或る伯爵の告白 前編
リクエストよりエリック・ド・カゾーラン伯爵(イケメンのチャラ男だった頃)の番外編です。長くなりすぎましたので、前後編で分割させて頂きました。
本編に絡む伏線もガッツリ張ってあります。
前世の記憶は長い長い夢のようなもの。
けれども、あいまいではなく、はっきりとした実体験のように、思考と切り離すことは出来ない。
それは、時にゆりかごのように優しく、時に冷酷に蝕む諸刃の剣。
物心ついた頃、エリックは棒切れを振り回して剣の稽古をしていたという。その構えや太刀筋が既に完成されていたことで、周囲の人間は驚いたらしい。神童とも呼ばれた。
カゾーラン伯爵家は軍務とは縁遠い典型的な文官家系であった。数々の高官を輩出する内政向きの血筋。
そんな家に生まれたエリックの存在は青天の霹靂であっただろう。
息子の才に気づいた父は、すぐに王宮の国王シャルル二世に我が子を売り込んだ。軍務経験の浅いカゾーラン家で育てては才が潰れると判断したのだろう。
エリックは代々の軍人家系であるバイエ伯爵の邸宅で養育されることになった。
彼が十八になった頃、国王シャルル二世が崩御。
新国王として即位したのは十七歳のアンリ三世であった。これを機に、各国がフランセールの領土を掠め盗ろうと継承戦争が勃発する。
この頃から、父カゾーラン伯爵の体調も思わしくなくなり、エリックが実質の当主のように振舞っていた。
近衛騎士として任を受け、更に、若くして王族守護を司る≪天馬の剣≫に任命される。王国最強の一角と呼ばれるまで、二十年とかからなかった。
前世の自分は女人だったが、強い騎士に憧れ、鍛錬を欠かさぬ人物だった。
その記憶を持って生まれただけだ。それがなければ、凡庸な文官に終わっていたかもしれない。
時々、そう思った。
「では、こうしてみては如何か」
フランセールに強いられた継承戦争は未だ続き、熾烈を極めていた。
北からはロレリア侯爵領を狙ってエスタライヒ帝国が、南からはサルーニャ王国、東方ではオルマーン帝国が挟むようにフランセールを攻めている。フランセールの同盟国は海を渡ったアルヴィオス王国のみで、支援は遅れがちだ。
更にこの局面で、中立を貫いていたミュンゼル公国が一万五千の軍を率いてエスタライヒに加担した。
四面楚歌のフランセールにとって、手痛い事態だ。早急に動かせるのは、わずか三千程度の兵しかいない。
「ここに兵を二千置いて、ミュンゼル軍を待ち受けましょうぞ」
長い指を使って、エリック・ド・カゾーランは軍用地図を指し示した。均整のとれたしなやかな肢体を包む純白の制服が衣擦れの音を立てる。
指示された位置が、フランセール国境の遥か内側であったことから、戦術を聞いていた将たちが眉を顰めた。軍務に関してはほとんど口を出さない国王アンリでさえ、納得いかない表情だ。
「カゾーラン、それは敵軍に国境を越えさせるということか」
「如何にも」
アンリの問いに、カゾーランはアッサリ答えた。そして、人好きのする甘い顔に好戦的な笑みを浮かべる。
齢二十一で伯爵位を継いだばかりの青年は、無駄のない動作で更に指を地図上に滑らせた。その軌跡は、まるで絵を描くように迷いがない。
肩から、緩く結った赤毛がこぼれる。
「残り千の兵で、ミュンゼル軍が国境を越える間に首都ミンガを落とすのです。ミュンゼルはこの侵攻に兵力のほとんどを投じたはず。首都には最低限の兵力しか残されておらぬでしょう」
この発言に、誰もが開いた口を塞ぐことが出来なかった。その発想がなかったとばかりに、顔を見合わせている。
「敵が気づいて引き返すのでは?」
「逆に好都合。ミンガへ向かわせた千の軍と、囮の二千で挟撃する。途中の山岳地へ追い込めば、こちらの方が有利であろう?」
