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25話 どうして、こうなってしまいましたの?

 ◆


「どうして、こうなってしまいましたの!?」


 窓の外には鮮やかな桃色の花が咲き乱れ、下方に目を移せば青や赤のベレー帽を被った学生達が忙しなく行き来しています。


 ここはケーニヒス連邦学院――この大陸における数多の王国、公国、貴族領、商業国家により構成された連邦王国が直接運営する、唯一の学府です。

 ですから、ここに通う者は後に自国に戻って、国家の要職に就くことが約束された者ばかり。

 つまりは王族や貴族、民主国家であれば評議員の子弟などが多く、平民でさえも、それは才能を見出された一部特権階級の者という訳です。


 そして私は連邦内で列強と呼ばれるクライン公国の公姫。ですから王族達と同等の待遇を約束された、中でも特別な存在なのですよ。

 そんな訳で昨日の夜、貴族棟三階に与えられた部屋へミズホ、クロエと共に荷物を運び入れた私は、今日という日をこの場所で、迎えることになりました。


「ああっ! 絶対に来てはいけない場所でしたのにっ!」


 ですが、ここは私が絶対に足を踏み入れてはいけない場所だったのです。

 それを再確認する為にも、私は自らの目的をもう一度、しっかりと思い出すことにしました。

 

 そう――私の目的は、このエロゲの世界で主人公に攻略されないこと――これが第一です。その範囲内において自身の心と肉体の健康を保つため、人類に絶望と悲哀を与える。

 アイロスとの契約がある以上、私が末永く健康で文化的な生活を送る為には、人類の犠牲が是非とも必要ということですね。

 

 もっともとティファニーという存在を考慮したとき、貴族に対する復讐心は並々ならぬモノがあります。よって彼等を蹂躙し、駆逐することに関して罪悪感は感じません。

 またスキルによって自動的に吐き出される罵詈雑言のお陰で、労なく人類に絶望や悲哀を与えることも可能です。


 なので総合的に考えれば、地雷の数も少なくヌルゲー……だと思うのですが……今現在、どうしてこうなった! と頭を抱えざるをえない事態に直面しています。

 なぜなら第一の目的を達する為の計画が、音を立てて崩れてしまったのですから!


 理由は簡単です。


 私は会ってはいけない者に、遠からず会うこととなる。

 ラファエル・リットがここに居るのです。

 ああ……彼に会わないようにと心がけ、今までの日々を過ごしていたというのに。

 その為に、ミズホやクロエを付き従えたというのに。

 それらの苦労は全て、無駄だったのでしょうか。

 目の前に水の膜が張り、世界がユラユラと揺れています。

 ああ……これが涙なのですね。


 ですが、まだです。まだ終っていません。

 打つべき手は、まだ沢山残っていますからね。


 考えましょう――「Herzog」におけるゲームのスタートは、主人公であるラファエル・リットが十八歳になり、攻略対象の君主がいる国へ士官したところから。

 それは連邦歴で云うなら一〇二一年四月一日。つまり、本当の始まりは三年後です。

 だから、今はゲームで云うところのチュートリアル。ここは様々なミニゲームを行い、自らがターゲットにするヒロインを選ぶパートなのです。


 窓際から離れ、部屋に戻って机の上を見ると、その上には入学式のプログラムが書かれた紙が乗っていました。


 “新入生代表挨拶――ラファエル・リット――”


 白い紙に誇らし気に印字されたそれは、私を地獄の底か触手の苗床に突き落とす男の名です。


 こいつのせいで……こいつにさえ出会わなければ……ですが……


「ううん、大丈夫……大丈夫ですわ。だって確率は八分の一ですもの。しかも、わたくしは悪役令嬢。普通の感覚を持った健全な男子なら、スルーするに決まっています」


 どきどき……


 だけど、もしも何かの事故で好かれようものなら……やっぱり逃げ回るしか……

 逃げ回る? この私が? 何を馬鹿な……

 だんだんと腹が立ってきました。こんなの、私らしくありませんね。

 あは、あははは……


「考えてみたら逃げ回るより積極的で確実な方法、ありますわね」


 そうですよ、殺せばいいのです。

 いくら天才軍師のラファエル・リットと云えども、敵と認識すらしていない相手に暗殺されるとは思わないでしょう。

 そして都合良く私の手元には、最強の暗殺者が控えているのですから。


「ミーズホッ!」

「はい?」


 ミズホは一歳年齢をサバ読みして、私と共に学院へ入学を果たしました。

 彼女は平民棟に自室を与えられていますが、基本的には私の付き人なので、この部屋で共に暮らします。

 そんなことが許されるのも、公爵家の金銀財宝を学院の首脳へ大量にバラまいた結果ですが、王族や大貴族なら皆がやることですからね。

 ですが、それも全ては今日の為! さあ、行きなさい、ミズホッ!


「ラファエル・リットを抹殺なさい!」

「お姉ちゃん、会ったことも無い人を殺しちゃダメだよ、犯罪だよ?」


 むむ……十四歳になったミズホは、随分と固いことを言います。ならば……


「クロエッ!」


 少し質は劣りますが、クロエも今では相当強いのです。

 特に愛玩SSのスキルを使って相手を油断させれば、ほぼ確実に致命の一撃をぶっ込めるでしょう。

 ふふふ……ラファエル・リット。

 あなたには、エロゲの主人公に相応しい死を与えて差し上げますよ。


「無理。ティファ、殺人教唆で捕まるよ?」


 即答ですか、この兎さん……。

 ちなみに兎さんもミズホと同様、クライン家の財力を使って、私が入学させました。

 それもこれも、このような事態に備えてのことだったのですけれど。


 二人とも役に立たないなんて、何と云うことでしょうか。

 仕方がありません。

 こうなったら私が直接、ラファエル・リットに正義の鉄槌を下すしか道は無いようですね。

新章です。

時間的に三年経っていますが、あとで過去の話も出てきます。

時系列を順に追っていくだけだとつまらないなーと思ったので、こんな風になりました。

混乱させてしまったなら、すみません><

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