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流浪荘の管理人  作者: 中酸実
第四荘 売れっ子作家の秘め事
29/33

第一室 編集者の依頼

お久し振りです・・・ほとんど失踪に近い中酸実でございました(過去形)

取りあえず、他の小説を書こうかと思いましたけども流石に長編一つも書きおわってない状況で新たに書くのはどうかと思いまして。低いモチベをフル動員して何とか書きました。

活動報告の方も書こう書こうと思っておきながら結局は書けてないです・・・申し訳ない。

溜まっていた感想返信を頑張りますので、この章も楽しんで頂ければ幸いです。

 薄いピンクの花びらが舞う四月、この季節が特別なのは世界を渡ろうともこの国にとっては変わらない事の様だ。何処(どこ)が満開か?とか何処が穴場か?等、付けっぱなしのテレビはひっきりなしに報道する。


「さて・・・と、これでいいかな」


 桜の季節の鼻歌を交えながら料理をを盛り付ける。

 今日のお弁当はお手軽サンドウィッチだ。最近、仕事が忙しいと愚痴(ぐち)(こぼ)していたのでそこの配慮からの献立(こんだて)

時間は朝の8時前、そろそろ来る頃かな。

 え?『一人暮らしだから弁当なんていらないだろ?』だって?

 ああ、これは・・・


 ピンポーン


 と玄関のチャイムが鳴る。


「はいよ~」


 包み終わった弁当を手に急いで玄関に向かう、出勤前に待たせたら悪いからね。

 玄関を開けると春の陽気が飛び込んでくると同時にサイドテールをした人影が目に映る。


「おはよう、大櫻(おおざくら)さん何時もの弁当だよ」

「ありがとう。いつもすまないさ」


 弁当を受け取りながら、少し申し訳なそうに笑う大櫻さん。

 朝食は・・・流石にお互いしんどいので結局、昼食と夕食を作ることになった。


「好きでやってるからね」

「ぜったい後で埋め合わせするからさ」


 両手を合わせた後、ドタドタと急いで出勤していった。

 これがここ最近の朝の風景、最初の頃は涙を流しながら受け取っていたものだ。

 女性ならわかるが、男性の手料理なんて涙を流すほどの物なのだろか?


「さて、朝ごはんにしますかね」


 朝はご飯党なのだが大櫻さんに弁当の作ったサンドウィッチの余りをかじりながらテレビを見る。

 相変わらず桜に関しての情報がどのニュースでもやっていて、それに付け足すかのように犯罪や政治のニュースが飛び込んでくる。

やはり、いつ見ても女性が男性に(性的な)危害を加える等のニュースは慣れないが。

 しばらくの間、テレビを付けながらゴロゴロとしていたがそろそろ買い物の時間の様だ。

立ち上がって、買い物の準備をしようとしたその時。


 ピンポーンと又玄関のチャイムが鳴る。勿論、来客の予定なんて全然ないし配達を頼んだ覚えがない。

誰だろうと思いつつ玄関の扉を開けると、明るいブラウンの髪をい上げている女性が立っていてって・・・


白崎しろさきさん・・・?」

「よっ、お久しぶり逆水さかみず君。名前を覚えてくれてたか、関心関心」


 本当に思わぬよらぬ訪問者が立っていた。

 白崎さん、白崎 あやは410号室の住人で人気作家である黒原くろはら 百合ゆりの担当編集、明るいブラウンの髪と灰色のスーツがよく似合う女性だ。

 一体どうしたのだろうか・・・


「まア、立ち話は何ですし中へどうぞ」


 玄関で話すのもどうかと思うので部屋に招く。

 先に入ってお茶の準備をしていると。


「相っ変わらず警戒心ないな、そんなんだとすぐに食べられるぞ」


 と、白崎さんにそんな小言を頂きながらもお茶をだす。

 流石にナニを食べるかについては深くは追求しないでおこう。

 この世界にきて約一か月、そんだけ住んでたら嫌でも察してしまうのが悲しい。

 

「で、どうしたんですか?」


 一先ず、要件を聞くことにする。人の部屋を訪ねるんだからよっぽどの事だとは思うのだが。


「いや~、すまんね。わざわざお茶まで出してもらって」

「思ったよりも順応している白崎さんにビックリですよ」


 大櫻さんや友美ともみちゃんだとしばらくキョロキョロしていたが白崎さんは我が家のようにゆったりしてる。

 黒原さんの部屋でもそうだったのでこの人のいつもこんな感じなのだろうか?


