第三室 会社員の日曜日
こんばんは、粋も変わらず底辺執筆者の中酸実です。
昨日は用事が立て込んでいまして投稿が出来ませんでした本当に申し訳ないです。
また、活動報告の方で今後の投稿のスタンスを言いたいと思いますのでそちらの方を一読いただければ幸いです。
ピンポーンと来客知らせるチャイムが鳴り、その音で意識が覚醒する。
反射的に卓上時計をつかんで時刻を確認すると短針が10時の針を刺そうとしている所だった。誰なんだと思い、寝ぼけ眼でベットから立ち上がる。
休日の睡眠時間をごっそり削られたことに不快感を示しながらドアノブに手を掛ける。
・・・一先ず、同僚の葵だったら有無も言わさずにぶん殴る。
「はいはい、どちら様ですか~」
そう言って、玄関を開ける。朝日のせいで顔が見えづらい、一体だれが訪ねて来たのだろう。
「ええと、203号室の逆水ですけど・・・」
「ふぇ!?」
突然聞こえてきた男性特有の低い声に眠気が一気に冷める。朝日に慣れ、瞳に飛び込んできたのは昨日話した男性だ。
逆水さんって名前なんだな・・・
「す、すみませんでしたぁ!!!ちょっと待ってくださいぃ!!!」
急なことで頭の処理が追いつかず、反射的に扉をバタンと閉めて自室に戻ってしまう。
一先ず、状況を整理しなければ。そんなことを自分に言い聞かせつつ鏡で己の姿を見る。・・・うん、一先ず身だしなみを整えよう。
出来るだけ最低限に身だしなみを整え、玄関のドアを再度開ける。流石に男性を待たせ過ぎた事に申し訳なさを覚えつつ扉から顔を出す。
「ハァハァ、ま、待たせて。す、すまないさ」
急ぎすぎてちょっと呼吸がおぼつかない、もうちょっと落ち着いてから出ればよかったかな。
「いえ大丈夫ですよ。この位、待つ内に入らないですよ」
本当に大丈夫だろうか?もしかしたら怒っているのかもしれない。と言うか、世の一般男性なら怒っているはずだ。
「本当?怒ってないさ?」
「ええ、怒ってないですよ」
しつこい様な私の問いかけに、本当に気にしてないような顔で彼は答える。
やっぱり、この男性は世の男性とは違うようだ。
「よかったぁ」
安堵するように玄関から出る。やはり顔だけ出しているのはちょっと警戒しすぎだと改めて思った。
どうやら、私の顔を見て言葉を失っているようだけどどうしたのだろうか。
「どうしたのさ?何か私の顔についてるのか?」
そんな言葉が自然と出ると、目の前の男性はハッとしたように取り繕う。
「い、いや。何でもない」
なんでも無いのだったらいいんだけど・・・
所で、何で男性が女性のとこにわざわざ訪ねて来たのかな?
「そう、ならいいけどさ。そう言えば何で訪ねて来たのさ?」
「ええと、スマホを買いたいのですが場所が分からなくて・・・」
「逆水さんスマホ持ってなかったのですか!?」
文明の利器を持っていない彼に思わず驚きを隠せない。これは本当に山奥の田舎から越してきたのだろうか?
「え、ええ」
彼は少し困ったような苦笑を浮かべている。ちょっと驚きすぎたかな、でもこのご時世に逆水さんの様な若い男性がスマホを持っていないことが本当に驚きだったのだ。
「ええと、ちょっと待ってね」
「はい」
一先ず、彼の要求している携帯ショップへの地図を渡さなければ。
家の中のパソコンを起動して、ここら一体の地図を探しプリントアウトする、簡単な作業だ。
一先ず玄関先で待っているであろう逆水さんの為に急いでプリントアウトする。
そして、印刷でまだ熱を持っている紙を持ちながら玄関に急ぐ。
「待たせたさ、ほい地図」
彼は変わらず玄関先で待っていたようだ。
「ありがとうございます」
そう言って彼はお辞儀をする。男性がお礼をすること自体稀なのだが、いざされてみるとなんだか照れくさい。
「良いって事さ、困ったときはお互いさまさ」
照れ隠しの様にそんなことを良い、恥ずかしさから逃れるように自室の中に入る。
・・・ちょっとまて
恥ずかしさで逃れるように部屋の中に入ったがよく考えよう。
あんな天然記念物の様な男性が週末の日曜の人込み(女性)に放り込んだらどうなるか・・・
やばい、想像するだけでも恐ろしい。
そう思うが先か、私は外行き用の荷物を纏めて玄関を出る。階下には今まさに地獄へと赴こうとする逆水さんの姿が。
「やっぱ、心配だからついていくさ」
私がいないと目が当てられない事になりそうだ・・・
・・・やはり付いて来て良かったと実感する。
私を見る視線には羨望そして嫉妬が入り混じり、彼に行く視線は獲物を仕留めんとするハンターの視点である。明らかにヤバそうな視線にはアイコンタクトと言う名の威圧で対処する。
「そう言えばさ、自己紹介してなかったね」
視線に怯えてるであろう、逆水さんの意識をそらすために話題をふってみる。
「ああ、そう言えばそうでしたね」
彼は思い出したかのようにそんなことを言い。
「ええと、この度203号室に越してきました逆水椿樹と言います。どうぞお見知りおきを」
そう言って自己紹介をする姿は実に様になっている。敬語と言い、やはり何か仕事をやっていたのだろうか?
