勇者が出たみたい!
あれからちょうど1時間程待ってシュトガルに入れたわけだがあまりリングベリーと大差が無いように思える。
「意外とリングベリーと大差ないんだね」
「そうだな。まぁ言っても馬車で1日しか掛からない場所にあるからそんなに変わる事もないだろ」
「そうだね。それよりこれからどうする?」
「とりあえず、今日泊まる所の確保が最優先だな。それが終わったら今日は1日この街の観光かな」
「そうだね。まだお金には余裕もあるし」
ということで宿を探す事になったのだが何処にあるんだ?
『マップを使いますか?』
あぁ、よろしく頼む。俺達が普通に泊まれるレベルの宿を探してくれ。
『分かりました。ここから一番近い所ですと…』
お、頭の中にこの街の全体図が出て来た。っとすぐそこにあるな。
「そこにあるみたいだからとりあえず行ってみるか」
「そうだね」
ということで2人して宿屋へ向かう。
「いらっしゃい。お泊まりですか?それともお食事ですか?」
俺達に対応してきたのは30代くらいの男の人だった。見た感じ優しそうな印象をうける。
「泊まりだ。一部屋ずつ頼む」
「かしこまりました。ここは一泊1人銀貨3枚の3000ルリで朝昼晩の食事付きです。」
この前泊まった宿より少し高い位か。内装はこっちの方が良さそうだから値段の相場も大丈夫そうだな。
「分かった。とりあえず昼食を頼む」
「畏まりました。それでは適当に席に座ってお待ち下さい」
日向と2人席に座る。
「こんな所に迷宮なんてあるの?」
「あぁ、マップによれば街から出て少し距離はあるが領地内だからこの街の物扱いなんだろ」
「なるほど。私はてっきり街の中にあるものかと思ってたよ」
俺もそう思ってました…まぁどっちでもいいんだけど。
「とりあえずこの街の情報とかを適当に見聞きして今日の時間を潰そうと思うがいいか?どうせ今から依頼って言ってもそんな大したものは受けられそうにないし」
「そうだね。それに一応この街の探索とかもしたいし!」
とりあえず今日はこの街でぶらぶらするとして明日はギルドに行って依頼を受けるなり迷宮の事を聞くなりしないとな。
明日は依頼でいいか。まだ日向も自分の力を操れてなさそうだったし。
慣らしていかないとな。
それから適当に雑談をしていると昼食が目の前に出て来た。昼食と言っても軽く食べられるサンドウィッチだったが。まぁ昼間から重たいものなんて出されても午後の活動に支障が出るから良かった。
「さて、食べ終わって一段落ついたしそろそろ行くか」
「そうだね。ちょっと楽しみだな」
日向はご機嫌だ。何よりです…
2人で街の中心部へと行くとそこはリングベリーよりも圧倒的に人がいて、物を売る人と買う人でごった返していた。
「結構人がいるね」
「だな。流石に迷宮も近くにあるから道具類の需要も凄いんだな」
「あー、そういうことね」
まぁぶらぶらするのに問題はないだろ。
「適当に回るか」
「そうだね!何処から行く?」
2人で適当に露店を冷やかしていると何やら聞き捨てならない事を耳にする。
「リングベリーで召喚された勇者様達がこの街に来るんだって!」
「っていうか勇者様なんていたっけ?」
「それが最近召喚されたんだって。すごい強いらしいよ!」
「でもどうせリングベリーの教会の戦力増強の為でしょ。魔王が〜とか言っても今はそこまで魔王軍も攻めて来てないし」
なんと、あいつらが正式に勇者として発表されたのだそうだ。あんな奴達が勇者なんて他の人が知ったら失笑ものだろう。
今のクラスメイト達の戦力ってどうなってんの?
『Aランク相当が1人だけいますね。他はB、最低でもCランクといった処でしょうか。まぁマスターはともかく日向様にも勝てるかどうか?という処でしょうね』
ふむ、今の日向よりも弱いとなるとこれからどんどん強くなっていく日向には手も足も出なくなりそうだな。
『ですがそれはマスター基準なのであって一般市民や冒険者、貴族や教会からしたら充分脅威となりますね』
あいつらもそこそこやってるんだな。まぁあいつらの事だから中途半端な力で満足して慢心してるだろうがな。
『可能性は充分にありますね…』
はぁ、面倒臭いのと一緒に来たもんだよ。
楓にしてみたらクラスメイトはすでに赤の他人、もしくはめんどくさい一団としか思っていないのでクラスメイトに注ぐ情など全くないのであった。
「楓くん、クラスメイト達が勇者として正式に発表されたみたいだね」
「だな、まぁ正直どうでもいいけどな。このままいけば日向に敵うクラスメイトなんていなくなるしな。すでにいないらしいが日向は俺と違って成長するんだから頑張ろうな。」
「そうだね。楓くんと並んで歩ける様に頑張らないと!」
この辺は成長の余地を残している日向を羨ましく思う。俺なんて最初から∞だったせいでそういった楽しみがないのだから。
まぁ使いこなすのが難しいのでまだまだ俺も鍛える事があるし力がないよりありすぎる方が有難いのだから文句はあまり言わないでおこう。
あ、もういちいちステータスをいじるのがめんどくさくなったから今は常に∞にしてある。これでも自分でどの辺の力を出したいな〜って思うと自然にそこまでの力になるみたいだからな。
ただ何をされても体力が減らないのと俺自身、神をも超越した存在となっているから実質不老不死なのだ。この辺はそのうち考えていこうかな。
「さて、勇者の事も聞けたし、そろそろ宿に戻るか」
「そうだね。明日からまた依頼受けるんでしょ?」
「あぁしばらく日向のステータス上げと体慣らしの為に適当に討伐依頼を受けて力が付いてきたら迷宮に行こうと思う」
「了解!明日から頑張らないとね」
「一応動かなくても体内の魔力をぐるぐる動かしたり魔法の空撃ちとかも出来るから暇な時にしておくといいぞ」
「そっか。それなら宿の中でも出来るね!」
「あぁ、まぁ程々にしろよ。焦って強くなる必要はない。ゆっくり、でも着実に強くなればいいしな」
「うん!」
そんなこんなで今日は珍しく何もトラブルなく1日を過ごせたのであった。