カゾーランは更に地図を指先で叩いて示した。ミュンゼル軍がミンガへ帰る最短経路には、道の細い山岳地が含まれている。急いで首都へ帰るのならば、ここを選んで通るはずだ。
「我々のミンガへの進路はどうする」
アンリだけが深く考え、更なる発言を求めた。カゾーランは得意げに笑って地図に視線を落とす。
「ソニア領を通ればよろしいかと。ソニアは中立国だが、毎回サルーニャ軍の進路に使われております。鬱憤が溜まっていても、おかしくありますまい」
「なるほど、交渉次第では、こちら側に引き込めるか」
カゾーランの策を聞いたうえで、アンリが思案をはじめる。
即位した頃は戦術も政も臣下の意見をそのまま採用することが多かった国王。だが、もう王位に就いて三年になる。特に王妃を娶ったこの二年は、細事に渡って口を出すようになっていた。
「では、ソニアとの交渉はバイエ伯爵に任せたい。待ち受ける二千の軍の指揮は、サングリア公の子息に。ミンガへはオーバンを向かわせる。帰還命令を出しておこう」
アンリが即座に指示を与えていく。だが、カゾーランはやや納得いかない表情でアンリを振り返った。
「クロードは今、北方の戦線におります。わざわざ呼び戻すよりは、このカゾーランが……」
「思いあがった小国の鼻を折る役目は、皆が恐れる首狩り騎士の方が適任だろう?」
一理あるが、解せない。だが、アンリはそれ以上の発言を認めないと言いたげに、カゾーランから視線を移した。会議もその方針で納得したように、解散の流れだ。
「そなたは、少し休め。カゾーラン」
その段になって、カゾーランはようやく自分が見透かされているのだと気づいた。
会議を終えると、緊張から解放される。
だが、問題はまだ山積みだ。一つ処理しても、また湧き上がってくるだろう。
「ふふ、リュシィったら」
「いいえ、セシリア様。とっても、お似合いです!」
アンリの伴で歩いていると、華やいだ女人の声が聞こえてくる。見ると、庭園に備え付けられたベンチに腰かける二人の姿が見えた。
一人はセシリア王妃。麦穂色の髪に小菊の花冠を載せて、楽しそうに笑っていた。
彼女が嫁いで二年経つ。すっかりと王都の暮らしに慣れたようで、庭で花を愛でる姿をよく見るようになった。未だに子を成せないことで風当たりが強いこともあるが、彼女は意に介さないようだ。
もう一人の女を見て、カゾーランは目を背けた。
だが、向こうの方がこちらの存在に気づいてしまう。
「あ、エリック!」
見つかってしまった。
カゾーランは項垂れながら、無視しようと足を速める。しかし、愛妻の姿を見つけて、アンリが足を止めてしまった。こうなると、自分も立ち止まらないわけにはいかない。
「エリック、もう会議は終わったのですか?」
柔らかい亜麻色の髪が揺れる。
十八という年齢にしては、あどけない無邪気さを持った瞳が笑みを描いた。白い頬も丸みを帯びており、愛らしい少女のように見える。
リュシアンヌ・ド・バイエ。カゾーランが幼少期を過ごしたバイエ伯爵家の令嬢であり、いわゆる、幼馴染。
そして、婚約者でもある娘だ。
「……陛下の御前だ、その呼び方は慎むべきであろう。私はもう伯爵なのだぞ」
「そんなに畏まらなくても良いではありませんか。そろそろ結婚してくれるのでしょう?」
「だから、その話は今ここでは――」
「だって、お屋敷にもなかなか帰って来ないではありませんか」
リュシアンヌは白い頬を子供っぽく膨らませて、カゾーランを睨む。
ああ言えば、こう言う。そんな問答に正直嫌気が差してきた。
顔を合わせれば、結婚を迫ってくる婚約者。正式に伯爵位を継いでから、更にその攻撃は激しくなったと思われる。
最近は、こんな風に待ち伏せしていることも多い。セシリア王妃と一緒にいたのも、カゾーランが逃げられないようにするためだ。
なんとか切り上げたいと思って、カゾーランはアンリの方を見る。
「セシリア、その花冠はそなたが作ったのか?」
