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救世主が男の娘でいいんでしょうか?  作者: せんと
第三章 学びの園の男の娘
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第9話 ララエラさんの一日レイラ体験です

 窓から降り注ぐ柔らかな朝の光を受け、意識が徐々に覚醒へと歩み出す。その歩みに逆らうことなくアンナは意識を覚醒させる。だがまだ起き上がることはしない。そんなことをすればお楽しみ(・・・・)が減ってしまうから。

 アンナは狸寝入りをしながら肌を撫でる布団の感触を楽しんだ。


「――失礼します。アンナ様(・・・・)、そろそろお時間ですわ」


 しばらくして、部屋のドアがノックされ何物かが入ってきた。そのままアンナに近づきゆさゆさと優しく体を揺らす。


「……ふぁ~い」


 アンナはその動作で、さも今起きたかのような若干わざとらしさの混じったあくびをしながら上体を起こした。


「ふぁ~……おはようございます、ララエラ(・・・・)

「おはようございますですわ、アンナ様」

「でもまだ眠いですよ~。あっ、ちょうど良いところに上質の抱き枕が~」


 寝ぼけた演技を続けながらアンナはララエラのふわふわの尻尾に抱きつく。そのまま顔を埋めて柔らかな感触を楽しんだ。


「ひゃっ――いきなりは酷いですわ。尻尾は敏感なところなんですのよ」

「う~ん……至福です~」

「ひうっ……い、いい加減起きてくださいまし……アンナ様!」


 顔を真っ赤にしながらもララエラはアンナを振りほどこうとはしなかった。

 かなり心を許してくれている証拠である。

 昨日は純血を捧げる覚悟までしていたのだからこの程度の戯れは許容範囲内ということなのだろうか。

 ただあまりやり過ぎるとセクハラで訴えられそうなのでアンナはほどほどのところで尻尾を解放した。


「ふぅ、ごめんねララエラ。どうにもボクは朝が弱くて寝ぼけてしまうみたいです」

「い……いえ。寝ぼけていたのなら仕方ありませんわ。それに……アンナ様になら寝ぼけていないときでも自由に触って頂いて結構ですわ」

「まぁ、ララエラは大胆な子ですね。そんなこと言われたら尻尾以外のところもいろいろ触ってしまいますよ?」

「そんな……でもアンナ様になら……わたくし……」


 艶めかしい台詞と同時にララエラの顎に指を当て、くいっと自分の顔に近づけるアンナ。その動きは少々演出過剰で演技臭さが露骨に出ている。

 だが先ほどの寝ぼけ演技とは違い、今度のは人にみせるための演技なので問題はない。

 というのも――


「あぁ……あんなに顔を近づけて……そこは私の場所のはずなのに……。こんな……こんなのってないです……もう終わりです……神は死んだんです……こんなものが現実だというのなら世界なんてこの私の手で滅ぼすしか……」


 アンナは半開きになったままの扉に視線を向ける。

 そこには体をわなわなと震わせながら呪詛のようなものを撒き散らしている獣人の少女の姿があった。

 当然レイラのことである。




「本当に申し訳ございませんアンナ様。このレイラがすべて間違っていました。アンナ様に嘘をつくなど……思えば私は奴隷という身分を忘れていたのです。今後もう二度とあのような愚行は犯しません。身の程も弁えます。ご飯はその辺の草をたべますし寝るときも床で寝ます。足を舐めろと言われれば喜んでなめますし、気に入らないことがあれば鞭で叩いてくれれもかまいません。ですから……ですからどうかお許しを……」


