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テグ戦記  作者: さいとう みさき
第十章
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第十章10-5英雄として


どこもかしこも腐っていやがる!

だが俺は生き延びる。

生き延びてやるんだ!!


奴隷戦士アインの生き延びるための戦い。

はたして彼は生き延びることが出来るだろうか?


10-5英雄として



 ひょんなことから黒色火薬が作れたお陰でイザンカ王国は「鋼鉄の鎧騎士」にもガレントやドドスに対抗出来そうな武器を手に入れることが出来た。



 俺たちはドドス共和国とイザンカ王国の国境付近まで来ていた。



 「今頃はドドス共和国に使者が到着している頃だろう。我々はここに拠点の建築を開始する。皆の者配置にかかれ!」


 

 ジバル将軍がそう宣言すると同時に魔導士たちが呪文を唱え砦作成に必要な岩を集める為にロックゴーレムたちを作り上げる。


 そして地ならしを始めるのだが俺たち「鋼鉄の鎧騎士」たちもその労力として協力しなければならない。



 『なんかロックゴーレムたちと一緒に地ならしや土木作業をしていると自分までロックゴーレムになった気分だな』


 戦線復帰したロマネスクはせっかく直した「鋼鉄の鎧騎士」を早速泥で汚す。

 まあ俺も同じようなもんだがここに砦を作り拠点を増やしていかなければならない。


 ある程度地ならしが終わるとまず最初に城壁の作成に入る。

 これは近郊の魔獣襲撃対策の意味もありこのイージム大陸ではそれが普通らしい。



 『近くの林で木材を取って来る。アイン手伝ってくれ』


 イグニバルに言われ了解して付いて行くと正規の「鋼鉄の鎧騎士」団が伐採作業をしていた。



 『アイン殿たちか? 手伝い感謝する。ここは大体伐採が済んだ。向こうの方の伐採を頼む』


 ランディン隊長がベルギラートやイターシャの機体に伐採させた大木を運ぶことを指示しながら俺たちにも協力を仰ぐ。


 『分かった、あちらの林で良いな?』


 『頼む』


 それだけ聞いてから俺たちは隣の林に行き大剣を抜く。


 『アイン、頼む』


 『おうさ!』


 俺は剣を低い位置で一閃させる。

 すると刈り取られた大木はあっさりとなぎ倒される。

 

 倒れた大木の大き目な枝をイグニバルたちが剣で切り落としてから材料として持ち去る。

 そんな事が十日ほど続いた。



 ◇ ◇ ◇



 「なんだと? ではドドス共和国はあくまでガレントが来ていないと言い張るのだな?」



 イザンカの使者が戻って来たと言う事で俺たちはジバル将軍テントに呼ばれていた。

 そして報告を受け今の言葉だ。


 「奴等め、我々がジマの国と盟約通りに手を組むのを嫌ったか?」


 バレン指揮官は渡された親書を読み唸る。

 そしてそれを将軍に手渡しながら付け加える。


 「我々がここへ砦を作る事は明確な敵対行為だと非難するそうですな」


 「そう言いながら自分たちはガレント王国の要請を受け密かに後方支援を行っていると言う訳か? 全く、ドドスの連中も何をしているのやら」


 ひとしきりののしりその報告書を握りつぶす。

 そして俺たちを見まわしてからジバル将軍は宣言する。



 「我が国内での砦の設置は正当なモノである! ここに砦の建築は進め万が一攻め入って来るのならば容赦するな!!」



 『はっ!』



 その場にいる全員が即答する。

 そして各々が自分の使命を果たす為に動き出す。



 「アイン殿、良いか?」


 俺も砦の建築を手伝おうと動き出そうとした時だった。

 ジバル将軍は俺を呼び止める。


 「なにか?」


 「アイン殿にやってもらいたい事が有る。ドドスに牽制をかけたい。我々のこの行為を正当とする為にもな」


 そう言いながらジバル将軍は手紙を書き始める。

 最後に蝋印で封をしてその手紙を俺に手渡してきた。


 「アイン殿には『鋼鉄の鎧騎士』を操ってもらいジマの国にこの親書を手渡して来てほしい」


 「俺がか? しかしジバル将軍、何故今更に?」



 「宣伝効果と大義名分の為だよ」



 そう言って地図も引っ張り出す。


 「これを見てくれ。今我々のいるのはここ。イザンカ王国とジマの国とドドス共和国は丁度ここが三国の要になる場所。自国とは言えここへ砦を作るのは二国に対して牽制をかけると取られても仕方ない場所だ。だがアイン殿によるジマの国への親書の引き渡しでその意味合いが変わって来る」


 「つまりそれが大義名分となる訳か‥‥‥」


 「英雄自らそれを証明してくれるわけだ、ジマの国も無下には出来なくなる」


 俺はそれを聞いて仕方なしにその手紙を受け取る。

 英雄と言う肩書は必ずしも俺にとってだけ良いものではない。


 こうして政治的にも使われるものだ。




 俺は将軍に気付かれないように隠れてため息をつくのだった。  

 

 

次回:「ジマの国」

俺は神を信じない。 


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