「今日はここに来たのは他でもない、黒原についてだ」


 急に姿勢を直して、目を見据えてくる。

 真剣な表情から察するに、よほど深刻なのだろう。

 黒原さんは売れっ子小説家で、かつ極度の引きこもりだ。一般人の俺に何かできることが有ればいいのだが・・・


「一体、何があったのですか?」


 自分も彼女にならい住まいを正して白崎さんを見つめる。


「それはだな・・・」


 ゴクリ


「・・・黒原が籠城ろうじょうした」


 ・・・


「え?」


 今、籠城って聞こえたような・・・


「全く黒原のやつ、いくら原稿げんこうができないからって本気で引きこもるなよ」


 急に姿勢を崩して愚痴ぐちった白崎さんにシリアスな空気がガラガラと音を立てて崩壊する。

 って、話に来たのってそれかよ!!!

 心配して損したというか何と言うか。

 え、と言うことは・・・


「じゃあ、この部屋を訪ねたのって・・・」

「黒原の部屋に入れなかった腹いせ(笑)」


 にやりと人をからかう様な笑みを浮かべて答える彼女、そのあまりのいさぎよさにガックリと肩を落としうなだれる。


「只々、お茶を飲みに来ただけですか・・・」

「ま、他にも要件はあるけどね」


 他の要件とは何だろう?


「さっき言った通り、黒原が籠城したのは承知の上だよね?」

「あ、はい」


 そのせいでこっちにとばっちりを食らったようなものだし・・・


「で、君には交渉人ネゴシエーターになってほしいんだ」


 含みのある笑顔で白崎さんはそう切り出した。


交渉人こうしょうにん・・・ですか」

「そ、交渉人」


 交渉人ってまるで黒原さんが犯罪者みたいな言い方のような気がするのだが。

 大体、黒原さんは原稿が出来てなくて立て籠もっているだけで・・・って、立て籠もっている時点で交渉人が必要なのだろうか。


「はぁ、具体的にはどうすればいいのですが?」


 交渉とかやったことなんてな・・・あ、あったは妹のプリンを食べた時に情状酌量じょうじょうしゃくりょうを貰うためにやったな。

 他にも意外とも思い当たる節はあったりする。


「いや、単純に黒原のやる気出してあげればいいんだよ。簡単簡単」

「簡単って口では言いますけどね・・・」


 言うはやすく行うはがたしなんだよな。


「案ずるよりも産むが易しとも言うだろ?行ける行ける」

「そんなもんですかね」


 そう言うと白崎さんはふと壁掛け時計を見て。


「あ、もうこんな時間、会社に帰らないと。お茶ごちそうさまでした」


 と、あたふたと帰ろうとする白崎さんに、ふと疑問に思ったことを言ってみる。


「そう言えば、どうしてこの部屋って分かったのですか?」


 不思議に思っていたのだ、俺の部屋の番号は黒原さんには言っていたが白崎さんには言っていなかったはずだ。

 なのにどうして、あっさりと俺の部屋が分かったのか?

 この疑問に白崎さんは玄関で靴をきながら応えた。


「ああ、それならここの大家さんに教えてもらったよ。やっぱダメもとでもたずねてみるもんだね」


 と言うや否や玄関を開けて出て行った。


「って、大家さん個人情報!」


 誰もいない部屋に俺のツッコミがむなしく響く。

 あれ?この世界じゃ、男性の住所ってかなり重要な情報じゃなかったの!?