 とうとう耐えられなくなったのか、レイラは部屋に突入するなり、床に頭をこすりつけ本気の謝罪を始めた。

 一瞬刺されるのかと思って身を固くしてしまったのは内緒だ。

 レイラが何に対して許しを乞うているのかと言えば昨日発覚した嘘についてである。

 彼女はアンナが獣人族の風習を知らないのをいいことにララエラに対して自分はアンナと体の関係があるのだと誤解させた。

 その罰として今日一日レイラとララエラの立場を入れ替えているのである。

 もちろん性別がバレるといけないのでレイラと全く同じようにとはいかないが。


「体罰だとちょっと可哀想だと思ってこういう形にしてみたのですが……むしろこっちの方がキツかったんですかね?」

「シクシクシク……キツ過ぎですアンナ様~~~。このレイラ、これほどの身を裂かれる思いをしたことはありません……シクシク」


 レイラは両手で顔を覆って泣いてますアピールを始めた。最初は本気で泣いているのかと焦ったのだが時折指の隙間からこっちをチラチラと伺っているのでたぶん演技だ。


「ダメですよレイラさん(・・・・・)。ボクの事はアンナ、もしくはアンナさんと呼ぶように言ったじゃないですか。今のボクたちは単なるクラスメートに過ぎないんですから」

「あ゛ぁ~~~~」


 ちょっと意地悪したくなって釘をさしてやるとレイラは突っ伏して呻きだした。こんどのはマジ泣きっぽい。というか苦しみが臨界点を超えて幼児退行が始まっている。

 この罰ゲームはアンナの想像以上にレイラを苦しめているらしい。

 流石にちょっと可哀想になっていたのだが……


「お――っほっほっほ! そんな事をして同情を誘おうとしても駄目ですわ! 今日一日レイラさんはただのクラスメイトとしてわたくしたち主従の蜜月を指をくわえて見なければならないんですわ!」

「被害者その2がお許しにならないみたいなので頑張ってくださいね」

「そんなご無体な゛~」

「わたくし禁断の道を開かせた罰ですわ! これくらい甘んじて受け入れてごらんなさい!」


 鼻水混じりの声で許しを乞おうとするレイラだったがララエラは態度を変えなかった。

 禁断の道ってやっぱり同性愛のことなんだろうか。

 確かに切っ掛けを与えたのはレイラかもしれないが、突き進んだのはララエラの自業自得な気がするのだが。


「お――っほっほっほ! とてもいい気分ですわ!」


 あと高笑いしているのはいいのだが今ララエラは名目上アンナの奴隷という立場だということをわかっているのだろうか?

 単なる遊びの一環と言ってしまえばそこまでだが、それでいいのか金狐族族長の娘(プリンセス)


