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異世界召喚された勇者に付き添う僕  作者: 丘松並幸
第2章 アライ王国編
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かわいい王女様

 僕は城に来るお客様に良い印象を与えるために、小さい頃から礼儀作法を教えられてきた。

 僕と同じくらいの歳だと聞いて、その子も僕と同じようなことをしてきたのだと思っていた。

 でも目の前にいる女の子はどちらかと言うとカエデのような雰囲気がする。


「プラン、今は勉強する時間のはずじゃないのかい?」


 まずここまで走って来たらしく少し息が乱れている。

 そして朝、整えたであろう輝くような金色でウェーブの掛かった長い髪が乱れている。

 それだけでもカエデと同じ元気オーラを感じる。


「ロア様とアドア様に早く会いたくて先生から逃げてきましたわ」


 全く反省していないみたいで、屈託の無い笑顔でロット様を見ている。

 ロット様もプランセッス様も金色の髪に金色の瞳、白い肌で豪華な服だから2人が並ぶとより一層輝いて見える。


「はぁ~、後で先生に謝っておくように」

「りょーかいですの!」


 ため息を吐きながらも特に叱ることなく許している所を見ると、ロット様はプランセッス様にかなり甘いみたいだ。

 確かにあんなに眩しい笑顔を向けられれば許してしまう気持ちもわからなくはないけど、王様としていいんだろうか。


「お父様、ロア様とアドア様とお話をしてもよろしいでしょうか?」

「いいよ。というかそのために来たんでしょ?」

「そうですわ」


 プランセッス様は思っていた以上にやんちゃな子のようだ。

 でもこういう子の方が気を使うことが少ないからいい。


「それじゃあ、話が終わったらロア君とアドアちゃんを客室まで連れて行ってあげてね。僕はムトに用事があるから」

「わかりましたわ! 私にお任せあれですの」

「うん。それじゃあよろしくね。3人で仲良くするんだよ」

 

 ロット様とムトさんは僕達を残して部屋から出て行く。

 そんなに大切な話をするんだろうか。

 それともただプランセッス様がうるさいから静かな所に行っただけなのか。


「それではロア様、アドア様、お話ししましょう」


 プランセッス様はニコニコしてこっちを見ている。

 そんなに僕達が珍しいんだろうか。


「初めまして、プランセッス様。僕はロア・ノーブルと言います。今日からこのお城でお世話になります。どうかよろしくお願いします」


 まずはやっぱり自己紹介から、と思ったんだけど、プランセッス様は何だか不機嫌そうだ。

 何かおかしい所があったかな?


「私のことはプランと読んで欲しいですわ。それと敬語も不要ですの」

「すみませんが、僕は兵士、プランセッス様は王女ですのでそれはできません」


 プランセッス様の機嫌を取るよりも、これからのことを考えよう。

 ここでプランと呼ぶことになってしまうと城の中で王女様を呼び捨てしないといけなくなる。

 それはまずい。

 そう思って断ったけど、プランセッス様は納得していないようで頬を膨らませている。


「ロア様はグリーム王国の王子と聞いていますの。だから私のことをプランと呼んでもいいはずですわ」


 プランセッス様はどうしても僕にプランと読んで欲しいみたいだ。

 別に僕はいいのだけど、周りの人がどう思うのかが心配だ。

 まだこの城の人達が僕達のことをどう思っているのかわからない以上、余計なことはしない方がいい気がする。


「それに私はロア様とアドア様とお友達になりたいですの。お友達のことは愛称で呼ぶものだと先生に聞きましたわ」


 どうやらプランセッス様は友達が欲しいみたいだ。

 この明るい性格なら友達くらいすぐ作れそうなものだけど、やっぱり王女というのが枷になっているんだろう。

 

「ですが……」

「ロア様より私の方が年上ですわ! 年上の言うことは黙って聞くものですの!」


 プランセッス様は必死になって言う。

 そろそろかわいそうになってきたし、僕が折れるとしよう。

 周りの目のことはまた今度考えよう。


「わかりました。ではプラン様と呼ばせてもらいますね。ですが敬語は使わせてもらいます。僕はここでお世話になる身ですので」

「まぁ、いいですわ」


 プラン様は満足したらしく、またニコニコとする。

 そしてアドアの方を見る。

 でもアドアは緊張していてそれ所ではなさそうだ。


「アドア、プラン様に自己紹介を――」

「ずるいですわ! アドア様は呼び捨てなのになんで私は様が付きますの」

「……わかりました、プラン。次からはそう呼びますね」


 プランはわかりやすく嬉しそうな顔になる。

 こういう裏表の無い人は好きだ。


「え、えっと、アドア・ファズィと言います。これからよろしくお願いします、プラン様」

「アドア様にもプランと呼んで欲しいですわ」

「それは無理です! すみません!」

「アドアは僕にもこんな感じなので許してやってください」


 僕に対しても様を付けて敬語で話すのに、初対面の王女様相手に呼び捨ては無理だろう。

 プランもアドアの様子を見て、アドアがどんな子なのか何となくわかったみたいでこれ以上は何も言わない。


「そういえば、プランは僕達のことを呼び捨てにしないんですか?」

「そ、それは……」


 さっきまで元気だったのに急に静かになる。

 何かおかしいことを言っただろうか?

 そんなはずはないと思うんだけど……


「……ロア」


 今までとは違ってか細い声で僕の名前を呼ぶ。

 その顔は赤い。


「やっぱりまだ早いですわ!」


 お友達のいないプランには呼び捨てはまだ早いらしい。

 プランは気を取り直すかのように、金の髪がゆらゆらさせながら頭を振る。

 王女と言うよりも年頃の女の子のようなその仕草に微笑ましい気分になる。

 プランは元のニコニコ顔に戻って僕とアドアを見る。

 でもその顔はまだほんのり赤い。


「それではロアさん、アドアさん。お2人のお話を聞かせて欲しいですわ」


 何ともかわいらしい王女様ですね。


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