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テグ戦記  作者: さいとう みさき
第十四章
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第十四章14-1黒い呪い

どこもかしこも腐っていやがる!

だが俺は生き延びる。

生き延びてやるんだ!!


奴隷戦士アインの生き延びるための戦い。

はたして彼は生き延びることが出来るだろうか?

14-1:黒い呪い



 ガッキィイイイィィィンッっ!



 俺とアルファードが振るう剣と剣がぶつかり火花が飛び散る。

 真っ黒な俺の「鋼鉄の鎧騎士」と白銀に輝く奴の「鋼鉄の鎧騎士」が陽が落ち暗くなったこの場でぶつかり合う。



 ガッキィイイイィィィンッっ!



 お互いに「魔王」が作り上げたと言うオリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」。

 世界中にたったの十二体しかないと言われるそれは他のどんな優秀な「鋼鉄の鎧騎士」でさえ圧倒し、そしてその力は計り知れない。

 振るう太刀は全てのモノを粉砕し、その鋼鉄の鎧はどんな攻撃も魔法も受け付けない。

 まさしく最強の存在。



 ガッキィイイイィィィンッっ!



 『ふん、真っ黒になった割には良い動きをする。だが前の様にはいかんぞ!!』


 『ぬかせ! 貴様だけは許さねぇ!!』



 目の前に迫る白銀の騎士に俺はその思いを載せた一撃を入れる。

 その強力な一撃は奴の剣を弾き肩にぶつかる。


 が、あちらもオリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」。

 いくらこちらの攻撃が入っても傷一つ付かない。



 『ちっ! だがっ!』



 俺は俺の中にある魂を奮い立たせる。

 途端に奥底から力が湧き上がる、そして俺の瞳の色を金色に変えていく。

 魔力を「鋼鉄の鎧騎士」に注ぎ込み、「操魔剣」を使う。




 『うぉおおおおおぉぉぉぉっ!』



 ぐっと踏み込み大剣を振るうとアルファードの「鋼鉄の鎧騎士」が反応する前に剣が届く。



 ががんっ!



 『ぐっ! またか!? 貴様一体何をしたぁっ!』


 『貴様にはわかるまい! 俺の魂からくるこの怒りが!!』



 叫びながら俺は「鋼鉄の鎧騎士」を操作してアルファードの奴の「鋼鉄の鎧騎士」を滅多切りにする。

 だが奴の鋼鉄の鎧騎士を破壊する事は出来ない。


 『ぐっ! こ、こいつ!!』


 アルファードは俺の攻撃を防ぐ防戦一方になる。

 俺の剣がどんどんと奴の「鋼鉄の鎧騎士」に入ってゆくが、同じオリジナルの為やはり傷一つ付けられない。

 だが奴の「鋼鉄の鎧騎士」が壊れようと壊れまいと今の俺には関係がない。


 目の前に憎いやつがいるのだから!!



 『うぉおおおおぉぉぉぉっ!!!!』



 俺は雄叫びを上げながら剣を振る。

 俺の激しい攻撃にアルファードの奴は身動きが出来なくなってきている。


 いい気味だ。

 気分が良い。

 ザシャの仇も、アーシャの仇もこのガレントの野郎を倒せば取れる。


 そう、こいつを、ガレントを!!





 ドクンっ!





 何かが鼓動をした。

 しかしそんな事にかまって等いられない。




 『うぉおおおおおぉぉぉぉぉっ!!!!』



 ガン、ガンっ!



 とうとう俺はアルファードの「鋼鉄の鎧騎士」を剣でぶち倒し、その銀色に輝く機体を地面に吹き飛ばす。


 

 がんっ!


 どがぁあぁぁぁん……




 そして俺はいつの間にか笑い声まで上げていた。



 『あはははははははぁっ! いいぞ、全部だ、全部ぶち壊してやるっ! この世の全部を破壊しつくしてやるぅっ!!』



 俺は全てを破壊したい、ぶち壊したいと言う気持ちでいっぱいになっている。




 「アインっ!!」


 

 しかしそんな好い気分なのにオクツマートが俺に声をかける。



 「アイン! おい、アインっ!! なんなんだよそれは!?」


 「ちっくしょぉ! アイン、おかしいぞ、それはぁ!!」


 「駄目だ、下がれオクツマート!! ルデンも!!」



 俺の足元であいつらが騒いでいる。

 オクツマートもルデンもベリアルも。



 なんだよお前ら?

 俺がどうしたってんだよ?

 アルファードの奴をぶちのめし、ここにいる連中も皆殺しにして、お前たちだって殺してやるんだから。



 そうだよ、全部だ。

 全部壊してしまえばいいんだよ。



 俺は目の前にいるベリアルに剣を振り上げる。




 「おい、アイン?」


 『お前たちもちゃんと殺してやるぞ!』



 ブンっ!!




 「アインやめろぉっ!!」


 「オクツマート!!」



 ルデンとベリアルが叫ぶ中俺はオクツマートの頭上に剣を振る。



 ぐしゃっ!



 簡単だった。

 オクツマートを殺すのは簡単だった。


 俺は引き上げる剣を見る。

 剣先にはオクツマートの血がたっぷりと付いている。

 そしてその剣は「鋼鉄の鎧騎士」の腕と外装ごと溶けたように一体化していた。


 ぽた

 ぽたっ



 ああ、オクツマートの血の温かみが伝わって来る。

 気持ちいい。


 もっとだ。

 もっとこれを味わいたい!



 「アインっ! なんなんだよその『鋼鉄に鎧騎士』は!? どうしちまったってんだよ!?」


 「やめろルデン! あのアインはおかし過ぎる!! 外装がまるであの巨人みたいになって、これじゃぁまるで悪魔か何かだ!!」



 なんだ?

 ルデンやベリアルが変な事を言っている?

 俺がどうしたって?



 もう一度俺は自分の手を見る。


 すると「鋼鉄の鎧騎士」だったはずのその手はまるで生き物の様な手に変わっている?

 握られた剣も一体化してまるで手から剣が生えているかのようだ。



 いや、何だ?


 まるで俺の魂がどんどん「鋼鉄の鎧騎士」に、違う、もっと外、そう、あの黒い外装に吸われていくようなこの感覚は?





 「アインっ! 正気に戻れぇっ!!」




 ルデンの叫び声がしたかと思うと俺の右胸になんかが当たる。


 ゴンッ!


 音がしたと思ったらそれは大爆発を起こす。




 どがぁああぁぁぁぁんッ!!




 『ぐっ!?』


 爆弾か?

 ルデンが俺に爆弾を投げつけた?



 そう思った瞬間周りが見えた。



 近隣の森林や運送中の馬車が燃えている。

 その炎はどんどんと勢いを増している。


 燃え盛る炎の中、俺に倒されたアルファードの「鋼鉄の鎧騎士」がその銀色の外装に俺の姿を映しだす。


 そして俺は目を見張る。




 そこにはまるで悪魔か魔人の様な俺の姿が映っていたのだった。

 

次回:「燃える森」

俺は神を信じない。 


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