「さ、アンナ様。今日はフラッグハントの授業がありますわ。アンゼリナさんを完膚なきまでに懲らしめるための作戦を立てましょう!」


 まるでお姫様に傅く従者ようにアンナの手をとりベッドから下ろしてくれるララエラ。

 高潔な金狐族のお姫様は同時に即落ちのチョロインでもあったようだ。





++++++





「ではこれからフラッグハント公式戦出場に向けて話し合いを始めようと思う」


 再びフラッグハントの授業が始まりアンナたちのチームは新たにララエラを加え作戦会議を始めた。


「……と思うんだけど、彼女はそのままにしていいのかな? アンナさん」


 気まずそうな表情でこちらに視線を投げるミルチャ。

 アンナはただ苦笑いを返すしかなかった。


「シクシク……シクシクシク……」


 車座になって向かい合っているチームのみんなから外れて、レイラは少し離れた場所に体育座りをして地面にのの字を書いていた。

 まるでチームからはぶかれた可哀想な子である。

 だがそれは他の男子連中が意地悪をしたわけでもないし、アンナやララエラがそれを命じたわけではない。

 レイラの罰ゲームはあくまでレイラとララエラの立場を入れ替えるだけのものなのだから。


「レイラさん。いつまでもいじけていては話が進みませんわ。こっちに来て下さいまし」

「……だって、アンナ様のとなりに座れないんです……。なら、座る意味なんてないじゃないですか……」


 話し合いのため座ろうとなったとき、ララエラは嬉々としてアンナのとなりを占有した。

 それも、いつもはレイラの指定席であるはずのアンナの右側に。そして立場を入れ替え中のレイラにはそれに対して抗議することはできなかった。

 ただ世界には左右という概念が存在する。だから定位置は苦汁を飲んで諦めなければならないにしても本来ならララエラと逆側にレイラが座れるはずだった。

 だがそこで思わぬライバルが現れたのだ。


「あの……プリシラ、どいたほうがいいの……?」

「い、いえ。プリシラちゃんは気にすることはないですよ。ちょっとあのお姉さんが大人げないだけですから」


 それが現在アンナの左手に座っているウェーブの掛かった青髪の可愛らしい少女プリシラである。

 ララエラがアンゼリナと戦った際、盾代わりとして無理矢理出場させられていた子だ。

 その時助けてもらったお礼としてアンナチームのマネージャーになってくれるらしい。

 ちなみに御年9歳。

 泣く子も黙る正真正銘の幼女である。


「えへへ。じゃあプリシラもっとアンナさまとくっつの~」


 ぎゅっと抱きついてくるプリシラちゃん。

 うん。とっても可愛い。

 レイラの意思を尊重してこんな可愛い子を退かせるのは鬼畜の所業というものだ。

 レイラには悪いが罰ゲームの一環として我慢してもらうしかない。


「あと様はいりませんよ。同級生なんですから」

「じゃあアンナお姉ちゃん?」

「み……魅力的な呼び方ですがそれならまだ様付けのようが安全な気がします。というか普通にアンナかアンナさんでいいですよ」


 前世で兄弟のいなかった自分にとって妹という存在は非情に心ときめかせるものがある。

 だがお姉ちゃんという呼び方を受け入れることはできない。

 本来自分は『お兄ちゃん』と呼ばれなければならない存在なのだから。

 これ以上男としてのアイデンティティーを捨てるわけにはいかないのだ。

 同じ理由でちゃん付けも極力やめてほしいのである。


「じゃあやっぱりアンナさまにするの」