「自己紹介ありがとう、私は大櫻証音。ご存知の通り202号室の住人さ」
「ええ、よろしくお願いします。証音さんですね」
行き成り下の名前とは、なんか親しくなった感じがするな。
「好きに呼んでもらってかまわないさ、所で椿さんは何か愛称とかないの?」
ちょっとした好奇心で聞いてみる。
「そうですね、呼ばれた名前はツバキ君、サカミ、ええと・・・・・バッキ―」
ん、最後の愛称を出した時に彼は立ち止まる。
「どうしたの?」
その言葉にハッとしたのか、彼は歩みを思い出したかのように歩き出す。
「い、いえ、ただバッキ―と言うあだ名なんて呼ばれたことがなかったので・・・なんで出て来たのでしょうか?」
語尾の方は小声で聞き取れなかったけど何か悩んでいるようだ。
「もうすぐ大通りさ、大丈夫?」
「大丈夫って何の事ですか?」
「ま、いやほど分かるさ」
そんなことを言い大通りに出ると、先ほどとは比べものにならないくらいに視線の嵐にさらされる。
急かすように先導する足に力が入る。とにかく、早く携帯ショップに行かなければ。
荒れ狂う視線の波に溺れそうになりながら、目的の店へと到着する。
「さて着いたさ」
傍を見ると逆水さんがげっそりとしている。やはり、あの視線の嵐は応える様だ。
「え、ええ、やっとですね・・・」
外にいたままだと状況が改善がしないので、さっさと携帯ショップに入る。
「いらっ・・・いらっしゃいませ」
どうやら、後ろの彼に気が付いたようで女性店員さんの言葉がどもる。仕方がない、こんな日曜の人(女性)が多い時間帯に男性が来ること事態かなり希少なのに。その希少な男性が滅多に見ないカッコいい男性だったらなおさらだ。
「『連れ』の男性のスマホを買いたいのだが」
話を付けるために要件を私から述べる。勿論、『連れ』の部分を強調するのは忘れていない。
「分かりました、所で連れの男性は恋人ですかそれとも夫婦ですか?」
「い、いや、逆水さんとはそ、そんな関係では」
何が分かっただ。分かってたらそんなことを聞かないだろう。つい条件反射で答えてしまったではないか。
「・・・そうですか、失礼しました」
一瞬の沈黙の間に何を考えていたかは、同じ女性である私だから手を取るようにわかる。その証拠に彼を見る目が獲物を狩るハンターの目だ。
「こちらが番号です、そこのソファにお掛けください」
店員から渡された番号の紙を取り、店内に設置されているソファに座る。それにつられるように逆水さんも座る。
「そう言えば、スマホの機種はどうするのさ?」
「ええ、そうですね・・・」
そんな感じで談笑をしているとアナウンスが流れる、確認してみるとどうやら私たちの番号の様だ。
「あ、よばれたさ」
周りをふと見回すと、さっきとは比べものにならないくらいに人が入ってきている。
日曜の日中と言うこともあるが、やはりお目当ては隣にいる男性だろうな。そんなことを思いつつ指定されたカウンターに行く。
「お待たせしました、新規のお客様ですね」
ゲッと苦虫を噛み潰したような表情になってしまう。対応をする女性店員はさっき番号を渡したその人、相変わらず逆水さん見る目はハンターの目だ。
「ではお客様、機種の選択をしましょうか」
そう言って、機種が展示されている所に案内する。その時、チラッとこちらを見るとしてやったりな顔をしていた。
それからはすらすらと手続きは終わった・・・途中、所々に店員さんの身の上話があったが。
「手続きありがとうございました、対応は小若が受けたわりました。あ、これ連絡先です」
何で、流れで連絡先を渡そうとしているんですかね・・・
「え、ええ、ありがとうございます」
そして、逆水さんにはもう少し警戒心と言うものを身に着けてほしいですね・・・
そんなこと思いつつ、彼の代わりに紙を手に取る。
「(連絡先を渡すのは)流石にそれはサービスが過ぎる気がするさ」
そう言い紙を取ろうとすると、店員は紙を渡すまいと力を込めた。
「いえ、アフターサービス(意味深)をしっかりしなくてはいけないですからね」
