見上さんのお父さん
寝ます!
「あ、もしかして……お母さん……お父さんに言ってない?」
「へ?どういうこと?」
見上さんは焦りながら続ける。
「お、お父さん……実は海外視察に行ってて……今日が帰りだったはず……」
「こ、こういう時の流れって……!?」
「はい……お察しの通り父は重度の親バカです。」
「あちゃぱ……」
で?男の家に上がらせて何日間も上げさせたらおわりって話。
マ?
ピンポーン
インターホンが鳴る。
いつもなら何も感じないインターホンも地獄のカウントダウンに聞こえる。
「まっずい!」
「はい……わ、私が出ます!」
見上さんは玄関に向かう。
俺もそれに同行する。
「だ、大丈夫かな……?」
「う、うん……私が取り次いでみる!」
見上さんは強く意気込む。
俺はその意気だと言って見上さんを勇気づける。
そして、見上さんが扉を開ける。
「お、お父さん——」
「見上!大丈夫だったか!?なにもされてないか!?」
おっふ……予想通り……
「ちょッ!お父さん!やめてよ!蘭葉くんの前で……」
「ら、蘭葉くん……?」
抱き着いていて周りに気づかなかったのか俺を凝視する。
スーツを着こなしていて大人な人感が漂っている。
しかし、見上さんに抱き着いているせいで台無しだ……
普通の成人男性くらいの身長で威厳はないが……オールバックの髪型だ。
「は、初めまして。見上さんのクラスメイトの学 蘭葉と言います!よ、よろしくお願いします!」
俺がそうあいさつすると見上さんのお父さんは俺をなめまわすように見てくる。
それを見た見上さんがお父さんを止める。
「ちょっとお父さん!?失礼でしょ!?仮にも社長なんだから……」
「あはは……ごめんごめん……」
しゃ、社長!?
俺がうろたえていると、見上さんは補足をする。
「あ、言ってなかったね!お父さんはメンテナンストラビレルトの社長。渡辺 次郎。
でも社長だからって敬ったりとか礼儀とか気にしなくていいからね!」
へ?メンテナンストラビレルトって……
蘭葉には心当たりがあった。
そう、テレビゲームや電子機器製作会社の最大手。
俺でも知っている会社である。
「ま、マジですか?」
見上さんのお父さんは言う。
「ああ、メンテナンストラビレルト、略してメントラ。その3代目社長がこの俺だ。」
「あの……お世話になってます。」
「お?君もうちの電子機器を買ってくれているのか!ありがたいものだ……それより……
うちの娘になにかしていないだろうな?」
お?殺気か?おいおい……俺に殺気で挑むとは……
いい度胸してるじゃねぇか?あ?
「なッ!?」
俺は殺気を殺気で相殺する。
さらに俺の殺気を強め、お父さんに示す。
「は、はは……意外と……侮れんものだ……」
次郎さんは俺に感心したような目を向ける。
「どうです?見上さんに釣り合うくらいの……男ですよね?」
俺は語尾に怒気をつけ返す。
「あ、ああ……」
「ちょっと?二人で何の話をしてるの——お?おっさんじゃないか?」
その時、見上さんからマナに切り替わった。
「あ!やば——」
「お?マナに切り替わったのか……」
へ?二重人格のことを……知っている?
第88話終わり
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