 呼び捨てやさん付け案はスルーされたようだ。


「うぅ……その呼び方は私だけのものだったのに……」

「残念ながら今のあなたはそれすら許されませんのよ? というかさっきどさくさに紛れてアンナ様と呼んでませんでしたか? 訂正する必要がありますわ」


 ララエラ、意外に容赦がない子。


「ほら言うんですわ!」

「うぅ……アンナさ……ん…………ま」

「なんですかその魚っぽい呼び方は……」


 レイラのささやかな抵抗により新種の秋刀魚が誕生した。


「しかしこんなことしてても話が進みませんからね。プリシラちゃん、ボクの膝の上に座ります?」

「すわるの!」

「そっ――それならわたくしが!」

「いえ、ララエラさんは無理ですからね?」


 ララエラはアンナより二回り以上大きいのだ。膝に乗られたら潰れてしまう。

 結局ララエラがアンナの右、レイラが左、プリシラが膝の上という配置で決着がついた。


「うぅ……失って初めてこの温もりの大切さに気づくなんて……私は本当に愚かでした」

「人を死んだみたいに言わないで下さい……」


 話し合いが始まる前にアンナは酷い疲労感を味わった。




「現状でまず問題となるのは誰が出場メンバーになるのか、だね」

「俺らとしてはみんなで出たいんだけどな」

「悔しいがアンナ殿もレイラ殿もララエラ殿も我ら男連中よりも遙か手練れ。不甲斐ない我らの誰かが譲るのが道理だろう……」

「いいよ……いてもいなくても変わらない僕が消えればいいんだ……」


 なんとか話し合いが始まったのだがやはり最初に問題となったのがこれだった。

 フラッグハントの出場人数は6人で補欠は認められていない。

 現在アンナのチームはミルチャ、フレッド、グリッドにペネル、そしてアンナとレイラに新たに加わったララエラを入れて7人。

 確実に一人あぶれてしまうのだ。


「ですが後から入ってきたのはボクたちの方ですから初期メンバーを押しのけるなんてことはしたくありません」

「そう言ってもらえると嬉しいんだけど……」


 ミルチャは申し訳なさそうにしながらもアンナの提案を明確に断ることはしなかった。

 実力不足は自覚してはいるが公式戦への出場は彼らの将来を大きく左右するものなのだ。そう簡単に譲れるものではないのだろう。


「申し訳ないですがわたくしも譲れませんわ。公式戦優勝にはわたくしたち金狐族の未来がかかっていますから」

「ということはボクかレイラかのどちらかが抜けないといけないわけですが……」


 アンナの出場目的は中等部、あるいは高等部にいるであろうエルヴァー王国の王女セフィーネの目に触れることだ。

 コルト村消失の現場に立ち会ったであろう彼女はそこに生き残りが、しかも顔見知りの相手がいるとわかれば必ず接触を図ってくるはずなのだ。

 そういう意味ではアンナとレイラ二人ともセフィーネに面識があるためどちらが出場しても目的は達成できると考えられる。

 ただ問題なのは戦力だ。

 レイラもそこそこ魔法は使えるし、しかも獣人としての高い身体能力があるのだがそのポジションはまるまるララエラと被っている。

 対してフラッグハントのフィールドを覆う魔法障壁を突破するほどの魔法を放てるアンナの力は唯一のものだ。

 必然的にみんなの視線はレイラへと集まった。


「え……? なっ――なんですかみんなして私の方を見て! まさか私なんですか!? 今日だけでなくこの後フラッグハントを行っている間中ずっとアンナ様から引き離されるんですか!?」

