54話 迷宮で戦闘ですわ
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目の前に現れた骸骨戦士達が、のっそりとこちらへ向かってきます。
対してイグニシアとミズホは冷静に距離を測り、自身の間合いで戦おうとしていました。
骸骨戦士も弱い魔物ではありませんが、特段強いとも聞いていません。
あの二人が敗れることは無いでしょうが、ここは一つ、敵のステータスを確認をしておきますか。
確か迷宮で鑑定を使うと通常のステータスではなく、別のステータスを見る事が出来るはずです。
「鑑定」
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スケルトン Lv27
HP118 MP15 物理攻撃62 物理防御50 魔法攻撃10 魔法防御22 素早さ42 運15
スキル
不死C 回復魔法ダメージ判定A 再生C
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こんなのが、ざっと十体ですか。
死体なんだから、大人しく墓で眠っていて欲しいものです。
そういえば、私のステータスはどうなんでしょうね……。
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ティファニー・クライン Lv25
HP70 MP678 物理攻撃84 物理防御70 魔法攻撃233 魔法防御185 素早さ42 運105
スキル
悪徳A 強権A 毒舌S 嘘つきSS 尊大A 大魔導S 魔法盾S 肉体強化B 鑑定B 冷笑A 奇襲A 魅惑B
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ふむふむ。
迷宮戦闘だと、こんな風に見えるんですね。
流石は私、圧倒的なMP量を誇っていますよ。
といっても、戦略級の魔法ならMPを三桁使うのもザラにあります。
なので、余裕と云う程でもないのですけれどね。
あと、魅惑ってなんでしょう? 変なスキルが増えています。
あんなモノが増えるようなこと、しましたっけ? 記憶にありません。
まあ、分からないことを考えても仕方ありませんので、ついでにイグニシアとミズホのステータスでも見ておきますか。
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イグニシア・シーラ・クレイトス Lv26
HP206 MP158 物理攻撃197 物理防御224 魔法攻撃81 魔法防御77 素早さ108 運154
スキル
剣術S 槍術S 格闘S 弓術A 勇気SS 魔導S 覇気A 肉体強化S 騎乗S 突撃S 脳筋SS 聖騎士C 平地戦闘S
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ミズホ・バーグマン Lv24
HP188 MP30 物理攻撃200 物理防御185 魔法攻撃31 魔法防御64 素早さ156 運204
スキル
双剣A 剣術S 槍術A 格闘A 斧術S 魔導D 馬術S 平常心A 肉体強化S 無双D 剣士S
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あら。物理攻撃に関していえば、ミズホの方がイグニシアよりも勝っていたのですね。
それにスキルの脳筋が無くなって、代わりに無双が発生しています。
ということは、脳筋を育てると無双になるのですね。
イグニシアも脳筋を持っていますから、育つと無双にると……これはアーリアも持っているかも知れません。
あとミズホは、筋力強化が肉体強化に変わっていますね。
剣士なんてスキルも発生していますし、順調に育っているようです。
何にせよ、この戦力差で骸骨戦士に後れをとるなど有り得ません。
実際、ミズホが双剣を閃かせるたび、頭蓋を砕かれ四肢を分断された骸骨戦士が量産されていました。
「コイツら弱いよ、お姉ちゃん」
「油断するな、小娘。トドメを刺さねば再生するぞ――獄炎」
そこにアイロスが炎の魔法を唱え、消炭に変えていきます。
「魔法付与、聖ッ!」
イグニシアの方は聖騎士らしく、剣に浄化の魔法を付与していました。
「天へ帰れ、救われぬ亡者どもッ!」
土煙が上がる程の鋭い踏み込みを見せたイグニシアが、すれ違い様に骸骨戦士の首を刎ね飛ばしました。すると骸骨は淡い光の粒子となって、中空に霧散します。
それでも残った骸骨はハーピーが足止めをして、わんわんの剣が斬り裂いていました。
いつの間にかわんわんの剣も、イグニシアに聖属性の魔法を付与して貰っていたようです。
羽根っ子と犬っ子の息はぴったりです。これは、将来が楽しみになってきました。
「暇じゃな、ティファニー・クライン」
「あら、でしたら野グソ先輩も、戦えば良いじゃありませんか」
「誰が野グソ先輩じゃ。リリアードさまと呼べ、愚かな人族の姫君よ」
