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その69.5 ロレリア民話『或る巫女と宝珠』

 比喩のようなネタも多いので、文面通りに受け取らないようご注意ください。

 

 

 

 昔々のお話です。

 その少女は天上の神の御使い様であらせられました。

 少女の名は、セシリア。タンポポの蕾より生まれ出でた尊き御方と言われています。


 セシリアは貧しい農村で育ちましたが、幼い頃より聡明でした。

 幼少の身でありながら農作業を理解し、とてもよく働いたと言います。

 更に勤勉で何事にも興味を示し、すぐに読み書きを習得しました。同じ年頃の子供、いいえ、大人でさえ、彼女に勝てる者はいなかったでしょう。


 セシリアは貧しい村のために様々な発明を提案しました。

 まずは農機具の改良。現在のロレリア、いいえ、フランセールで使われている鍬の原型を作ったのは、セシリアだと言われています。

 これによって作業効率が上がり、農地の開拓も飛躍的に進みました。ロレリア地方が肥沃の地と言われるのは、彼女の功績によるところが大きいでしょう。


 一番の発明は水車だと言われています。

 水を動力とした仕組みは古代にもありましたが、遠い異国の話です。フランセールには根づいていない知識でした。

 セシリアはどこで知ったのか、その仕組みを利用して、麦の製粉を提案しました。

 パンを作るためには、麦を粉にする必要があります。動力として、水車は大いに活躍しました。今では、水車のある風景も珍しくはありません。


 また、仕事の効率をあげるために、組合が作られます。

 それまでは農家が各々収穫して製粉していました。しかし、一括でまとめて収穫し、作業場で製粉を行う方が大量の小麦粉を作ることが出来るのです。


 セシリアの活躍で、ロレリアの地は一気に豊かになりました。

 やがて、人々は少女のことを神の使者だと噂します。その噂を聞いたロレリアの領主が、彼女のことを妻として娶ることになりました。

 聡明で美しい少女は、領主の妻となっても、その才を発揮し続けます。


 あるとき、領主は妻となったセシリアに問いました。


 あなたは、何者なのか、と。


 セシリアは優しく笑うばかりで答えようとしません。しかし、領主の熱意に負けたのか、彼女は堅く閉ざした口を開きました。


 自分は異界からこの世界に生まれ変わりました、と。


 信じられない話です。この世界とは、別の世界があると言うのですから。しかし、これまで彼女が発揮した知識は、一介の農民が得られるものではありません。


 なによりも、彼女は不思議な宝珠を持っていました。

 海のように透明感があり、波打つような光を反射する美しい宝珠。これを使えば、自分は何度も生まれ変わることが出来るのだと、セシリアは領主に告げました。

 領主は喜んで、笑って彼女に懇願します。


 それならば、ずっとこの地にいてくれないか。あなたの力が必要なのだ、と。


 セシリアは困惑しましたが、やがて了承しました。

 しかし、彼女は条件をつけたのです。


 これは禁忌の技です。決して口外してはならないし、誰にも使わせてはいけません。生まれ変わるわたくしの存在は、この地で秘匿してください、と。


 こうして、不思議な宝珠はこの地で神の石として秘匿されることとなりました。

 セシリアの魂は、永遠にロレリアの地に留まり続けるのです。きっと、これからも永遠に、変わることはないでしょう。



 これが、ロレリアに伝わっていた巫女と宝珠の伝承です。

 今では伝承の記憶も失われ、覚えている者は数少ないでしょう。真実かどうかも、今となっては不明でございます。

 ただ、ロレリア領主の家系には、今でも「セシリア」という名の女性が生まれ続けているのだそうです。

 

 

 

 ネタ提供の鳥好きのピスタチオ様(ID:593566)ありがとうございます! タンポポの蕾から爆誕娘♪


 次回はエミールとユーグの愉快な冒険です!


 活動報告(10/6)にて、人気投票上位キャラ3名分の小話を公開しました!

 ご協力、ありがとうございました。本日の更新は短めだったので、よろしかったら、人気投票小話も併せてお楽しみください♪

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