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異世界召喚された勇者に付き添う僕  作者: 丘松並幸
第1章 グリーム王国編
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終戦

 何が起こったのかは簡単にわかる。

 でも後ろを向かずには、確認せずにはいられない。

 僕は後ろを見る。

 そこには僕が倒したはずの騎士が立っていた。


「な、何で……?」

「『ドリーム』とかいう魔法は確かに強力だったが、お前が攻撃をしてくる前に解除出来た。それからお前にばれないように体に防御の魔法を使って攻撃を受け、やられた振りをしていたというわけだ。覚えておくと良い。一流の騎士は自分に直接作用する魔法を弱める魔法を常時使っている」


 騎士が勝ちを確信したからか丁寧に説明してくる。

 全身に伝わる痛みでまともに考えられない。

 だけどまだ、まだ負けてない。

 ――全身の痛覚を遮断――


「カエデ! アドア! 僕の手を握って!」


 僕にはまだ奥の手がある。

 騎士は僕がまだ動けることに驚いているけど、特に何もしてこない。

 何をやっても無駄だと思っているからだろうけど、それは間違いだ。

 僕が魔女だとわかった時点で騎士はあの魔法に気を付けるべきだった。

 カエデとアドアが血まみれの僕の手を掴む。


「魔女魔法『ワープ』ッ!!!」


 元々カエデに着いたら『ワープ』で安全な場所に行く予定だったから、騎士に刺されたこと以外は作戦通りと言える。

 つまり僕は勝ったのだ。


「僕の勝ちだ」

「ははっ」


 移動が始まる直前、騎士に言った言葉に返事は無かった。

 その代わりに騎士の笑い声が微かに聞こえてきた。




 『ワープ』で移動した先は戦いが始まる前に集まった平原。

 ここなら魔女の人達がいるから安全だろう。


「アドア! 僕の傷をお願い。カエデは…………え?」


 右手にはアドアがいる。

 でも左手には誰もいなかった。


「何でだよ! カエデはちゃんと僕の手を……」

「…………おそらくはカエデ様が付けていたアクセサリーの中に、魔法を妨害する物があったのかと」


 また失敗した。

 僕はまた大切な所で失敗してしまったのだ。


「クソッ!」

「ロア様! まずは治療しましょう」


 アドアの言葉を聞いて体に剣が突き刺さっていることを思い出す。

 そして『ウィッチ』の効果がもう切れることも。

 傷の痛み、そして『ウィッチ』のリバウンドが一斉にやってくる。

 今までに体験したことも無い激しい痛みが僕を襲う。

 それに耐えられず、僕の意識は声を上げる間もなく一瞬で飛んでしまった。




 体が重い。

 全身が動くことを拒否している。

 起き上がろうとしても体は全く動いてくれない。

 気を失う前の状態からしてこうなることはわかっていたから別にいいけど。

 僕は辛うじて動くまぶたを動かす。

 僕の目に見慣れた光景が入ってくる。

 どうやら僕はヴェイルさんの家のベッドに倒れているみたいだ。


「ロア様! 気が付いたんですね!」

「アドアか……」

「今、ヴェイルさんを呼んできます」


 そう言うとアドアはすぐに部屋を出て行った。

 外はまだ明るいし、ヴェイルさんは家の中にいないのかもしれないから、アドアを止めても良かったのだけど、あの後のことを色々聞きたかったからそのまま行かせる。

 そもそも今はあれからどれくらい経ったのかな?

 すぐには回復してないと思うから2、3日は過ぎているのかもしれない。

 カエデはどうなったんだろう……。


 そんなことを考えている間にアドアがヴェイルさんと一緒に入ってきた。

 ヴェイルさんに目立って傷は無い。


「ロアちゃん、大丈夫かしら?」

「大丈夫ではないですね。体が全く動きません」

「かなりの傷だったから仕方がないわ。死んでもおかしくはないと思っていたもの」


 僕は思っていた以上に重傷だったらしい。

 まぁ、今、生きているから別に問題ない。


「そんなことより、戦争はどうなったんですか?」

「……あたし達の完敗よ。カエデちゃんは連れ出せず、あたしも国王を殺し損ね、ムト達もかなりの痛手を負った」

「そうですか……」


 ヴェイルさんかムトさん達がカエデを助けてくれているかも、と期待していたけど、やっぱり無理だったみたいだ。

 でも、だからってカエデのことを諦めるなんて出来ない。

 僕は何度だってカエデを助けに行くつもりだ。


「これからロアちゃんとアドアちゃんにはこの国から逃げてもらうわ」

「どういうことですか!?」


 どうやってカエデの所に行くか考えようとしていた僕にそれ以前の問題が出てきた。

 アドアが驚いていないのを見るに、アドアにはもう話しているんだろう。


「今回の件で魔女狩りが激しくなるわ。この国にいるだけで危険な目に合ってしまうから、ロアちゃん達にはムトの知り合いが王様をしている国に行ってもらうわ。その国は魔女に対してこの国程は偏見を持っていないから大丈夫なはずよ」

「でも僕は――」

「今のままだとまた返り討ちにされるわよ。一旦、力を付けてきなさい。カエデちゃんのことはそれからでも遅くはないわ」


 僕の考えていることは筒抜けだった。

 その上でこの国を出て行くという選択をさせようとしている。

 ヴェイルさんはこれが一番正しいと思っているということだ。

 それなら僕はヴェイルさんを信じる。


「わかりました。でも強くなってすぐに戻ってきます」

「はいはい、わかったわ」


 今のままではまだ足りないということはよくわかった。

 僕はもっと強くならないといけない。

 次こそは絶対にカエデを助ける!


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