お城に呼ばれた! 2
「それで、このままではヒナタはカエデとクランハウスで一夜を共に出来るのにミルは駄目なのかな?」
先程日向とミルを婚約者にするという事で話はまとまったのだがまだ、終わってない事もたくさんある。
「分かりましたよ。そこまでやるんだったらミルもこの国で俺達を除いて一番強い冒険者にさせてみせますよ」
何か堅苦しい感じがするから王女付けもやめた。
「調子にのるなよ冒険者風情が!何の権利があってミル王女を…!」
副団長様はお怒りの様だ。何かしたのか俺。
「おい、いくらミルの事が好きだったからってもう今婚約者が決まったのだ。女々しいぞ」
王様はからかい、ミルは驚いている。
「あー。それはすまない。どちらかというと俺も嵌められた側なんでね…」
「ミル王女を娶っておいて何が嵌められた側だっ!カエデと言ったな。俺は貴様に決闘を申し込む。俺が勝ったら婚約は破棄だ」
何か言ってきたし。ミルはめっちゃ怒った顔で副団長を見てるし。こんな事をするからミルに嫌われるだろうに。だが…
「断る。もう俺はミルを婚約者に決めた。俺に二言はない。それが俺のポリシーなんでね。ミルと日向の二人と結婚するのは確定事項だ」
そう言い切ると日向もミルも嬉しそうに涙を流していた。照れるなー。
「ふ、ざけるなよ。冒険者風情が…」
「俺は負けるつもりはない、だが俺だけが賭けをしているのは不公平だろ?」
「なら、カエデが勝ったらこいつをクビにしよう」
王様がいきなりぶちかましてきた。いいの?こんなに若いのに。
「良いんだよ、ミルの気持ちも分からない奴は副団長に必要ない」
なんとワイルドな人だ。
実際バルバトスもミルから結婚云々の事を聞いた時には驚いたが、前から縁談が絶えずミルもうんざりしていたのは知っていた。逆にミルが望む相手が出て来たのであればそれが冒険者であれそいつに任せると決めたのだ。バルバトスから見ても目の前の冒険者は優しそうで、ぶっきらぼうだがしっかりとミルを見てくれると思ったからミルの作戦に乗ってやったのだ。
それを端から全否定する副団長にバルバトスも怒りを感じていたのだ。
「な!い、いいでしょう。陛下からもお許しが出た事なのでその条件で戦わせてもらう」
「なら一時間後訓練所で決闘を開始する。それでいいか?カエデ」
「俺はそれで構いませんよ。その間にミルが冒険者になってからの事を考えていきましょう」
「うむ」
バルバトスもまさかこの国の副団長相手に余裕をかますとは思っておらずご機嫌だ。バルバトスは完全にカエデサイドにいるな。
「ぬ!その余裕後で後悔する事になるぞ!」
副団長は怒って部屋を出て行ってしまった。おい、王様の前なのにいいのか?
「構わぬ、奴は権力のお陰であそこの地位におるやつよ、正直邪魔だったので手加減など必要ないぞ?」
だそうだ。随分とサバサバした人だな。
「そうですか、なら普通にやらせていただきます。それでミルの事ですが本当にいいのですか?」
「あぁ、それをミルが望んでいるからな。だがこれから大変だぞ?ミルを婚約者にしたにもかかわらず第二夫人ときた。他の縁談を申し込んでいた貴族にちょっかいをかけられる事になるぞ?」
「そんな!私のせいでカエデ様に迷惑がかかるのですか!?」
これにはミルも黙っていられなかった様だ。
「当たり前だ、お前は王の娘なのだぞ。そんな存在を妻にすればどれだけの権力が約束されると思っている」
「そ、そんな…」
「大丈夫だよ、ミルも自分の身は自分で守れる様にしてやるよ、あと俺達も付いてるよ。安心しろ」
「ごめんなさいカエデ様」
「謝るなよ、これから婚約して、ゆくゆくは結婚するんだったらお互い遠慮はしてはいけない。まぁ、俺のどこに魅力があったのかは知らないが絶対にお前も日向も俺が手出しさせないよ」
「そういう所に魅力を感じているのですよ」
「へ?」
ミルは嬉しそうだ。婚約が決まってから日向もミルもずっと照れて喜んでいるみたいだ。
ほんと、俺のどこがいいのかねー。
『マスターは自分を低く見すぎているのですよ』
そんな事ないよ、俺は酷い人間らしいからな。中学の時に散々言われた事があるよ。
『闇が深そうですね』
あぁ。
「そういう事で今日からミルはカエデ達と行動して貰う。カエデ、よろしく頼むぞ?」
「任せて下さいよ。喧嘩を売ってきた奴等には容赦しないですから。まぁ事後処理が面倒臭いですが…」
「もし、そんな事があればこちらで対処しよう。それ位の親の務めはさせてくれ」
「助かります。では容赦なく暴れさせていただきます」
「王様、楓に調子に乗らせるとこの国が滅びますよ…」
「だね。カエデにやらせると危険だ」
「そ、そんなにか?」
「「ええ」」
「お前ら…」
俺以外みんな笑っている。王族ファミリーと俺達のクランだけだが…それ以外の護衛の人達は俺を憎む様な顔をしている。
「それでクランハウスなのだが、用意はしてあるものの家具がないからそれはこちらで金を出すから好きなものを買ってくれ」
「いえ、お金は余っているので自分達で用意しますよ。あまりいただき過ぎるのもよくないですから」
「ほう、あまり欲がないのかな?なんなら貴族にしてやってもいいんだぞ?」
王様は結構マジな目で俺に問う。
「結構ですよ。俺達は冒険者という肩書きが一番合っている。まだ今は自由に行動したいですし」
「なるほど、権力にも興味がないか。やはりお前は面白いな」
王様は嬉しそうである。
「ありがとうございます」
それから決闘が始まる迄の間、皆で他愛もない話をしながら時間を潰すのであった。
日向が楓の隣はずるい、という事でアルがどいて日向とミルが俺にくっつき、王様から両手に花とはこの事だとからかわれるのであった。
どうせまた後でアルにもからかわれるんだろうな…
だがそれも悪くないかなーと思い始める俺であった。
「「旦那様!これからもよろしくお願いしますね!」」
二人の声とともに両頬から軽く口づけされ、俺は超照れてしまいまた皆からからかわれるのであった。
幸せである。




