで殺されるだろうな…」


楓は割と本気でそう思っていた。まぁ、でもミルもその分この一週間は普段なら絶対にしないであろう戦闘訓練をサクヤ同伴の元しっかりとやりきったのだ。その価値は十分あるだろう。


「ふぅ、やっと完成した」


その間楓は何をしていたかと言うとひたすらクランハウスの強化と侵入防止対策をしていた。クランハウスなんて多分ドラゴンの全力ブレスを食らっても焦げ一つ付かないだろう。後は浸水対策もしっかりとしている。ここではどうか知らないが日本では結構浸水があったからな。


あとは外装が汚れない様にしっかりと魔法もかけておいた。これで外からのゴミやホコリ等で汚くなる事はないだろう。


「それにしてもカエデも本当に容赦ないね。どこに侵入しようとしたら電撃をくらうなんてシステムのある家があるんだい?」


突っ込んで来たのはアルだった。いやー俺はふつうに防犯の為に作ったし、そもそもの話だが侵入してこようとする方が悪くないか?まず今俺たち(カエデとミル)はこの街の注目の的だ。もうだいぶ騒ぎは収まりつつあるがいつどこで変な輩に捕まるかもわからない。俺は大丈夫でもまだ、日向もミルもだいぶ強くはなったとはいえ搦め手はだいぶ弱いはずだ。


そこら辺は経験がものを言うから。短期間でステータスを一流にまで上げたのでそこら辺の経験がまだ圧倒的に不足していた。ちなみに楓は特に心配していない。楓のステータスになると搦め手を使って楓に効果を期待しても耐性のお陰で全てレジストしてしまう。


「日向、ミルお疲れ様。」


楓はそんな事を考えながら目の前で訓練を頑張っていた二人を労う。


「ありがとう旦那様」


「ぐんぐん成長していくおかげで私自身も強くなれている実感があります。旦那様、本当にありがとうございます!」


二人共訓練を終えて程よく汗をかいていたが、楓の労いの言葉に素直に喜ぶ。


この二人ももう、本当に旦那様で定着してしまっていた。


「それは良かった。二人共お風呂を沸かしてもらっているから先に入って来なよ。それから朝食にしよう」


ちなみにまだ二人には手を出していないぞ。それは俺の決心がまだ出来ていない為しばらく延期だ。子供を作る気なんてまだないが婚約の形としてはこれ以上ない行為だとは分かってはいるのだが少し楓は怖かったのだ。


「本当、チキンだよなぁ」


二人共それとなく楓に期待しているのは第三者であるアルから見ても明らかだった。


アルも楓の気持ちが分からないでもなかったので特に何も言わずに楓の決心がつくまで見守っていようと思っていた。あれだけの力を有していても女の子二人抱くのには凄く奥手な楓にアルは凄く好感が持てた。


「カエデ、頑張れ」


アルはそっと楓に聞こえない様な音量でそう、密かに楓を応援しているのであった。

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