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テグ戦記  作者: さいとう みさき
第七章
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第七章7-5戦いの中に

どこもかしこも腐っていやがる!

だが俺は生き延びる。

生き延びてやるんだ!!


奴隷戦士アインの生き延びるための戦い。

はたして彼は生き延びることが出来るだろうか?

7-5戦いの中に



 ここイザンカ王国は最古の都市と言われるほど歴史が古い。


 そして人類が女神の御業の秘密である「魔法」を始めて伝えられた場所でもある。

 それゆえにこの国では魔道だけはやたらと発達していた。

 しかしそれは裏返すと魔道以外はそれ程でもないという事になる。



 「どう言う事だ!? 魔道部隊の攻撃が効かないだと!?」



 開戦から一週間、ドドス共和国とガレント軍の合同部隊が戦線をかなり押して来ていた。

 俺たち傭兵部隊も勿論最前線で戦っているのだが、イザンカ王国の指揮官のその言葉に俺らは苦笑する。


 それもそのはず、現代の戦争で切り札となる「鋼鉄の鎧騎士」には対魔法処置が施されていて普通の魔術は効かない。

 勿論通常の攻撃だって効かないので結局は「鋼鉄の鎧騎士」には「鋼鉄の鎧騎士」で対応するしかなくなってくる。

 戦争での勝敗はそのほとんどが「鋼鉄の鎧騎士」どうしの戦闘で決まると言っても過言ではない。

 だが「鋼鉄の鎧騎士」は高価でありその生成方法も秘匿されているのでそうそう簡単には量産できない。

 それのそれ相応の設備と施設がなければパーツでさえ作る事は出来ない。

 まさしく国家の威厳をかけたモノなのだ。



 「バレン指揮官、我々傭兵隊が活路を開きます。相手は『鋼鉄の鎧騎士』、魔導士たちの攻撃では倒せませぬ」

 

 ビブラーズ隊長はバレン指揮官にそう進言する。

 そして付け加え俺たちが活路を開いた所へイザンカの「鋼鉄の鎧騎士」を投入してもらうように付け加える。


 「しかし、我らの魔道部隊もまだまだ戦える。『鋼鉄の鎧騎士』隊をわざわざ出すまでも‥‥‥」



 「いや、バレンよ我らも『鋼鉄の鎧騎士』隊を出す時だ。ここまでとは予想外であった」



 俺たちの進言に難色を示していたバレン指揮官だったがかけられた声に驚き頭を下げる。

 それはイザンカ王国軍将軍ジバル=モリガンその人だった。



 「将軍がわざわざ前線に‥‥‥」


 同じく頭を下げながらビブラーズ隊長は小声で思わずつぶやいてしまった。

 それが聞こえたのかこの将軍様は俺たち傭兵隊の混じるこの会合で言い放つ。



 「総力戦だ。今出し惜しみをしていてはこの前線を破られる。ここが破られれば我らにはもう『鋼鉄の鎧騎士』は残っていない。陛下もこの戦いの結果で腹をお決めになると仰っている‥‥‥」



 ジバル将軍のその言葉にここにいる全員が思わず息を呑む。


 イザンカ王国は魔道の国。

 そのせいで「鋼鉄の鎧騎士」の開発が他国に比べ大幅に遅れていた。

 何とか出来上がったイザンカ製の「鋼鉄の鎧騎士」は正直それほどの物では無いと聞く。



 「陛下が‥‥‥」


 バレン指揮官が思わずうなってしまう。


 

 「我が『鋼鉄の鎧騎士』隊も十五機、全機出すぞ! 今攻め入っているガレント、ドドスの『鋼鉄の鎧騎士』もあれで全部だ。この戦い何としても勝たねばならん! 傭兵隊も含め尽力せよ! 奴等をこの歴史あるイザンカに一歩も入れる出ない!!」



 ざっ!



 その場にいる全委員が膝をつき頭を下げる。

 そして一斉に答える。


 『御意!』


 俺たちはこの戦いに全てを賭ける事になった。



 * * * * *



 「全く、人の戦も変わったものだ。こんなバケモノ同士が勝敗を決める為に戦うようになるとはな」


 「誰が開発したか、確かに『鋼鉄の鎧騎士』どうしが今の戦争では勝敗を決める。おかげで今は俺も食いぶちが出来たわけだが、生き残らなければそれも無くなるな」



 もうじき出撃となるのにわざわざザシャが俺の所まで来ていた。

 「鋼鉄の鎧騎士」に乗る為のこの階段でザシャは俺を見ず周りの様子を見ながら聞く。



 「お前はこの力でガレントの秩序と戦う。あの女神に抗う為にだろう?」


 「ああ、俺は神を信じない。だからそれらをぶっ壊してやる」



 ザシャはそのままで俺に言う。



 「あの女神は私たちダークエルフとの約束を破った。やはり相容れぬ相手だ。だから復讐をする。我らの同胞の為に!」



 それだけ言って階段を降り始めた。


 「私は貴様のやる事に手を貸す。貴様にはこの世界の秩序を壊してもらう。死ぬなよ」


 片手をあげそのままザシャはどこかへ行ってしまった。


 「当然の事だ。生き残る。何がなんでもな!」




 そう言って俺はまた「鋼鉄の鎧騎士」に乗り込むのだった。  

 

 


次回:「鼓動」

俺は神を信じない。 


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