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4話 見つかってしまいましたわ


 朝日を浴びながら今後のことを考えていたら、太陽はすっかり空高く上っていました。

 さっそく復讐の為に祖父の下へ行こうかと思いましたが、今後を考えればそれも愚策です。

 だってゲームのティファニーは、この村の虐殺を手始めに君主への道を駆け上がってゆくのですから。


 もちろん復讐は大切です。

 ですが白昼堂々と領主の城を攻め立て、どでかい魔法をぶっ放してギラン・ミールを殺す事は、さほど重要ではありません。

 そんなことをすれば被害は甚大になりますし、誤摩化す為に住民を皆殺しにしなければならなくなります。

 だとすれば深夜にこっそり城へ忍び込み、ギラン・ミールだけを討ち取れば良いでしょう。

 あとは闇に紛れて逃げ出し、クライン公爵の元へ向かえばいい。


 そうです、私は暗殺者ティファニー・バルバトスになるのです。

 暗殺者ならば、まさか天才軍師ラファエル・リットに出会う心配もないでしょう。

 出会ったとしても、それは私が依頼を受けて彼を殺すとき……あは。

 

 などと私があーでもないこーでもないと脳内会議をやっていたら、我が家を燃やした男達が再び現れました。


「み、見つけたぞ、ティファニー。こっちに来い(なんで逃げなかったんだ)」

「金髪は目立つからなぁ!(見なかった事にしたい)」

「逃げるなよっ!(早く逃げろよティファニー)」


 私は振り返り、腕組みをして首を傾げました。みんな、コソコソと妙なことを言っています。

 彼等は私を捕まえたくないのでしょうか?

 仮にそうだとしても、家を燃やされた恨みを忘れるほど、私はボケておりません。


「逃げる? なぜこのわたくしが、あなた方のような低俗で薄汚い肥溜めのウジ虫などから、逃れなければならないのかしら? 害虫は駆除する方針ですのよ、これでも」

「ティファ?」

「ああ、薄汚い口がわたくしの名を呼びましたわ……神よ、わたくし、それほどまでに罪深いのでしょうか?」


 私がよろけてみせると、目の前の三人が涙目になりました。

 さて、とりあえず彼等のステータスを確認してみましょう。


 ――――――――

 パット 

 年齢22 職業 自警団 Lv5  

 スキル 

 剣術C(無効化可能)

 ステータス 

 統率46 武力46↑ 魔力0 知謀25 内政13 魅力55


 ブラン 

 年齢20 職業 愚民 Lv4  

 スキル 槍術D(無効化可能)

 ステータス

 統率19↓ 武力40↑ 魔力0 知謀12 内政13 魅力41

 

 ボード 

 年齢18 職業 無能 Lv1  

 スキル 

 格闘D(無効化可能)

 統率11↓ 武力35↑ 魔力0 知謀15 内政4 魅力70


――――――――


 不思議な職業の方が二人いますが、愚民や無能は果たして職業なのでしょうか?

 ああ、そうでした。私の固有スキルが発動しているようです。

 相手の職業を自在に操れるスキルは“強権”。

 きっと彼等は自警団なので、これで職業を書き換えたようですね。

 “強権”は“悪徳”の派生スキルで、相手を意のままに操る力ですから。


 あとは、相手のスキルを無効化することもできるようです。

 たしか“毒舌”のスキルで相手の心を折れば、無効化できた気がします。

 とはいえ三人はすでに涙目。これ以上、心を折る必要があるのでしょうか。


「ティファ! 俺ってウジ虫? そんな言い方ひどくない!? 俺、年上だよね!?」


 ほら、一番左側にいたブランさんが膝を折って、涙をダバダバと流しているじゃありませんか。


「では何とお呼びすればいいのでしょう? 貴方のように日頃から働きもせず、村の平和を守るなどと言ってフラフラしている殿方は、ウジ虫以外の何者でも無いと思うのですけれど。そんなことだから二十歳になっても、恋人が一人も出来ないのですわ。ああ、そう考えるとウジ虫の方がまだマシですわね。みんなつがいになりますもの。一緒にしてごめんなさい、ウジ虫さん」


 我ながら中々の毒舌ぶりです。

 案の定ブランさんは白目を向いて倒れました。

 同時に、頭の中で冷たい声が響きます。


(スキル 尊大の効果:愚民LV4のスキルを無効化しました)


 ま、間違っていました。

 毒舌を吐けばスキルを無効化できると思っていましたが、“尊大”の方だったようです。

 

「ブランー! しっかりしろー! お前が童貞だってことは、俺達しか知らない秘密だー!」

「いいんだ、パット。俺ぁどうせ、ボードにも負けたウジ虫野郎だ……自警団なんて聞こえはいいが、給料だって出ねぇえ……だからいつまでたっても親父とうちゃんの金で……」

「何言ってるんだ、ブラン! 俺達は普段、ちゃんと農民をやってるだろー!」


 ガクガクとブランの肩をパットが揺すっています。それから私を睨み、


「言っていい事と悪い事があるぞ、ティファ」


 と言ってきました。

 凄んでみても所詮は自警団ニート、恐くなんてありません。


「お黙りなさい、貴方はろくに働きもしないくせに、わたくしの家を燃やしたのよ! にもかかわらず年長者として説教なさるおつもりですか、恥を知りなさいっ! この自警団ニートっ!」


 ピシャリと言うと、流石のパットもがっくりと項垂れます。

 光を失ったパットの瞳は、まさに生ける屍と云えるでしょう。


「は、働いているんだ、俺だって……ただ、あんまり稼げないだけで……」

「パット! しっかりしろ! ティファを捕まえよう! こうなっちゃ仕方ねぇっ!」

「はっ! そ、そうだな、そうだった!」


 ボードが鼻息も荒く喚きます。お陰でパットの瞳に光が戻ってしまいました。

 これはいけません、彼の心もポッキリ折らなければ。


「あら、あら、あら! ボードさんの勇ましいこと! けれども貴方、ここに火を付けてから何時間わたくしを追いかけていましたの? それでやっと今、見つける事ができたなんて! ああ、酷い……低能を通り越して無能ですわねっ! ああ、素晴らしいです! この村一番の無能者っ!」


 わたくしはボードを指差し、高笑いしました。


「あははははははっ!」


 ボードは項垂れ、がっくりと地面に両膝を落とします。

 彼もまた、ブランと共に泥まみれになりました。


(スキル 尊大の効果:無能LV3のスキルを無効化しました)


 これで二人のスキルを無効化しました。

 けれど流石にパットだけは、どうしようもありません。

 パットが剣を抜き、ジリジリと間合いを詰めてきます。


「ティファニー……冗談はこれまでだ。見つけてしまった以上、俺はお前をご領主様の城へ連れて行かなきゃならん……諦めてくれ」

「連れて行ってどうしようというのです?」

「ティファニーだって分かるだろう、もう十二歳なんだから……」

「おじいさまが、わたくしなどを求めていると?」

「ああ……女として、な」


 これだからエロゲの世界は嫌いです。

 いいえ、プレイする分には大好きだったのですけれど……。

日刊載りました! 

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