「いいえ、リュシィが作ってくれましたのよ」
「そうか、そうか。バイエ伯爵令嬢に報償を与えたいくらいだな。いや、むしろその花冠が羨ましい!」
「まあ、アンリ様ったら。さりげなく、人前で恥ずかしいことを」
自然な動作でセシリアの頬にアンリが口を寄せる。だが、セシリアはなにかが気に入らなかったのか、アンリの顎に綺麗なアッパーを決めていた。よろめいたところに追い打ちの足払いが入る辺り、実に抜け目ない。
公の目がない場所では、割と日常的な光景となりつつある。
夫婦の営み(物理)をはじめてしまった両陛下に助け舟は期待出来そうにないと悟った。
「ほら、エリック。陛下たちは、あのように仲睦まじいではありませんか。あたくしたちも、さあ!」
「あのような暴力的な夫婦など、御免であるぞ!?」
リュシアンヌはぷりぷりと目くじらを立てながら迫ってくる。それに気圧されるように、カゾーランは一歩二歩と後すさった。
「昔はすぐに結婚しようって言ってくださったのに。バイエを出るとき、言ったではありませんか。此度の戦から帰ったら、結婚しようって! 子供の顔が早く見たいって! 必ず帰ってくるって!」
そんなことを言ったのは、確かだ。
「あたくし、ずっと待っていますのに! もう十八ですのに!」
「ぐ……落ちつかぬか、リュシアンヌ」
十八と言えば、結婚適齢期と言っても行き遅れの部類に入る。その歳になっても婚約者がいなかったり、結婚の予定がない令嬢は、世間ではあまり良い顔をされない。本人に欠陥があるのではないかとレッテルを貼られてしまうこともある。
「どうして、前みたいにリュシィと呼んでくださらないの、エリック?」
寂しそうな表情を向けられて、カゾーランは打ちのめされている気がした。
婚期を延ばしているのも、リュシアンヌを避けているのも、完全にカゾーランの都合だ。
そして、恐らくそれは説明したところで理解されない。逆にリュシアンヌを傷つける結果になるだろう。
わかっているから、尚更のこと口には出来なかった。
「では、公務に戻るとしよう。行こうか、カゾーラン」
蹴り倒されて打ちつけた腰を摩りながら、アンリがカゾーランの肩を叩く。カゾーランは小さく返事をして、アンリに従ってその場を去った。
あどけなさを残す瞳に涙を溜めたリュシアンヌの姿が頭に焼きついた。
† † † † † † †
アメリアという娘がいた。
下町で宿屋を営む町娘。働き者で器量が良く、誰にでも愛される看板娘だった。
趣味は武術を嗜むこと。
どこで覚えたのか、娘は剣術の基礎を習得していた。腕の立つ宿屋の客に目をつけては、夕飯と引き換えに手合わせを願うことが日課だった。
「お嬢ちゃん、筋が良いね」
三月に一度ほど、宿屋を利用する客がいた。商売を営んでおり、羽振りの良い客だ。名をジャリル・アサド。異国の衣装を纏い、ラクダという不思議な動物を連れていた。東のオルマーン帝国の向こうに広がる砂漠から来たらしい。
剣筋は独特だが、腕はすこぶる良い。如何わしい商売もしているらしいが、アメリアは彼に教えを請えば学ぶことが多いということを理解していた。
「ジャリルさんは、なにをしにこの国へ?」
「あん? あー……東方の珍品とやらを、王侯の皆さまにデリバリーってヤツ? あと、ちょっとした調べ物さ」
「でりばり?」
「宅配ピザ的な!」
「ぴざ?」
「もういいよ。ごめん、無視して無視して! くそぅ、こっちの言葉イマイチ慣れねぇなぁ」
きっと、異国の言葉なのだろう。客と話をしていると、いろんな知識がつくので、アメリアも楽しかった。
「そんなことより、アメリアちゃんは、なんで剣術やりたいワケ?」
唐突に、聞かれたことがあった。アメリアは考える間もなく、こう答える。
「わたし、強くなりたいんです」
「それは、なんで?」
「守るため」
