迷宮探索 9
あの隠し部屋を去ってからしばらくすると下へ行く階段を見つけた。
「お、階段発見。」
「本当だ!この階層は結構面白かったね」
「そうだな。何気に今迄で一番イベントが多かったんじゃないか?」
「そうだね。またああいった隠し部屋を見つけてみたいな。あそこはとっても綺麗だったしね」
「そうだな。その辺は俺が大体分かるから任せておけ」
「そっか。任せた!」
そして第十三階層へと足を踏み入れる。ん?誰かいるな。パーティーみたいだ。向こうもこちらに気が付いたみたいだ。
とりあえず無視の方向で行こう。
「おいおい、ちょっと待ってくれよ。君達2人だけかい?この階層はトラップも多いから2人じゃ危険じゃないかな?」
なんですぐに声をかけてくるの?なに?冒険者って意外とコミュ力高いの?
まぁここはしっかりと返事を返しておこう。
「いや、大丈夫だ。じゃ、俺達は先に行かせてもらう」
「ちょっと待った。流石に君達だけでは行かせられない。どうだい?臨時でこの階層だけ一緒に行こうじゃないか。こちらは五人いるから君達も守ってあげられるよ」
正直邪魔だ。だがまぁ俺達が弱そうなのは認めるから少しだけ付き合うか。
「じゃあこの階層だけよろしく頼むよ。俺は楓、こいつは日向だ」
「よろしくお願いします」
日向も挨拶をする。
「うん、よろしくね。これでも僕たちはBランクパーティーで有名だから少しは腕にも自信があるんだよ」
さいですか。
「じゃあ俺達はどうすればいいんだ?俺達はまだDランクなんだけど?」
実力はそんなものじゃないが…
「Dランクでここまで来られたのか?凄いじゃないか!君はどちらかと言うと前衛だろうから後ろの女の子が頑張って来たのかな?凄い腕だね。なんなら僕達のパーティーに入るかい?君ならすぐにBランクにしてあげるよ!」
こいつら全員男だからか日向に軽くナンパをかましている。まぁここまでほとんど日向が頑張ってきたから反論出来ないんだがな…
「い、いえ。結構です」
日向は若干引きながら遠慮している。
「そっか。まぁこの階層を攻略しているうちに心変わりがあるかもしれないからその時は言ってね!」
「は、はぁ」
日向も呆れている。まずこいつ、よく俺を差し置いて日向をパーティーに引き込もうと出来るな。
少しムカっとしてきた。
だがまぁまだ実害があるわけじゃないから黙っている。
「じゃあ僕達が前衛でトラップを見つけるから君達は後ろから付いて来るといいよ!」
勝手に陣形迄決められてるし…主導権握られてるなぁ。
〜それからしばらくして〜
長い!なにが長いかと言うとこいつらのトラップの解除時間が。だ!あれだけ張り切っておいて一つのトラップを解除するのにも20分位掛かっている。その間俺達は何をしているかというと周りの警戒と言う名の自己鍛錬だった。
俺はトラップを見つけ次第3秒も掛からずに解除していた為ここまで面倒臭い事になるとは思わなかった。
日向も楓のトラップ解除に慣れている為かげんなりしている。しかも当の本人達は…
「どうだい!僕たちの腕さばきは!ここまで早くにトラップを解除出来る冒険者は少ないと思うよ?君達も前の階層とかでも結構時間掛かったろ?ヒナタちゃんも僕達といた方が得になるよ?」
20分も掛かってる奴が粋がってんじゃねぇ…
「いえ、私は楓くんとパーティーを組んでる方が楽しいので」
「何?君達は付き合ってるのかい?」
Bランク冒険者は日向に爆弾発言をかます。そういえばこいつらの名前聞いてなかったな。それにリーダー以外全く喋ってないし。
「い、いえ!付き合ってません!」
日向は顔を真っ赤にして否定する。
「なら、別にパーティーを抜けても問題ないんじゃない?弱い奴といると自分迄弱くなっちゃうよ?」
ブーメラン刺さってるんだが…ちなみに俺はさっきから無言だ。無駄に話を広げる必要もないしな。
だが日向は俺を否定されたのが頭にきたらしく少し拗ねている。
「別に楓くんは弱くありません!なので結構です!」
「いやいや僕からするとカエデくんはまだまだだよ。まずそうだ。今も全然周りを見ていない。
注意力が欠けていては冒険者は務まらないよ」
俺は今魔力による索敵を行なっている為出来るだけ視野を狭めているのだ。それでもこいつに言われる程注意力は欠けていない。
「悪いが日向が嫌がっている。パーティーメンバーを引き抜かれるのはあまりいい気分じゃないからその辺にしてくれると助かる」
「それは悪かった!だがカエデくん。あまり深層に行ってヒナタちゃんを傷つけたら許さないよ?」
何彼氏ヅラしてるんだよ。だめだ、身震いが…
「楓くん、私今凄い鳥肌がたったよ。人によって
ここまで感じ取り方が変わるなんて私自身驚きだよ」
「俺も同感だ」
二人は小さい声で会話する。ここで反論しても面倒臭いからさっさとここを抜けたい。
「分かったよ。それじゃそろそろこの階層も終わりそうだから先に行かせてもらうよ」
「そうかい…それじゃヒナタちゃん。いつでも待ってるからね!」
そいつの笑いがどこか作っているように見えたのは俺の気のせいか?
何を企んでいる?まぁ今はいいか。
「なんだったんだろうね。」
「さぁ?日向が可愛かったからナンパでもした気になってたんじゃないか?」
「そうなのかな?それでも楓くん全然フォローしてくれなかったし…私邪魔かな?」
日向は悲しそうな顔をしながら問いかけてくる。
「バカ抜かせ、そんなわけあるか。俺が横からしゃしゃり出たらまた実力行使になりそうだから成り行きに任せてただけだよ。あまり人を殺したくない」
それを聞いて日向はどこか安心した感じで
「そっか。気を使ってくれてたんだ。ありがと」
とだけ言った。
「お、本当に下へ行く階段があるじゃん」
「なに?さっきのありそうってのは嘘だったの?」
「当たり前だろ。今回はマップを使わないって決めてたんだから。早くあそこから抜けたかっただけだよ。それと少しペースをあげよう。後ろから追いつかれたらまた面倒な事になる」
「そうだね。今日中に第十五階層迄行けたらいいね」
「行くつもりだが?」
「そうなんだ…」
俺はなかなかスパルタなのだ。




