不安と家族
ここから、一部修正をしています。
ご了承下さいませ。
馬車に身を任せ、レイアは上の空だった。ぼーっと外の景色を眺める。いや、景色なんて見ていないと思う。
『俺の王妃にならないか?』
レイアの頭の中には先程聞かされた陛下の言葉が響いていた。
レイラは小さく溜め息を零し、首を振る。その溜め息は恋のような桃色の溜め息ではなく、何処か不安が混ざっている溜め息だった。
レイアは自分の手を見つめる。背中に手を回した時…お姉様達とは違い、広くて厚かったなぁ、やっぱり男の人の身体って感じだった。
あの言葉を言われた時は頭がただただ真っ白になって、陛下を突き飛ばし、逃げた。今思えば不敬罪に問われてもおかしくない。どうしよう…一家総出で牢獄行きにでもなったりしたら…
レイアは沢山の不安に押しつぶされそうだった。
だが、時間は止まってくれない。数分も経たない内に我が家に着いた。
いつものように家族全員が出迎えてくれて、私は優しい家族に顔合わせが出来なくて馬車の中で丸くなっていた。
どうしたのかとお母様が顔を覗かせて来る。
「ごめんなさい…お母様…私、陛下を、突き飛ばしてしまいました…」
謝っても許されないことだけど、今のレイアにはそれしか出来なかった。
「そんなこと、良いのよ。どうせ、陛下が何かレイアにしたのでしょう?
例えば…抱擁をしたとか…」
お母様の意味がわかるような言葉と意味ありげな顔にレイアはドキリとする。
額から嫌な汗が止まらない…
な、何故知っておられるのでしょうか、お母様…
レイアが嫌な汗を流している直ぐ後ろで馬車の扉からぬっとでた二本の腕に体の自由を奪われた。
後ろから抱きしめられているようだ。
「レ、レオン兄様!」
レオン兄様の顔がすぐ近くにあり驚いた。
「安心しなさい …あの馬鹿陛下はみっちり言っておいたから…」
レオン兄様、満面の笑みで言われると怖いです。一体…何を言ったんですか…
レイアがレオンの言動にビクビクしていると、温かく力強い声がした。
「レイア…今日は疲れているだろう、もう、休みなさい。詳しいことはレオンから聞いているから。」
豪快で優しいお父様が今日は少し険しい顔に心の落胆を感じ、泣きそうな顔を必死に隠す。
こんな髪を持って生まれてきて、それなのに今まで可愛がってくれたのに、陛下に手を上げたなんて、絶対…呆れてる。
フルバスタ家にとって、私は汚名にしかならない存在なのに…
静かに部屋のベッドの上で泣いた。