自信満々に答えて、アメリアは強かな笑みを描いた。
彼女には、前世の記憶がある。
騎士階級の令嬢に生まれ、剣を学んだ前世。そして、戦争に巻き込まれて呆気なく命を落とした最初の前世。
「あたしはただ、理不尽に奪われることには耐えられないんです」
なんの非もなかった。なにも悪いことなどしていない。ただ日々の暮らしに感謝しながら、平凡な日常を送っていた。それなのに、理由のない暴力で呆気なく奪われてしまった最初の人生。
そのことが彼女の中に深く根付き、強さを求めていた。
もっともっと、強くなりたい。そして、前世のように無為に奪われてしまう命を無くしたい。大切なものを自分の力で守りたい。
「ハッハー、それは随分と大きな願いだよね」
「そうですか?」
アメリアがキョトンと首を傾げていると、商人はフッと笑みを作った。歳若い青年のくせに、時々、悟った翁のような威厳を見せることがある。これが「戦う人間」なのだと、アメリアは本能的に知っていた。
「よく覚えておくと良いよ、アメリアちゃん。守ることの代償は、奪うことだ」
意味がわからない。矛盾している。
アメリアは眉を寄せた。
「よくわからないわ」
「そのうちわかるさ。まあ、オレみたいな悪人には、眩しい志だと思うよ。テンションあげてがんばってね~☆」
「てんしょん?」
あたしは、ただ守りたいだけ。そのために充分な強さが欲しいだけよ。別に奪いたいわけじゃない。傷つけるつもりなんてないわ。むしろ、逆よ。
アメリアには、商人の言葉が理解出来なかった。
その翌年、アメリアは死んだ。
無意味に税を高めようとした領主に抗議する一揆に参加し、弾圧されたのだ。男のように鍛えた彼女だったが、所詮は女。私兵の数に押し切られてしまった。
そして、最期の瞬間まで、アメリアは商人の言葉を理解するには、至らなかった。
――守ることの代償は、奪うことだ。
その言葉の意味を理解したのは、アメリアとしての生を終え、エリック・ド・カゾーランとして生きるようになってからだ。
初陣だった。
この頃から父の体調が思わしくなく、自分が伯爵家を背負わなければならないという意識が強まっていた。周囲は彼をあまりエリックと呼ばなくなり、自分でも姓を名乗るようになっていたと思う。
伯爵家の嫡男、そして、侵略軍から祖国を守る騎士として、カゾーランは戦場に立った。
フランセールに降りかかった継承戦争の原因は即位したばかりの国王が若かったことにある。政権を握る強力な宰相もおらず、後ろ盾がない。そのような理由だ。
フランセール側に非はなく、防衛戦がほとんどだ。
奪うための戦いではなかった。
彼は前世で望んだとおり、守るために戦ったはずだ。
それなのに、だ。
「――寒い」
何度同じ言葉を呟いたことか。
初めて戦に出たときから、震えが止まらなくなることがある。堪らない寒さを覚えて、どうしようもない。
戦うときは熱い。
気持ちが高揚し、馬上で揺られるうちに体温が上がる。鼓動が跳ね上がり、四肢まで力が漲る。刃を振り降ろせば生温かい血潮が己に降りかかり、耳障りな断末魔の叫びを聞くうちに視界が狭くなる。
目の前の敵、眼前に広がる戦場、現在繰り広げられる戦況。それだけが抽出されたように視界と思考が限定される。頭が妙に冴え渡り、いつもより判断力が数倍に跳ね上がるのだ。
この感覚に餓えていたように、迸る熱に酔う。熱さを求めて、戦場を駆け巡った。
しかし、戦が終わると、途端に寒くなるのだ。
先ほどまでの熱も、鼓動も、高揚感も、全て消え失せる瞬間。視界が開け、思考が回りはじめる瞬間。
酷く冷静になった状態で戦場を見渡す瞬間に、カゾーランは寒気を覚えた。
あんなに熱かったのに。あんなに高鳴っていたのに。あんなに昂っていたのに――気がついたら、自分の纏っていた熱気は消え失せて、寒さだけがそこに残っていた。
人を殺した罪悪感?