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 203号室から聞こえる声を背に余裕をもって階段を降りる。

 何を言っているかは案外簡単に想像できてしまいクスッと微笑びしょうを漏らしてしまう。


「さて、御膳おぜん立てはして上げたよ」


 聞こえるはずのない相手に向かってつぶやく。

 ユリが閉じこもっている理由はなんとなく想像できてしまう。これでも、まぁ、あいつとは付き合いが長いからな。


 実のところを言うと、前回ユリの部屋を尋ねた時に彼女がこんなことを言っていたのだ。


『最近・・・考え事をしたりすると・・・心臓がキュッてしたり・・・頭がポーってしたりするの』

『へぇ、それって恋なんじゃないか(笑)』

『そ・・・そんなんじゃない・・・よ』


 あの時は茶化ちゃかしたが、思い返してみるとやっぱり恋なんじゃないかって、今の状況がそう雄弁ゆうべんに物語っている。

 当の本人は初めて感じた感情を持て余しているみたいだけどね。そのせいで原稿が書けないみたいだし。

 彼女の担当編集としても私個人としてもこの恋は応援したい。


 恋と言うのは人生の中でもとても大きなイベントだ、その恋をみのらせるために様々な努力や思案しあんをする。

 そして結果がどうであれ・・・その人にとって大きな経験となるのだ。

 小説家と言う職業にとって経験とは武器だ、どんな人生経験するかによって十人十色じゅうにんといろの武器になる。

 今の黒原はそのたぐいまれなる文章能力で読者を引き付けている。だけど、それは一時的にすぎない。

 彼女に足りないのは経験だ、それさえ物にできれば彼女の地位は盤石ばんじゃくになる。


 と言うのは、編集者としての私の意見。

 個人的は恋と言うのは実って欲しいし、それに一生喪女(もじょ)かと思っていた友人が初めて感じた恋だ。頑張ってほしい。

 独り身の女性でありながら、素直に女友達の恋を応援するなんて、どうやら私は結構、黒原の恋愛小説に毒されているかもしれないな。




「どうやらぁ、話は終わったみたいだねぇ」


 そのままアパートから出ようとすると、背後から声がかかる。

 この声の主は・・・


「大丈夫ですよ、大家さん。彼には手なんて出してないですって。潔白潔白」


 明らかに年上の人だけどちょっとおどけて答える。

 ・・・でなきゃ、この威圧いあつに耐えられそうにない。


「見りゃ、分かるよぉ。それにぃ、自制するぅ確信があってぇ通したんだよぉ」


 パッと見、老いぼれた老人のように見えるけど目が奥にある光は有無うむを言わせない迫力がある。

 それに自分の勘だけで人物を正しく判断するなんてこの大家さん、何者?


「それじゃ、私はこれで失礼します」


 私だって色んな立場の人にあってきたが、この感じはまるで重役と話ているようなそんな感触だ。

 いつも会う大家さんとは全くの別人のよう・・・それが私の今の感想だ。

 この場を早く離れるために話を切りきびすを返す。

 


「彼はこの流浪荘の住人だねぇ、あなたも『淑女しゅくじょらしい対応』をねぇ」


 つまりは情報を漏らすなって事ですか・・・わかりましたよ。

 大体、友人の恋を応援してるっていうのに言いふらすわけないでしょ。

 背中に悪寒を感じつつ歩き出す。


「こんなボロアパートだけどセキュリティは最新の男性用アパートよりもいいかもしれない・・・」


 と、そんな自分でも信じられないようなバカな事を呟く。 


 知らず知らずに内に速足になっているのと冷や汗をかいていたのは彼女自身、気が付かなかったみたいだ。

後半、何故かシリアスに引っ張られてしまいました。

この章はコメディっぽくしようと思ったのに頭がこれでは・・・

改めて言いますが全体の流れのプロットは出来ておりますが、各章の細かな話の流れは作者自身決めておりません。なので、たまに前もって言ったのが変更になったりしますが気にしたら負けです。

いつもの事ですが感想、指摘などあればどんどん言ってください作者のモチベ向上に直結します。


さて、(リアル期間的に)お久しぶりの人物設定です!


白崎 綾 (シロサキ アヤ)


年齢・28歳

職業・丸川文庫編集者

趣味・創作鑑賞(ジャンルを問わない)

好物・手軽に食べれるもの 仕事の邪魔をしない物

家族・母親

誕生日・7月18日


104号室の住人、黒原百合の担当編集であり友人。

結構、サバサバとした性格で良くも悪くも思ったことはハッキリ言う性格。

本編で出せるかは分からないが、黒原やその他の担当編集の原稿のチェックをするときはその趣味に裏打ちされた雑多な知識でアドバイスする。

彼女は広く浅く知識を持っていて、その知識をいかんなく発揮しているからこそ、きらりと光る原石だった黒原の担当編集になったのだろう。

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