表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/482

迷宮探索 6

第七階層に来たわけだがどこからか視線を感じる。日向も何か違和感があると言っていたから確実だろう。


では、何故俺達を見る必要がある?考えられるのは一つだろう。今の俺達の格好は自惚れてはいないがどこからどう見ても美形の男と女の子が丸腰に近い感じで迷宮をさまよっている。


盗賊からすればいい獲物でしかない。まぁふつうに考えれば第五階層のボスを倒したのだから初心者ではない事が分かる筈なのだが…そこは都合良く解釈しているのだろう。なんでこの階層に入ってから俺達に狙いをつけたのかはよく分からないが…初心者狩りをしたいならそれこそ第二階層位で待ち伏せしとけばいいのである。


視線の数は2人だな。明らかに偵察と言ったところだろう。さて、どこで襲ってくるのやら…。


「見られてるな」


「やっぱり?何か変だなーと思ってたんだけど。どうする?」


「とりあえずふつうに攻略する。なるべく初心者のふりをして行こう。俺達に目をつけた事を後悔させてやらないとな」


「あははぁ…容赦ないね」


「前にも言ったろ、日向を害する奴は許さないって」

「そ、そうだったね」


クランメンバーを害する奴はマスターである俺が許さん。日向一人でもなんとかなるだろうがやはり襲われるというのは気持ちの良いものではない。


『マスター…』


それに俺達だけじゃなくてこれから来る奴達(やつら)も被害に遭う可能性がある。別に他の奴達(やつら)がどうなろうと知った事ではないがあまりこのせいで他の冒険者が死にましたとか言われたら少しは寝覚めが悪いからな。


「っと魔物だな。ここは久しぶりに俺がステータスを落として戦うとするか」


敵はクルトという人型の魔物だった。相手のステータスが150位だったので俺も150で行かせてもらおう。武器も日向から貰ったストーンソードを使う。


「さて、いくぞ!」


楓は気合を入れて魔物へと突撃していく。


おー、久しぶりに対等に戦えてるな。やばい楽しくなってきたぞ。


それから5分みっちり戦い続けて見事に俺が勝利を収めた。勝利を収めてから監視の目が無くなった事を見ると俺達の戦力を間違って把握したのをそのまま本陣に報告しに行ったのだろう。


さて、お遊びは終わりにしてさっさと先に進もう。多分第十階層迄には出て来るだろう。


そのまま第七階層をあっさりと攻略していく。どの魔物も出会い頭楓の剣で一刀両断か、日向の魔法で一撃かなのでイージーモードだ。


残念ながら第七階層では俺達の前にはレア種は現れなかった。


第八階層はトラップのオンパレードだった。この階層は昨日のしょうもないトラップの様なのもあったがハマれば怪我はするだろう。というトラップもあった。少しトラップのレベルも上がってたな。だが盗賊らしき奴は現れなかった。


「もしいるとしたら次の階層だ。さすがに第十階層は昨日みたいに他の冒険者でごった返しているから盗賊も仕掛けられないだろう」


「分かったよ。次の階層は気を付けていこう」


そして第九階層…案の定攻略し始めて30分位経つと目の前に15人もの人の気配を感じた。


「日向、気を付けろ」


「うん」


そしてガラの悪い冒険者らしき集団が俺達を発見した瞬間少しの驚きとそれ以上の歓喜の表情を見せていた。


「あの、何か?」


一応、何もないかもしれないから声をかける。まぁこのシチュエーションで俺達を狙ってない事なんてないだろうけど。


「あぁ、そこの可愛い女に用があってな」


「え?私?なんですか?」


「それはな…まずそこの坊主を殺してからな!」


そう言うと俺の一番近くにいた奴がいきなり俺に斬りかかってくる。


なまくらな剣筋になまくらな武器。よくこんなので俺を倒せると思ったな。


エルルーンを構える。剣を合わせただけなのに相手の剣が折れる。そのまま俺は相手を斬り捨てる。少し目の前の冒険者?盗賊?達に怒りを感じていたのだ。


こいつらはこうやって弱者から金や女を貪ってきたんだろう。正直言って虫唾が走る。


相手の冒険者達は俺が感情を表に出さず簡単に人を殺した事に驚いている。


普通この年齢で人を簡単に殺す奴などそうそういない。特別な事情を持っている奴なら分からないでもないが目の前の男はどう見ても普通に人生を勝ち組で過ごしてきただろう容姿だ。