「ふん……偉そうな口を叩くなら、まずはお尻を拭いてからにして下さらない? 臭くてかないませんわ」
「はっ……お尻っ……!」
「何を青くなっていますの? あなた、まさか……本当に……?」
「ぞ、ぞぉぉぉい! それ以上言うなぁぁあ! それ以上言うと我が神弓の威力によって、貴様の乏しい頭の中身が、辺りにまき散らされることになろうぞぉぉお!」
「はいはい……そんな大層な弓なら、あっちの骸骨に向けて頂けませんか」
そう言って、未だ激しい剣戟を続ける前方に目を向けます。
「む? それもそうじゃが……」
リリアードは矢筒を眺め、「うーん」と唸りました。
どうやら矢の数が少ないようですし、相手が骨では狙える箇所が少ないのでしょう。
「近距離戦じゃしなぁ……こっちにしようかの」
そう言って悩み抜いた末、リリアードは腰のレイピアに手を掛けました。
「あら、あなた、剣も出来ますの?」
「無論じゃ。わしを誰だと思っておる」
「野グソ先輩」
「黙れ、愚かな人族め!」
「どうやら学院で、言いふらして欲しいようですわね?」
「う……ま、まさかクライン家のご令嬢ともあろう者が、そのように詰まらぬ真似などすまい?」
「さあ……どうでしょうか? 愚かな人族などと蔑まれましたし……」
「あ、あれは冗談じゃ。そうじゃ! これから暫くの間、何でも言う事を聞くぞ……この通りじゃ。だから黙っててくれぬか……?」
駄エルフが私を拝み、長い耳を顔の横に落としています。
気の毒な程の情けない顔に、思わず笑ってしまいました。
「ぷくくっ……じゃあ、一年間はわたくしの下僕ということで」
「一年っ!? それは些か長いのではないか?」
「なら仕方がありません、言いふらしますわ」
「わ、分かったのじゃ……言いふらすのだけはやめよ!」
「じゃ、とりあえず戦闘に参加して下さらない? わたくし、近接戦闘は苦手ですの」
「うむ……頑張るのじゃ」
私はリリアードに手を振り、サービスとして戦神の加護を授けました。
「おお、すまんな、人族!」
「人族ですって? わたくしのことは、主さま――と呼びなさい。駄エルフ!」
「くぉぉぉおお……あ、主さまじゃとぉぉぉ?」
「嫌なら、言いふらしますわよ?」
「屈辱じゃあああっ!」
「まあ、別に名前でも構いませんけれど……」
「ふぬぬぬぬぅぅっ! 今に見ておれよ、人族ゥゥッ!」
「もう、う○こは見たくありませんわ」
「ぐぎぎぎががごごっ!」
表情を思いっきり歪めたリリアードは前進をしたものの、しかし、すぐにしゃがみ込んでしましました。
そして私を手招きし、地面を指差しています。
バカにされた腹いせに、う○こでも見つけたのでしょうか? 真面目にやって欲しいものです。
「おい、ティファニー・クライン! こっちに来てみよ! 何やら魔法陣があるし、光っておるぞ!」
確かに、地面から仄かな青い光が見えていました。
見れば部屋の四隅にも、何やら怪し気な木が刺さっています。
「駄エルフッ! そこから離れなさいっ! それは転移魔法陣ですッ! 何かがここに、転移してきますわっ!」
瞬間、駄エルフは転がるようにその場を離れ、私の側に戻ってきました。
同時に黒い靄が部屋の中央に現れて、それは三つの人影へと姿を変えていきます。
ハーピーは、それを新たな敵と認識したのでしょう。
鉤詰めを閃かせ、現れた人影に襲い掛かりました。
「ギャアアアア」
しかし響き渡ったのは人影の発した悲鳴ではなく、ハーピーのそれでした。
わんわんは慌てて身体を袈裟に斬られたハーピーを抱きかかえ、現れた人影を睨みます。
黒い靄が晴れると、血の付いた剣を肩に担いだ少女の姿が見えました。
ピンク色の髪をした少女が笑みを浮かべ、辺りを睥睨しています。
「いきなり何なのよ……って、あーあ……。あたしの可愛い骸骨戦士達をこんなにして、落とし前、付けさせてもらうよっ!」
「あら、ミリア・ランドルフ……」
「また、お前なのか……ティファニー・クラインッ!」
「どうも、そのようですわね」
「ふっ……ははははっ! いいわ、いいわよ、ちょうど良い! 今度こそ殺してあげるんだからッ!」
言いながら、剣に付いた血をミリアが舐めています。
「ねえ、ミリア。あなた、獣の血を生で舐めると、変な感染症に掛かりますわよ。場合によっては、死ぬかもしれませんわねぇ」
「えっ? えっ? ハーピーって、亜人だから大丈夫じゃないのっ!? ちょっと、あたし死ぬのっ? 嘘でしょ?」
ミリアは慌てて剣の血を払い、唾をペッペと吐き出しています。
相変わらず、コイツもアホの子ですね。
「もっとも、そんな先の心配など不要ですわ――だってあなたは今ここで、きっちりと、わたしくしに殺されるのですからねぇ! あーははははっ!」
私は印を結び、魔法の同時詠唱に入りました。
私は近接戦闘が苦手だと言いましたが――あれは嘘です。
魔法を使った近接戦闘だって、あるんですからね。
「なっ……前みたいには、いかないわよっ! 召喚――首無し騎士ジークハルトッ!」
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