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テグ戦記  作者: さいとう みさき
第十二章
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第十二章12-3船

どこもかしこも腐っていやがる!

だが俺は生き延びる。

生き延びてやるんだ!!


奴隷戦士アインの生き延びるための戦い。

はたして彼は生き延びることが出来るだろうか?

12-3船


 イージム大陸の西側はサージム、ウェージムそしてノージム大陸へとつながる大海がある。

 しかしイージム大陸の西側は断崖絶壁が多く港に適した場所は北方か南方かに分かれる。

 特に交易が多いのは南方の方だが、こちら側には「鋼鉄の鎧騎士」を数体載せても問題の無い程の大型船が往来している。



 「とは言え、流石にアインの『鋼鉄の鎧騎士』を運ぶとなるとそこそこの大きさの船じゃなきゃだめだな」


 「ならばいっその事この外装も取っちまうか? だいぶ軽くなるぞ?」


 「そんなことしたら使い物にならなくなっちまうぞ? それに『鋼鉄の鎧騎士』の外装を買い集めるなんざいくらかかる事やら」



 ルデンやベリアル、そしてオクツマートは軽口をたたきながら港村を見ている。


 漁村では無い様だ。


 港にはそこそこの荷物が積まれている。

 何処と交易しているかは分からないがこんな小さな村でこの量、普通じゃ無い。



 「どう思うオクツマート?」


 「多分アインの思っている事と同じだろう? あの量、こんな小さな村にしちゃぁ多すぎる」



 となるとあまり表沙汰にしたくない物品の運搬をしているのだろう。



 「アイン、船の大きさから行くとやっぱりサージム大陸あたりか?」


 「だろうな。イージムの北側に行くわけではなさそうだし、ドドス産で価値のあるものと言えば‥‥‥」



 「魔鉱石か?」



 ベリアルはその答えを言う。



 魔鉱石は剣や盾、鎧などの魔道具は勿論の事「鋼鉄の鎧騎士」を構成する骨組みに使われる鉱石で、魔力伝達に優れているらしい。


 これを特殊な方法で何人もの魔導士が錬成すると「鋼鉄の鎧騎士」の素材になるらしいが、その鉱石が取れる場所はこのドドスの山奥の村が一番多いらしい。


 ドドス共和国はそれを高値で売りさばいているらしいが戦略物資となるそんなものを非公式で売り渡すとなると‥‥‥



 「横流しか?」



 「多分な」


 俺が思いつくことを口にするとオクツマートは頷く。

 

 「鋼鉄の鎧騎士」は一騎作るのにだってかなりの予算がいる。

 たとえそれが量産型でもだ。

 


 俺たち傭兵にそれがまわってくるのは大概旧型で使い物に成ら無くなる寸前のものが多い。

 ほとんど使えないような状態を修理しながら乗るわけだが、そうなるとその機体をある程度熟知している必要がある。


 だからその機体とその乗り手はほとんど元どこかの国の「鋼鉄の鎧騎士」の乗り手だった者が多い。

 大体は俺同様いろいろと人には言えない事情があって傭兵になるわけだが。



 そして市場にはたまに鋼鉄の鎧騎士の部品が出回る。



 素材としても魔鉱石を元にしているこれはとてもいい武器にもなるがなかなか加工が難しい。

 なのでそれらはほとんど俺たちのような「鋼鉄の鎧騎士」乗りの傭兵が買う事が多い。



 「だが魔鉱石自体を密輸するとは、後ろにはどんな連中がいる事か‥‥‥」


 「さあな、それよりどうする?」


 俺のつぶやきにオクツマートはこちらを見ながら聞いてくる。


 俺は少し考えるが俺たちをまっとうにサージム大陸へ連れてってくれる港があるかどうか。

 それに見る限り大陸間を移動するつもりの船。

 だったら‥‥‥



 「手段は選んでいられないだろう?」



 「だな」


 「だけどどうやって船を操るよ? 前のガレントの鉄の船とは訳が違うだろう?」


 「アイン、何か良い手でもあるのか?」


 俺は「鋼鉄の鎧騎士」の胸を開き乗り込みながら言う。



 「なんて事はない、水夫も含めて奪っちまうのさ!」


 「とんでもない英雄様だな!」


 「どのみち密輸、そして相手はイザンカに手を出したドドス共和国の連中だ。遠慮はいらんだろう?」


 俺はそう言いながら右手の拳を差し出す。

 するとオクツマートは同じく拳をぶつけ答える。


 「サポートは任せてくれ。アインが乗り込んだら船の制圧に向かう」


 『頼んだぞ』



 俺はそれだけ言って「鋼鉄の鎧騎士」を動かし始めるのだった。

  


次回:「サージム大陸」

俺は神を信じない。 


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