人助けなのです! 2
あぁー居心地が悪いー。
『開幕どうしたんですか?マスター』
いや、最初は馬車の中が綺麗だなーとか隣に美人がいて落ち着かないなーとか考えながらぼーっとしてたわけですよ。なのに何故か隣でミル王女がやたらと話しかけてくるし、日向も前から俺に喋りかけてくるし、挙げ句の果てには何故か意気投合した二人から一気に話しかけてくるし。アルはずっと外の景色を見ながら黄昏ているし、外の騎士からは凄い睨まれるし。
これもまだ最初の一時間は耐えられたよ。でもね?もう三時間もこの状況じゃ居心地が悪くなるってものですよ。
俺達は時速200キロで走破してきたがこの馬車は時速30キロ位なので凄い時間が掛かっている。俺達が異常なのは言うまでもないが…
「あと2日位で着くと思います。今日は野宿になりそうですね」
「え、村とかはここら辺にないの?」
ほんと、どこでこんなに仲良くなったのやら。最初は日向もミル王女に敬語を使っていたのだが二人でこそこそやってるうちに何故か日向もタメ口になっていた。
「はい。昨日は村に辿り着いてそこで休みましたが多分今日は村まで着かないそうです」
「へー。まぁ、楓が居たらなんとかなるよ」
「カエデ様が?」
「うん。楓は野宿の時でも快適に過ごせる様に何とかしてくれる筈だよ」
「そーなんですか!それとさっきから気になっていたんですが日向たちはどこに道具をしまっているの?」
もっともな質問である。
「あぁ、楓がね。私たちに一つずつアイテムバッグを作ってくれたんだー。そこに全部入れてるよ」
「まぁ!カエデ様はアイテムバッグもお作りになられるのですか?」
「まぁ、うん。一応」
苦笑いしながら答える。
はぁ、これから面倒な事にならないといいんだけどな…
『マスターはトラブルを自身に引き寄せる力がある様ですね』
笑ってる場合じゃねーよ。幸運∞なんだけどな…。
それから夕方になるまで特にイベントもなく馬車は走り続ける。その間は各々やる事をやっていた。俺は新しい魔法の構造を考えていたり新しい便利道具を考えていた。日向とミルはずっと何か話していた様だが俺は目をつぶって寝ているふりをしていた。アルも同じ様な感じだった。
日向とミル王女が話している分には他の騎士も何故か嫌な顔をしない。むしろ華があるのかニヤニヤしていた。
それで騎士が務まるとか…。
「ここで野営をしようと思いますがよろしいですか?」
御者の騎士がミル王女に対して聞きに来た。それに応じて俺とアルも目を覚ます。
こいつ、やっぱり起きてやがったな。
「はい。皆さんも大丈夫ですか?」
ミル王女は俺たちにも確認をとる。
「大丈夫だ」
「私も大丈夫だよ」
「僕も異論はないかな」
という事で皆野営の準備をしに下へ降りる。何故かミル王女も付いて来た。
「カエデも大変だね」
アルは二人にバレないようにこそっと俺に言ってきた。
「本当だよ。めっちゃ居心地悪かった」
「あははー。モテる男は辛いね」
「モテる?俺が?ないない」
俺は自分は顔は良いが性格が悪いと自覚しているので素で否定する。
「ん?楓、アル、なに話してるの?」
「ん?いや、何もー」
「そうだね、男同士で語り合ってただけだよ」
「ふーん。それより楓、どこにテント立てる?ていうかどうやって寝る?」
「この時用にテントを三つ用意してきた。一人一つだ」
そうやって三つ色違いのテントを出す。
「赤がアルで、水色が日向だ。俺はこの白だな」
「これって例の?」
「そうそう。まぁ、中は入ってからのお楽しみだな」
「え?カエデ。これにも何か細工をしてるのかい?」
「まぁな。中に入ってみてくれ」
そうして二人とも自分のテントの中を覗く。ミルも日向のテントを覗いていた。
「うわー!凄いねこれ!オシャレに出来てる」
アルは結構喜んでいる様だった。
「私の部屋も女の子らしくなってる。楓がやってくれたの?」
「まぁな。気に入らんかったら後は自分で好きに変えてくれ。これからは自分達のアイテムバッグに入れるといいよ」
「ありがとう楓」
「僕もありがとう」
二人は喜んでくれたみたいだ。よかったな。
だが一人そうは言っていられない奴がいた。それは…
「なんですか!?これは…空間魔法を使っている!?こんなのお城の中でも見た事ない…」
ミル王女は俺が化け物と知らないのでこれを作ったというのは流石にビックリしている。
アイテムバッグでは凄いなぁで終わってたのにこのテントはそうではなかったらしい。
それは普及率によるものであるらしいが。アイテムバッグはそこそこ数が量産されている為そこまで驚く事はなかったのだが、空間魔法をテントに使うなど誰も思いつかない、なので数が圧倒的に少なかった。難易度が高いのも一役買っているが。
それを俺が事も無げに三つ出すから流石にミルも動揺してしまっていた。
「日向、私も日向のテントで寝ていい?」
「ん?ベッドは広いから別に良いけど大丈夫なの?」
「大丈夫よ。護衛には私から言っておくわ」
「そっか。ならいいよ。私もまだミルと話したい事がたくさんあるし!」
「ありがとう日向」
なんか女性二人は一緒に寝るつもりらしい。
「なら、僕達も一緒に寝るかい?」
「は?気持ち悪いからやめてくれ」
「ほ、本気で引くなよ。冗談だよ…」
アルも冗談をかましてきやがった。
そしてその後俺は超美味しい夕食をミル王女に振る舞い、その後も日向のテントで寝ると護衛の騎士に言い張ったお陰で更に俺が護衛の騎士から憎まれるのであるがそれはまた別のお話。




