第一章1-1目覚め
どこもかしこも腐っていやがる!
だが俺は生き延びる。
生き延びてやるんだ!!
奴隷戦士アインの生き延びるための戦い。
はたして彼は生き延びることが出来るだろうか?
―― 2342年8月 ヘミュンの街近郊 ――
1-1目覚め
「うっ? 俺は‥‥‥」
目が覚めた。
体中が痛い。
まだ意識がはっきりとしない中俺は目覚めた。
視界はまだぼやけているし周りの音もよく聞こえない。
俺は確か前線の中で突撃命令が出て仲間たちと一緒に‥‥‥
「ぐっ、どうなったんだ? いや、俺は‥‥‥」
痛む体を引き起こし初めて気付いた。
荒野の所々から煙を上げたこの戦場に仲間の死体が俺にのしかかっているが無残にも半分が焼けただれて死んでいた。
周りを慌てて見ると同じような傷で絶命している仲間たちがいる。
「お、おい、おまえあらっ! 救急車っ!」
そう言って俺ははたと気付く。
救急車だと?
この世界にそんなものはない。
ここは剣と魔法の世界。
なのに俺の記憶から湧き上がるこれは?
ずきっ!
激しく頭が痛んだ。
この状況に混乱をしているのだろうか?
そしてドクンと心臓が高鳴る。
なんだこれ?
俺も死ぬのか?
そう思った途端周りの騒音が聞こえて来た。
「撤退だっ! 逃げるぞ!! おい、そこのお前、生きているなら走れ!! 奴らの『鋼鉄の鎧騎士』がやって来るぞ!!」
どうやら仲間の軍人らしい。
俺は痛む頭を抱えてなんとか立ち上がりそれを見る。
それは戦場の焼けただれた大地の向こうから土煙をあげて歩く「鋼鉄の鎧騎士」たち。
身の丈六メートルを超えるその魔道兵器はゴーレムより強く魔術師のちんけな攻撃魔法は全く受け付けない。
ガレント王国のこの化け物の軍団に俺たち傭兵を含む部隊が敵う訳もない。
本国の騎士団にも「鋼鉄の鎧騎士」はいるが俺らの様な前座の部隊にはそんな大そうな魔道兵器は与えられない。
せいぜいこの一回使ったら終わりの魔装具の剣くらいか?
俺は立ち上がりそんな事を思い出す。
この戦場でにらみ合っていた両軍はその戦線の切っ先を開いた。
通常の合戦が始まると思い、最前線の俺たちの部隊は突撃命令に突っ込んだは良いがすぐに魔光弾の嵐に会い吹き飛ばされていった。
俺もその中の一人。
そして今知った衝撃の事実が相手側の引っ張り出してきたあの魔道兵器、「鋼鉄の鎧騎士」だ。
普通の兵士にあんなバケモノの相手が出来る訳がない。
悔しさに奥歯を噛むが所詮消耗品の傭兵部隊。
しかも俺はテグの出身だ。
そう、地下奴隷層の出身。
俺は踵を返して走り出す。
せっかく拾った命、こんな所で終わらせてたまるか!
俺は仲間だった死体を踏みつけ本陣が待つ丘の向こうへと逃げ去るのだった。
次回:「最前線」
俺は神を信じない。
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