目と目が店員と合う、彼女の表情は本気そのものだ。
「それにしては露骨すぎな手渡しさ」
ギュッと紙を握る力が強くなる。
「いえいえ、真心(下心)を込めての対応ですから」
目の前の店員が真剣な表情になる。
「さて、そろそろ離してほしいですね。この連絡先は彼に渡しているのですが」
「それなら、私が後で(シュレッダーにかけて)渡しておくさ」
空気が張り詰め一触即発状態となる・・・そして。
ビリッ紙が破れる、紙の方が先にギブアップしたようだ。
「あ」
店員さんがあっけにとられてそんな声を漏らすが、私はそのチャンスを見逃さない。
すでにある程度片づけていた荷物を纏め、逆水さんの手を引き店を退出する。
「ほらっ、行くさ」
「えっ、大櫻さん?」
突然の事で彼は戸惑っているが、気にせず手を引く。
「あ、待ってください!」
後ろで店員の声が聞こえているが無視だ。お金はちゃんと支払っているし、必要な手続きはちゃんと行った。
逆水さんの手を引き着いたのは大通りに入る前の小道、とにかくここまで来れば安心だ。
「ふぅ、ここまで来れば安心・・・さ」
ここまで来れば安全なことを逆水さんに伝えようとする・・・が暖かい手の感触に視線がそっちに行ってしまう。そう、未だに繋がれてる手と手に視線に。瞬間的に思考停止に陥ってしまう、ダメだ早くこの場から離れないと。
「え、え~と、大櫻さ・・・」
戸惑うような彼の声に一気に現実世界に引き戻される。
「は、はい、す、すみませんんん!」
ちょっと乱暴に手を振りほどき反射的に謝罪の言葉が出る。そりゃそうだ、同意も無しに男性の手をつなぐなんてセクハラもんだ。
・・・それにちょっと昔の事を思い出してしまったのは言えないな。
「その、あのさ、ごめん。手を勝手に繋いじゃってさ」
彼は特に気にしてい様だがとにかく謝らなければ。いくら世間に疎いとはいえ何をしてもいいと言うわけではないのだ。
反省しているしている私を見て、逆水さんも何を言えばいいのか戸惑っているようだ。
微妙な空気が二人の間に流れる。
「大櫻さんの手、柔らかくて気持ちよかったな」
ふと、そんな事を逆水さんが漏らす。え?私の手が気持ちよかったって、そんな・・・
「え、えっと、大櫻さん・・・?」
「は、はい!!!」
しばらくの間、思考の波に埋もれていた私を引き上げたのは、奇しくも思考の波に突き落とした張本人?の言葉だった。
「え、えっと、そろそろ帰りませんか?」
ちょっと、不安そうな顔で尋ねてくる。
「そ、そうね、帰ろうさ」
ホントだったら昼食に誘いたかったけど、どうやらこの空気では無理そうだ。
帰り道はずっと気まずい雰囲気だった。流浪荘が見えてくると気が少し楽になる。
すると、隣を歩いていた逆水さんが急に立ち止まる。「どうしたの」って私が声を出す前に逆水さんは声を出す。
「今日は、ありがとうございました。おかげで助かりました」
お礼の言葉を述べ、ペコリと軽くお辞儀をする彼、その姿に律儀な人と言う感想が浮かんでくる。
「いやいや、こちらこそ一緒にいてくれてありがとうさ」
私は無理やり付いて行っただけなのでお礼を言われる筋合いはないと思うのだが。
「じゃあ、お先に失礼します」
そう言って彼は自室に戻ろうとする・・・
本当にこのままの関係でいいのか?そんな疑問が浮かぶ。
「あ!ま、待って!」
どうやら言葉に出てしまったようだ、その声を聞いて逆水さんが立ち止まりこちらを向く。
迷惑だろうか?本当にいいのだろうか?と一瞬脳裏をよぎったが振り切る。
「ねぇ、連絡先交換しない?」
確かに昔の出来事はあったけど、彼・・・逆水さんは違う。
だから、いやだからこそ私はもっと彼と話したい!
糖分多めな大櫻さん視点でした、これから物語はどんどん進んでいきます。
こんな底辺執筆者の作品をいつも読んで下さる皆様には本当に頭が上がらない思いです。
何時もの事ですが感想、指摘などあればどんどん言ってください作者のモチベ向上に直結します。
では、これで失礼します。




