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テグ戦記  作者: さいとう みさき
第一章
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第一章1-4生き残るもの

どこもかしこも腐っていやがる!

だが俺は生き延びる。

生き延びてやるんだ!!


奴隷戦士アインの生き延びるための戦い。

はたして彼は生き延びることが出来るだろうか?

1-4生き残るもの



 それは何の前触れの動作も無く襲ってきた。


 「くっ! 早い!!」


 俺は剣でその手刀を弾くがすぐに懐に入られ蹴りを喰らう。

 その一挙一動は洗礼された武人の如く無駄の全くない動きだった。

 そして、こんなに小さいくせしてその蹴りはもの凄く重い。

 まるでこん棒で殴られたかのようだ。


 「ぐはっ!」



 「アインっ!」



 アーシャが慌てて俺の所に駆け付けようとするのが一瞬見える。

 俺は蹴り飛ばされ地面に転げ何とかその威力を最小限に押しとどめようとしたがどうやらあばらが逝ったようだ。


 無理矢理立ち上がると激痛がする。

 そして見てしまった。


 アーシャの首に機械人形の蹴りが入る瞬間を‥‥‥



 「やめろぉぉぉぉおおおおぉぉっ!!」



 怒鳴り自分の痛みも忘れてアーシャの所へ駆け出す。



 ゴっ!



 鈍い音がしてアーシャの首に機械人形の蹴りが入った。

 そして倒れるアーシャの首は有り得ない方向を向いた。



 「アーシャぁっ! ちくしょぉおおおぉっ!」


 地面に転げるアーシャを抱き上げるが既に開いた瞳は光を失っている。

 そして首が力なく変な方向に曲がる。


 機械人形はそんな俺に追撃する為にこちらに踏み込んできた。

 俺はその光景をまるでスローモーションのように見ている。

 と、その瞬間俺の脳裏にまた変な記憶がよみがえる。



 ―― 駆動部の油に砂が詰まるとすぐ動かなくなっちまうんだよな‥‥‥ ――



 何かの機械らしきものを整備しているのは俺か?

 乾燥した土地らしきそこに戦うための道具が有り、ほこりを払いながら俺は油を挿している‥‥‥

 俺は思わず地面の砂を掴みこの化け物に投げつける。


 意外な行動だったせいか機械人形はその砂を避ける事無く真正面から浴びるがそのまま又俺に蹴りを入れようとする。

 何とか鎧でそれを防ぎ地面を転がりながらやり過ごす。


 そして立ち上がると機械人形の動きがやや鈍っている?

 砂をもろにかぶった頭部から両肩の辺を中心に動きが鈍い?

 

 それでも手刀を俺に入れてこようとする機械人形。

 俺は腰に付けていた短剣でそれを捌き体当たりをする。



 どっ!



 「ぐっ!」


 蹴られた腹とひびが入っただろうわき腹の痛みがひどいが体格差のお陰で何とか機械人形を弾き飛ばす。

 そしてそのまま駆け出し逃げ出す。


 俺は命からがらこの場を逃げ去るのだった。




 * * * * *



 「何人生き残った?」

 


 バッカス隊長はそう言いながら逃げ戻って来た俺たちの状態を確認する。

 周りは俺を含めケガした連中だらけだった。

 どうやら俺たち西から攻めていった部隊は運悪くマシンドールに遭遇したようだ。

 東や中央から攻め入った部隊は今も善戦しているらしい。



 しかし俺たちの部隊は‥‥‥



 「残ったのが十人だと‥‥‥ これではほぼ全滅では無いか!!」



 バッカス隊長は地面を踏みつける。


 「神は俺たちを見放されたのか‥‥‥」



 「違う! 神なんざ最初から俺たちの事なんて屁とも思っちゃいない!! やめろ! 神なんざにすがるのは!!」



 俺のその剣幕にバッカス隊長他生き残った連中は驚く。


 「お、おいアイン‥‥‥」


 「神に祈ればアーシャは生き返るのか!? 祈ればあいつは俺たちを救ってくれるのか!? ふざけるな! あいつはいつもいつも‥‥‥」


 そう俺が叫んだ時だ。

 また知らない記憶がよみがえって来る。



 ―― それは乾いた砂漠のような場所。

 手に持つ拳銃で俺は神の名の下、少年なのに人々を粛正する為に引き金を引いていた。



 同志で指導者だった奴は「これは聖戦なんだよ」と言いながら俺たち少年兵を誘導して様々な所でテロ活動をしていた。


 そして‥‥‥



 「神の名の下君は選ばれた。あの異教徒どもをこの聖地から追い出すのだ!」



 そう言われ爆弾を体に巻き付け手榴弾を渡される。

 奴らの大使館に忍び込み奴等を吹き飛ばす。


 そう、俺は教えらえた。



 だがそれは失敗に終わり敵国に拿捕されたが少年と言う事で保護という形でいろいろな事を教えられた。

 そう、神を語る同志で指導者が何者だったかも。



 絶望をした。


 そしてそいつに復讐する為にその敵国に協力もした。


 大人になって奴を追い詰めすべてを終わりにしよとした時、俺は一番仲の良かった同志の友に撃たれて殺された。


 同志で友であったあいつは神に祈りながら俺が敵国に洗脳され狂った、どうかそれを許してやってほしい、あなた様のもとへ送り届けもう一度神に仕える様にと‥‥‥



 

 「アイン?」


 「アイン、もういい、お前は休め‥‥‥ どうやら奥の手が効いたようだ。だがあれは悪魔の力だな‥‥‥」



 いつの間にか涙を流していた俺は戦場を見ると業火の中に鱗の巨人が火を噴きながら「鋼鉄の鎧騎士」たちを焼き尽くしていた。

 それは「鋼鉄の鎧騎士」たちの倍以上ある体格。

 竜を思わせる頭部に硬そうな鱗が全身を覆い動くたびにその尻尾でガレント兵をなぎ倒していく。



 「は、ははははははははははぁっ!」



 俺は泣きながらその光景に見入ってしまった。

 確かにあれは悪魔だ。


 しかし神よりずっとましだ。



 あれはアーシャの仇を取ってくれる。

 アーシャの仇を‥‥‥




次回:「屍を超えて」

俺は神を信じない。 


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