そんなものではなかったと思う。
ただ、そこに転がる理不尽を作り出していたのが自分だと気づいてしまった。自分にとっては理由があった。意味があった。守るために戦った。
だが、奪われた側にとっては――自分の前世と同じように、奪われてしまった側があるのだと、そのとき気がついた。
寒かった。寒くて仕方がない。
いくら着込んでも、身を擦り合わせても、寒さは退かなかった。手が冷たい気がする。腕が凍りつく気がする。眠っている間に体温が下がり、そのまま死んでいるのではないか。
三度も味わった死の感覚がじわりじわりと歩み寄って来るようで、耐えられなかった。
「もう……相変わらず手が早いのね」
くすぐったそうに笑う声音が転がった。
この声は誰だったか。思案しながら顔を確認して、ようやく、相手の名前を思い出す。
無造作に肩を抱くと、じわりと相手の熱が伝わってくる。自分の抱える寒さが薄まる気がして、カゾーランは思わず目を閉じた。
いつしか、カゾーランは目につく女に声をかけるようになっていた。人の体温に触れていると、自分の寒さが消えていく気がする。
知らず知らずのうちに、前世の充足感に逃げたかったのだと思う。昔から、なんとなく女性と一緒にいる方が落ち着いた。たぶん、それは自分の前世が女だったからだと思っている。
バイエ伯爵家にいた頃もそうだ。ついリュシアンヌや、その姉たちと会話して、前世の余韻に浸っていた。
リュシアンヌ。
彼女のことが頭に浮かんだ瞬間、胸の内を罪悪感と嫌悪感がじりじりと占領していく。
最初は、少し会話をして手や肩を握らせてもらえるだけでよかった。多少の充足感と、手の冷たさを解消出来れば満足出来たのだ。
けれども、少しずつ……戦に出るたびに触れる回数が増え、求める回数が増え――。
全く情けない話だ。男に生まれたというのに、女々しい。
リュシアンヌとは親同士が流れで決めた婚約だ。バイエ家で養育を受けるときから、ほぼ決まったようなものだった。
それでも、彼女のことは好いていると思う。
初陣の前に臭い台詞を吐いて結婚の約束をする程度には……いや、たぶん、好きだ。少なくとも、ただ心を落ち着けるためだけに触れ合っている他の女などより、何百倍も大切に思っているつもりだ。
だから、結婚は出来ない。
こんな自分と結婚させたくなかった。
一時の充足を得るために、彼女を利用しようとする自分が、許せなかった。
「あら、どうかしたの?」
目の前の女が不思議そうに顔を覗き込んでくる。頬に触れられ、初めて自分が涙を流していることに気づいた。
感情がそこまで昂ったつもりはないのだが……どうも、自分は隠しごとに向かないらしい。策を考えるのは得意だが、駆け引きはすこぶる弱い。すぐに感情に流されて、見失ってしまう。
「どうもせぬ」
誤魔化すように呟きながら、カゾーランは女の顎に手を触れた。
そして、熱を貪るように、奪い取るように、唇を塞ぐ。
後編に続きます!