「悲しいけどどうしようもないことです。仮にあなたを出場させてあげたならボクが辞退しなければなりません。ボクたちは一緒になれない運命なんです」

「いっしょに……なれ……ない……」


 レイラは魂が抜けたように真っ白に燃え尽きてしまった。

 両目からははらはらと涙がこぼれ落ちる。

 突いても反応しないのでどうやら本気で悲しみに暮れているらしい。


「さ……流石に可哀想ですわね」

「ですね。ボクも心が痛いですし……お仕置きに関してはここで終わりにしてあげましょうか」

「そうですわね」

「……………………本当ですか?」


 レイラの瞳に僅かばかりの光が戻った。


「はい。今を持ってお仕置きは終了です」

「アンナ様とお呼びしていいんですね?」

「はい。何度でも呼んでください」

「また一緒の部屋で寝てもいんですね!」

「はい」

「ではではいつもみたいに愛の籠もったチューをしてくれるんですね!」

「勝手にありもしない習慣を作らないでくださいね?」


 またララエラに勘違いされてはたまらない。

 もう手遅れという気がしないでもないが。


「でもしばらくは退屈を強いてしまいますからね。これはその埋め合わせです」

「? ――ひゃっ――……………………」


 そっと前髪をかき分けておでこに唇を当ててやると可愛い悲鳴を上げたきりレイラは固まった。


「…………え? えっ……これは……夢……ですか?」


 顔を真っ赤にして両手をほっぺに当てながら狼狽えるレイラ。

 自分から言ったくせにそこまで驚かないで欲しい。

 こんな乙女な反応をされるとやったこっちが恥ずかしくなってしまうではないか。


「いいなぁ……」

「……わたくしにもしてくれて構いませんわよ?」


 それを見たプリシラとララエラが羨ましそうな視線を向けてくるけど恥ずかしいので聞こえないふりをする。


「お……俺も」

「ん? 今何か言いましたか、フレッド君」

「なっ――何も言ってねえぞ!!」


 約一名男子も混じっていたのでそっちにはお約束の返事を返して釘を刺しておいた。

 薔薇の道、ダメ。ゼッタイ。




「では出場選手はそれでいいとして、次は僕たちが公式戦に出られるかどうかだね」


 すっかり横道にそれてしまっていた話の流れをミルチャが戻してくれた。

 こういう時まとめ役の彼は頼もしい。


「確か初等部から出られるのは一チームだけなんですよね」

「うん。座学が多い初等部は中等部や高等部と比べて実力差が大きいからね。一番強い1チームだけって決められてるんだ」

「一番強いって言うのは授業で行った試合の戦績の高い者という意味ですわ。それで言うと現在トップはロリデベルトのチームですわね。確か10勝1敗ですわ」

「対してこちらは7勝2敗。勝率でも試合数でも負けているのが現状だね」

「ならロリデベルトたちを10回くらいボコればいいんじゃねえか?」


 初等部最強だったはずのチームをまるで雑魚モンスター扱いするフレッドだが、その場合ボコるのはアンナの役目になるのだろう。

 弱いものイジメのようで気は進まないがみんなの未来のためならば仕方ない。

 ロリデベルトは犠牲になるのだ。


「いや、それはたぶん不可能だと思う。公式戦出場枠選考中に同じ相手に戦いを申し込んだ場合、2戦目以降は相手に拒否権があるんだ」


 まあそれはそうだろう。弱い相手との連戦を認めてしまうと簡単に勝率100%を得られてしまう。


「つまり彼らにしてみればわたくしたちの挑戦を拒否して、他の相手に勝ち続けていれば出場は確実だということですわね」

「う~ん。これは困りましたね」


 すでに勝率でこちらを上回っているロリデベルトたちにとって勝率を下げるだけの勝負をするメリットは何もない。

 そしてその手法をとられてしまったらこちらに挽回のチャンスは訪れないことになってしまう。


「あ……あの」

「どうしましたか、プリシラちゃん?」

「ロリさんたちのことだけど……」

「何か知ってるんですか?」

「うん。あの人たち公式戦出場は辞退したの。自分たちは、ははなるようじょに出会えたから戦う必要がなくなったって」

「ハハナルヨウジョ? 聞き慣れない言葉ですわね?」

「プリシラにもわかんないの。でも公式戦には出ないの」


 意味的に考えれば『母なる妖女』が正しいように思えるが彼らの場合、間違いなく『母なる幼女』を意味しているのだろう。

 幼い女の子に母性を求めるとはなんとも罪深い性癖である。


「確かに今まで一度だって欠席したことのなかった彼らの姿を今日は見ていない。とすればその話は本当なのか……? でも一体そんな情報どこで?」

「あの人たちは危険だからって女の子の間で動きを見張ってたの。女の先生も協力してくれてるからそういう話も聞けるの」


 恐るべき女子ネットワーク。


「となるとわたくしたちかなり良い線いっているのではありませんか?」

「そうだね。勝率で言えば並ぶところはあるだろうけど、これ以降負けることはまずないだろうし」

「ならあとはアンゼリナの奴の妨害に気をつけるだけだな!」

「ああ……その可能性もありましたね……」

「あの……それもたぶん大丈夫なの。あの人は王子様のチームの一員として出るのが決まってるから。むしろアンナ様には公式戦に出て欲しいと思ってると思うの」

「そういえば一定水準を超えた初等部の生徒については学年を関係なくチームを組めるって例外があったね。悔しいけど彼女の魔法の才能は本物だ。基準をクリアしていても不思議じゃない」

「とは言ってもアンナには手も足もでなかったけどな」

「ふん、才能はあっても所詮は戦う覚悟のない小娘ですわ。上級生のチームに入れたのは所詮身内びいきですわ」

「でも彼女に気を配る必要がなくなるのはいいことですよ」


 これでさしあたりの懸案事項は消えた。

 あとは着実に勝利を重ねていけば出場は堅いだろう。


「それにしてもプリシラちゃん大活躍ですね。お陰で心置きなく戦えます」

「えへへ、アンナ様のお手伝いができて嬉しいの!」


 有能で可愛いマネージャーさんにはほっぺをぷにぷにしてあげよう。

 ああ……幼女のほっぺ、柔らかい。


「それにしても女の子の繋がりはすごいですね。聞いたらなんでも出てきそうです」

「うん。ロリさんたちやアンゼリナさんのことだったら今日食べたものも昨日寝た時間もトイレに行った回数もなんでもわかるよ」

「……え?」

「あの人たちは特に嫌われてるからみんなすごく調べるの。いつかふくしゅうするために」

「そっ……そうなんですか~」

 

 女子ネットワーク、本当に怖い!

 絶対に女の子たちには嫌われないようにしようと固く誓うアンナだった。

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