迷宮探索 4
第五階層に来たわけだが凄い事になっていた。
大きなホールみたいな所に冒険者がごった返していたのだ。まさかこんな所にこんなに多くの冒険者がいるとは思わなかった。
ボスは奥の大きな扉の中にいるみたいだ。この扉もなんか禍々しい。
「結構人いたね」
「そうだな。まさかこんなに冒険者がいるとは思わなかった」
時間も時間だからボスと戦う前に野営をするみたいだ。
「俺達もここで一回休んどくか?俺はさっさと先に進んで第六階層で休みたいんだけど…」
こんな冒険者が多い所で休んだら目立ってしょうがないし絶対絡まれるし日向も危ない。
「そうだね。流石に私もここで一晩寝るのは勘弁したいかなー」
日向も同意見だった様だ。そうと決まったらさっさと攻略してしまうに限る。
「おい、そこの坊主。今から行くのか?あまり調子に乗ってると痛い目見るぞ。お前はいいがそこの嬢ちゃんは俺達の酌してくれや」
またか。まぁ日向も可愛いから絡まれるのはしょうがないけど。日向も面倒臭そうな顔してるし。
「悪いが俺達は先に行く。お前達の相手をしてる暇はないんだ」
「なんだと!俺達は親切でお前に警告してやってんだ!その礼として金とそこの嬢ちゃんくらい貸してくれたってバチなんてあたらねぇよ!」
何を横暴な、しかもお金まで増えてるし…
面倒臭いから無視してボス部屋まで直行だな。なんか周りからも結構注目浴びてるし。
「無視とはいい度胸じゃねぇか。その腐った態度叩き直してやる!」
どっちが腐ってるんだか…
冒険者は後ろから俺目掛けて殴りにかかる。剣を使わなかったのはさすがに若者を殺すというのはこの冒険者もためらった様だ。
まぁ俺からしてみればどちらもあまり変わらないのだが。
「そんなに夜の相手して欲しかったらこんな迷宮なんて来ないで娼館でも行ってろよ」
俺は呆れながら魔法でシールドを張る。
これで並の冒険者の攻撃は一切入らない。並というのはこれでも俺が手加減しているからだ。普通にシールドを張ったら俺に傷を負わせられるのはあの全知全能神のイリア位か。流石にそこまでする必要はない。下手したら冒険者の手がなくなる。相手もちょっと殴ってくる位なら骨折程度で充分だ。
『それでもやりすぎな気がしますが…』
まぁ、その位は許してほしい。仲間を軽く見られるのは俺としても避けたいからな。一種の見せしめだ。ちょうどここには多くの冒険者がいるからいい見世物になるだろう。
「っんの!なんでお前を殴れないんだよ!」
冒険者が頑張っているが無駄な頑張りだな。これからボス戦だというのに相手さんもバカだな。
「もういいだろ。ちょっと寝てろ」
そう言うと相手の手を掴み少し力を入れる。それだけで手の骨が軽く砕ける。そのあとは鳩尾に風魔法をゆるく放ち気絶させる。
ほかの冒険者達も唖然としていた。絡んだのがDランク冒険者でそこそこ有名だったからだ。
それをあからさまに新参の、それも武器すら持ってない奴に負けるなんて誰が思うだろうか。しかも何故か少年はあれだけ殴られていたのに全く傷を負っていない。他の人にはシールドの存在が分からなかったみたいだ。
「さぁ、片付いたからそろそろ行くか」
「相変わらず楓くんは容赦ないね」
「そうか?だいぶ手を抜いたと思うんだけど?優しい位だろ?」
周りの冒険者はあれで手を抜いていたと言われギョッとする。
「いやいや、手の骨折る必要なかったよね?」
「まぁそうだけど…なんか日向にちょっかいかけてきたのがうざかったんだよ」
「え…そっか。ありがとう」
日向は何か勘違いをしているがまぁいいだろう。仲間にちょっかいをかけるなんてクランマスターの俺が許すわけないしな。
日向の頰が薄っすら赤くなるのを見てほかの冒険者は日向に目を奪われた。そして超鈍感な俺に盛大に嫉妬の目を向ける。
