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テグ戦記  作者: さいとう みさき
第十一章
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第十一章11-5ガレントの足跡

どこもかしこも腐っていやがる!

だが俺は生き延びる。

生き延びてやるんだ!!


奴隷戦士アインの生き延びるための戦い。

はたして彼は生き延びることが出来るだろうか?

11-5ガレントの足跡


 ジマの国に来て三日が経った。

 俺たちはハイナンテ王の親書を持ち建設中の砦に戻る事となった。



 「アイン、あなたの駆る『鋼鉄の鎧騎士』ですが」


 大広間で最後にハイナンテ王と挨拶をしてから城を出発する俺たちに声がかけられた。

 その透き通るような声は忘れもしない黒龍のコク、その人である。

 彼女は初めて会った時と同じく城から出て行こうとする俺たちを階段の上から見ていた。



 「あんたか。何の用だ?」


 「アイン、あなたの駆るあの『鋼鉄の鎧騎士』は紛れもなくオリジナルですがまだ完全覚醒させていませんね?」



 完全覚醒?

 なんだそれは??



 おもわず俺は体ごと彼女に振り向く。

 すると彼女はふっと口元だけ笑う。 



 「どうやら知らないようですね? お母様がその後に『鋼鉄の鎧騎士』に施した本来の機能を上回る仕掛けを」


 「どう言う事だ?」


 

 すると彼女はゆっくりと階段を下りてきて俺の側にまでやって来る。

 そして俺の胸に人差し指を当てて言う。



 「あなたは異界の魂を持つ者。お母様と同じくその魂にはギフトが付けられているはず。オリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』は連結型魔晶石核を二つ装備しているのです」



 連結型魔晶石核とは「鋼鉄の鎧騎士」の動力源となる物。

 通常はそれが一機体に一つしか載せられていない。


 それが二つもあると言うのか?



 「オリジナルの連結型魔晶石核はそれを駆る者の背中、座席の裏にありますがそれに付け加えもう一つ腰部のスペースに有ります。それを開放出来れば『鋼鉄の鎧騎士』は絶大な力を発揮できる。しかしそれに注ぎ込む魔力が通常の者には無い」


 彼女はそこまで言ってから更に強く俺の胸に指を押し付ける。


 「しかし異界からの転生者には通常をさらに上回る魔力を保有する者がいる。あなたはそれを持っているのでしょう?」


 彼女はそう言いながら上目使いで俺を見る。

 その美しさの顔の中に瞳にだけは冷ややかさが宿っている。



 「もしそうだとしても俺にはわからない。そんなギフト等と言うモンが俺にあるのか?」



 「あなたは既に英雄の力を手に入れた。あとは自分の魂に聞けばいい。ただ、その力をお母様にだけは向けない事を切に願います。もしそうなれば私が真っ先にあなたの心臓をつかみ取って見せます」


 すぅっと俺の心臓の位置にまで指を動かしてから彼女は離れて行った。



 「ガレントの宝物庫に在った十二番目の機体、あれには連結型魔晶石核は二つありません」



 彼女は最後にそれだけ言って階段を上りどこかへ行ってしまった。

 俺はその姿を最後まで見送ってつぶやく。



 「二つの連結型魔晶石核、そして俺の魂のギフト‥‥‥」


 

 ◇ ◇ ◇



 ロッジと共に建設中の国境付近の砦に戻って来た。

 俺たちはすぐにジバル将軍会いに行った。



 「ご苦労だった、アイン殿、ロッジ。そして先ほどの親書だがこれはベブルッシ陛下にお届けしよう。上々の成果だった」


 にこやかに俺たちが持ち帰った親書をかかげる。

 そして現状を話し始める。



 「ドドス共和国はどうやらこちらの様子を監視するにとどまるつもりだな。ガレントの連中がどうなったかはうちの腕利きに調べさせに行かせている。もうじき情報が入るだろう」


 「ドドスは侵攻するつもりが無いのだな?」


 酒の入った杯を俺たちにも進めながらジバル将軍は頷く。


 

 「ドドス共和国も我々がジマの国に接触した事は知っている。国境を超えない状態でイザンカ王国が何をするかはこちらの自由だからな。もしドドスとして攻め入ればすぐにジマの国も相手にすることになる。流石に連中も馬鹿ではないさ」


 そう言って杯の酒を飲み干す。

 俺もその酒に口をつけてから一番気になっている事を聞く。



 「ではガレントはどう出る? アルファードの奴は死んでいないだろう。傷が癒えればまた襲ってくるのではないか?」


 「それを調べさせに行っている」


 自分の杯にまた酒を注ぎながらジバル将軍はそう言う。



 「アイン殿の『鋼鉄の鎧騎士』があるのにまた攻めて来るでしょうか?」


 「それは分からん。だがあちらにもアイン殿と同じオリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』がある。ただ、アイン殿は英雄だ。あの戦いを見れば下手に手出しはしてこないと思うがな」


 そう言いながら俺たちの杯にまた酒を注いでくれる。


 

 しかし一国の王子があれだけの無様をさらしたのだ。

 そうそう簡単に引き下がるものだろうか?  



 俺がそんな事を思っていた時だった。


 「将軍、失礼します。調査に行かせていた者が戻りました!」


 「なに? ちょうど好い、バレン指揮官共々ここへ連れて来い。アイン殿良いかな?」


 「願っても無い。あちらの情報はすぐにでも聞きたい所だ」


 どうやらその後のガレントの足跡が分かりそうだ。




 俺たちはその報告を待つ事となったのだった。

  

  


次回:「南へ」

俺は神を信じない。 


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