俺の頰に斬った男の血がつく。それを拭うとその集団のリーダーであろう男に向かって睨みを利かす。


「お前達が第七階層で俺達を見てたのは知ってるんだよ。あんまり俺達のクラン『無限の伝説』を舐めるなよ?」


「は、はあ?お前みたいな年の奴がクランリーダーだっていうのか?ありえねぇ!ハッタリだ!

お前ら!全員で先にあの坊主から殺るぞ!」


「「「うっす!」」」


冒険者総勢14人が一気に楓に斬りかかる。


「気を付けてね」


「あぁ」


普通のヒロインならここは主人公へ泣き叫ぶシーンだろうが日向は俺のチート加減を知っている為いつもの魔物を相手にする様な応援をする。日向も人が死ぬのはあまり見たくないが俺が自分の為に怒ってくれているのは分かった様だ。


それにクランマスターの言う事やる事は絶対だと日向は思っている。それが俺であるが為に。だから相手の冒険者が死のうが喚こうが自分達を襲って来た相手が悪い。そう割り切ってこれから起こるであろう一方的な殺戮を見る。


「数で押せばなんとかなるとでも思ったか?」


シールドを全面に張り14人全員の攻撃を受ける。がノーダメージだ。


「な、なんで剣が止まるんだよ!」


「俺がそうなる様にしたからだ。ほら防御がザルだぞ」


そう言うと一振りで3人の命を屠った。さながら死を伝えに来た死神の様に。


「ちっ!お前ら!気を引きしめろ!ぶっ殺してやる!」


「口より先に手を動かせよ…もう終わりだ」


俺は魔法を放つ。それはさながらドラゴンのブレスの様な炎だった。その魔法のお陰で11人全員チリとなった。


だが全てが終わったのに俺の顔はすぐれなかった。


「ふぅ、終わった。悪い日向、あんまり良くないとこを見せた。だが俺は仲間の為なら敵に回る奴全員を殺す。日本にいた時も暴力には暴力を。を俺は信じて生きてきた。これでお前は俺を幻滅すると思う。だが俺はお前には隠し事をしたくない。だから敢えて殺した。これからもこういった事があるだろうから。もし、俺の事を幻滅して仲間として見られないのであればもう、ここから出よう。お前だけならクラスメイトの所に戻ってもなんとかやれる筈だ」


俺は泣きそうな顔をしながら日向に語る。


「そんな事ない!」


日向も何故か泣きそうな顔をしながら俺に語る。


「楓くんは優しいよ?だって私の為にやったんでしょ?楓くんのことを幻滅なんてしない!この世界に来てから今迄ずっと守ってくれてた!

だから私は楓くんを幻滅なんてしないし楓くんに酷い事する人をわたしは許さない!」


日向は自分の中にあるもう一つの気持ちも伝えたかったが今じゃない、このタイミングで楓に仕掛けるのはずるい。と思い心の内にしまう。


俺は驚いたけど嬉しかった。こんなに自分の事を思ってくれる人に出会ったのは久しぶりだったから。自分の醜いところを晒してもなお味方でいてくれると言ってくれたのは親以外では初めてだった。それだけに嬉しかった。やっと本当に心を許せる仲間が出来たのだと思った。


「ありがとう。日向」


俺は一粒の涙を流しながら、だが笑顔で日向に感謝の言葉を述べる。


「ううん。でもわたしはこれからずっと楓くんの味方だからね!」


これも一種の告白だと思うが今の二人にはそんな事を考える余裕はない。


「これからもよろしくな。日向」


「うん!よろしくね!」


この日、改めて二人の仲が深まったのであった。

まだまだ先の攻略に向けて、今日は早いがここで休む事になった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