恋する乙女は3割り増しで可愛く見えるのだ。
まぁ俺には俺で他の女性冒険者から顔が超整っているらしい俺に好奇の視線を向けられているが…
他の冒険者からすれば美形コンビここにあり、と言ったところか。目の保養である。
「あんまり周りに注目されるのは好きじゃないからそろそろ行こうか」
「うん」
あれだけやっといて注目されたくないのはどうかと思うなとこの場にいる全ての冒険者が思ったのであった。なお俺達に絡んでいた冒険者は手の骨折を治す為に迷宮を去るのであった。
門の前まで行く。本来ここは順番待ちなのだが今は皆野営の準備をしているので待つ必要がない。
「楓くん、今回は私がやらせてほしいな。」
「了解。じゃあ一応どんなやつか鑑定してやるから一人で対策を練りながら頑張れ。流石にこの階層のボスに後れをとる事はないだろうがこれからの事を考えて、な」
「うん。ありがとう」
日向の返事を確認し俺は門を開く。
「ほぉ、面白そうな敵だなー」
「そうだね。私もちょっとやる気を出して頑張るよ!」
楓達が見たのは大きな石だった。全長5メートルはあるだろう。
とりあえず鑑定っと…
ーステータスーーーーーーーーーーーーーーーー
ビッグストーン Lv 17
種族 妖精族
体力 1000
筋力 100
敏速 0
知力 10
魔力 0
幸運 10
スキル
硬化 Lv5
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硬化とは物理ダメージ軽減のスキルだな。これは魔法使いがいないとなかなか苦労しそうな敵だ。まぁでかいだけの魔物なので俺達からすれば的でしかないんだけどな。
「体力は1000あって硬化スキルを持っているから物理はやめておいた方がいい。まぁ日向の場合魔法の方が得意だから関係ないが」
「うっ…」
日向は体術スキルを上げる為素手でいこうと思っていたのだが出鼻を挫かれる形となった。
「お、おっけー。最初から魔法を撃とうと思ってたよ」
「お、おう。なんかあったか?」
日向の慌てようが気になった。
「いや!何でもないよ!じゃあ行くね!」
日向はまくし立てて魔法を放つ準備をする。
「火矢」
日向は初級魔法の火矢を放ったがビッグストーンは倒しきれなかった。こいつ、鳴き声をあげないから攻撃が効いているのかどうかがイマイチ分からない。
「うーん、火がダメなら石でもぶつけてみよっかなー」
日向はそう言いながら自分の倍以上の石を5個生成する。
「いっけー」
なんとも気の抜ける掛け声と共に、だがそのスピードはバカに出来ない速度でビッグストーンにぶつける。
するとビッグストーンは白く光る。
「日向!一旦下がれ」
一応注意はしておかないとな。何が起こるか分からない。俺も気を引き締めておこう。
日向が俺の隣迄下がり警戒する。光がなくなるとそこには剣が一本落ちていた。
〜中級〜
ストーンソード
切れ味 中
石の剣なんて切れるのか?と思ったが切れ味 中とあるのだからそこそこ切れるのだろう。
「倒したみたいだな」
「そうだね。急に光ったからびっくりしたよ」
「ボスを倒すと何かドロップするみたいだな。今回は剣だったか。見せかけならちょうどいいな。俺がもらっていいか?」
「うん!いいよー。私からのプレゼントだね!」
「そうだな。大切にするよ」
日向からのプレゼントか、大事に使わないとな。
そして、ボスを倒したからか奥に階段が出来ている。あそこから下へ行くのか。という事はボス部屋に入ると倒す迄外に出られないのか。なかなか不便だな。
「さて、それじゃ第六階層へ行って野営の準備だ」
「うん!」
俺と日向は野営をする為に下の階層へと降りて行くのであった。
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