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テグ戦記  作者: さいとう みさき
第五章
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第五章5-3ザシャ

どこもかしこも腐っていやがる!

だが俺は生き延びる。

生き延びてやるんだ!!


奴隷戦士アインの生き延びるための戦い。

はたして彼は生き延びることが出来るだろうか?

5-3ザシャ



 「わっぱが吠えるな! いくらオリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』でもこれだけ森の精霊に捕まれば動けまい!」



 俺の「鋼鉄の鎧騎士」は全身に絡み付いたツタがいつの間にやら大木になりつつあるその中に取り込まれていく。


 既に両足は木に取り込まれ動こうとしてもびくともしな。

 頼みの長剣もツタが絡んで振る事さえできなくなってくる。



 「アイン! その『鋼鉄の鎧騎士』は確かにすごい、だがいくら古き女神様を名乗る者から託されたとしても今の女神様のご意思に背く! 貴様はその古き女神を名乗る悪魔に騙されているのだ! そしてその悪魔に魅入られている。女神様はそのようなものをお許しになられない、今ここで引導を渡してくれるわ!! やれっ!!」



 バッカスは動けなくなった俺に向かって姿を現しそう言いながらホリゾンの新型「鋼鉄の鎧騎士」に命じる。


 両手両足を大木に封じられ体中にツタが巻き付いている。

 なんとかして抜け出そうとするがどんなにもがいてもびくともしない。


 『くそっ!』


 俺の前に「鋼鉄の鎧騎士」が剣を構えて突き刺してこようとする。



 「バッカス! やめんか馬鹿者!! 殺すことは無い!」


 「いや、やはりこいつは悪魔付きだ! 妙な事を思いつき他の者が動かせないそのオリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』を動かせる! それにその『鋼鉄の鎧騎士』は『魔王』とか言うのが作ったのだろう? なら女神様の名の下今ここで神罰を喰らわせるべきだ!」


 ザシャの制止の言葉にそう言いながらバッカスは手を振る。

 それを合図にホリゾンの「鋼鉄の鎧騎士」が動いた。

 一気に止めを刺す為に剣を引き全体重を乗せて鋭い突きを俺が乗り込む胸元に放つ。 



 しゅっ!!


 

 がきぃいいぃぃぃんっ!!



 だが驚いた事にホリゾンの「鋼鉄の鎧騎士」が放ったその一撃は俺の乗った胸元を貫くはずが胸の装甲に当たった瞬間弾かれてしまった。



 「なんだとっ!?」



 『これはっ!?』


 俺はその瞬間あの必殺技を思い出す。

 左手を何とか開き魔力を集中させる。

 そして腕を拘束する今や大木となったそれに力ある言葉と同時に【爆炎拳】を放つ!



 『【爆炎拳】!!』



 カッ!


 ぼぉんっ!!



 その瞬間俺の「鋼鉄の鎧騎士」の左手を拘束していた大木がはじけ飛んだ。

 そのまま自由になった手ですぐに他の手足も同じく【爆炎拳】を放ち大木の拘束から解き放つ。


 慌ててホリゾンの「鋼鉄の鎧騎士」は剣を振り俺をもう一度突き刺そうとするが既に遅い。

 素早い動きで相手の胸に左手をつき俺はまた力ある言葉を唱える。



 『【爆炎拳】っ!!』



 ぼぉんっ!!



 途端にホリゾンの「鋼鉄の鎧騎士」の胸が膨れ上がり背中から真っ赤な炎を飛び散らしながら破裂する。

 相手の「鋼鉄の鎧騎士」はそれを受けぐったりと動かなくなる。

 俺はそれを払い捨てる。 

 そしてバッカスに向けて自由になった右手の大剣を振り上げる。



 「なんて力だ! バケモノめっ!!」




 『バッカスぅっ!!』




 どぉぉおおおおぉぉぉんっ!

 ぐちゃぁっ!



 バッカスは最後に俺に向かって憎しみに満ちた表情で叫ぶが俺が振り下ろした大剣に押しつぶされつぶれたトマトの様に飛散した。



 「ちっ! バッカス!!」


 舌打ちをした声にそちらを見ると未だ近くの木の枝の上にいるザシャを見る。

 逃げ出そうとするが俺にはその動きがなぜか手に取るように分かった。

 隣の木の枝に彼女が飛び去る気がしてさ先にそちらに手を伸ばすと面白いようにそこへザシャが飛び込んできた。 

 俺はそのまま「鋼鉄の鎧騎士」で彼女を捕まえる。



 「ぐぅっ! わっぱがぁ!! ちっ! 魔力を使い過ぎたかぁっ」



 俺の「鋼鉄の鎧騎士」を捕まえる為にかなりの精霊魔法を使ったのだろう。

 呪文を唱えていたようだがその魔法は効力を発揮せずザシャはあっさりと俺につかまってしまった。


 俺はその様子を見ていたホリゾン軍の兵士たちを大剣で薙ぎ払いそしてこの場からザシャを掴んだまま逃げ出した。





 怒声の響く中、俺の「鋼鉄の鎧騎士」は暗闇に紛れ姿を消すのだった。


 

次回:「神の名を汚す者」

俺は神を信じない。 


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